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医療従事者や家族への差別 新たな問題に

2020年5月14日 20:55
医療従事者や家族への差別 新たな問題に

新型コロナウイルスの感染拡大は医療従事者だけでなく、その家族への偏見や差別など、新たな問題を生み出しています。

保育園から子どもの預かりを拒否された看護師の女性に話を聞きました。

■保育園の職員から求められた「登園自粛」

「保育園のほうから『自粛していただくようにお願いします』とメールがきました」

そう話すのは、3歳の子どもをもつ看護師の女性。先月、保育園から子どもの預かりを拒否されたといいます。

藤田医科大学病院 看護師「突然だったので保育園に預けないと働くことができないので、その日は仕事をお休みさせていただいて」

看護師の女性が勤めるのは、愛知県豊明市にある藤田医科大学病院です。4月9日、別の病院から着任したばかりの男性医師の新型コロナウイルス感染が判明。病院はすぐに濃厚接触者に自宅待機を指示し、その後も職員の感染は確認されていません。

看護師の女性は感染した医師との接触はありませんでしたが…。

藤田医科大学病院 看護師「(感染公表の翌日に) 保育園の門の外で止められて(保育園の職員から)『もし保育園で1人でもコロナの方が出ると休園しなければいけなくなってしまうので、そういうことを考えて(登園を)自粛していただくようお願いします』と」

子どもを保育園に預けることができず、その日は急遽、病院での仕事を休むことになりました。「職場のことを考えると心苦しく、どうしていけば働けるのかなとかすごい考えましたね」と話します。

藤田医科大学病院 看護師「医療従事者としては今必要とされている側なので、働いて皆さんを助けていかなきゃいけないなという思いもあります。

一方母親目線として、こちらから保育園にコロナの菌をやってしまった場合、保育園も大変ですし、他の子に、自分の子にうつしてしまうのは怖いなっていう気持ちもあります。その辺が複雑な気持ちではあります」

病院ではこの日、他にも5人の職員が保育園から子どもの預かりを拒否されたといいます。

■日本医師会も理解を呼びかけ

藤田医科大学病院 眞野惠子看護部長「子どもを預けているスタッフというのはこの病棟においても中堅が多い。現場が大変ですね。人が余っているわけではありませんので」

日本看護協会が先月開設した相談窓口には、およそ1か月で499件の相談が寄せられ「新型コロナウイルス感染症に対応している職員の精神的な負担が心配」との声も。

感染症病棟で勤務していることが夫の会社に知られ、夫が勤務先から休むように言われた。親が陽性患者受け入れ病院に勤務していることを理由に、子どもが学校でいじめにあった、などの偏見や差別もあったといいます。

日本看護協会 福井トシ子会長「医療機関で働いている職種だとわかったら『お疲れ様』のその一言ですごく報われてモチベーションがあがるんです。今までと同じような心の距離感でお付き合いいただけたらなと思います」

13日、日本医師会も改めて理解を呼びかけました。

日本医師会 横倉義武会長「わからない感染症ですから、いろんな恐怖があると思います。けれども、これは国民みんなが協力して戦わなければならないものでありますので(医療従事者への)風評被害が起きないように強くお願いしたいと思います」

■求められる医療現場への理解

保育園からの子どもの預かり拒否を受け、藤田医科大学病院では院内の保育施設を拡充。新たに20人の園児を受け入れられるようにしたということです。

一方、拒否した保育園もその後、濃厚接触者でないことを証明する書類があれば子どもを預かる対応に変わったということです。

藤田医科大学病院 眞野惠子看護部長「本当によく頑張ってる。よく頑張ってるんですよ、現場の子たちは。だから正しい知識を持って正しい理解のもと周りの方に行動していただきたいなと思います」

家族にも向けられた偏見や差別。医療の現場への正しい理解が求められています。