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知らぬ間に健康被害の恐れも…大手ショッピングサイトで流通する「ニセ浄水カートリッジ」見えてきた“販売丸投げ”の構図と中国の存在

2023年5月2日 15:00
知らぬ間に健康被害の恐れも…大手ショッピングサイトで流通する「ニセ浄水カートリッジ」見えてきた“販売丸投げ”の構図と中国の存在

コロナ禍で「浄水カートリッジ」の需要が高まる中、粗悪なニセ物が流通する問題も起きている。取材班が大手ショッピングサイトで安く売られていた商品を購入し、独自の検査を行うと、商品は“ニセ物”と判明。販売業者を直撃し、驚きの実態が明らかになった。(調査報道特番『QUESTION!みんなのギモン』 )

■「正規品」と信じて…浄水カートリッジ購入

だまされて“ニセ物”の浄水カートリッジを買ってしまったという男性。去年の夏、大手ショッピングサイトで、シンクの下に取り付けるカートリッジを購入していた。

“ニセ物”を購入した男性
「化学薬品みたいな味がしたんですけれども、様子を見ながら使用していました」

男性が購入した浄水カートリッジはネット上で「大手メーカーの正規品」とうたい、通常より安く売られていたという。男性が正規品の製造元に問い合わせをし、“ニセ物”だと判明した。

“ニセ物”を購入した男性
「世に知れたEC(大手ショッピング)サイトで購入しているので、まさかそういった“ニセ物”が売っているとは自分でも思ってもいなかった。特に口にするものなので、“ニセ物”が売られていることに恐怖と驚きを感じました」

■大手ショッピングサイトにも潜む“ニセ物”

取材班の一人も同じ被害にあっていた。取材を進める中で、自宅で使用していた浄水カートリッジが“ニセ物”だと判明。購入したのは、やはり大手ショッピングサイトだった。

購入したショップは4つ星以上の高評価、そこで“ニセ物”が売られていた。多くの人が利用する大手ショッピングサイトにも潜む“ニセ物”――私たちは、これをどう見分ければよいのだろうか。

■正規品と“ニセ物” 見分けるポイントは?

リクシル社製の浄水カートリッジ(JF-21)と、取材班のスタッフがだまされて購入した浄水カートリッジ(“ニセ物”)を見比べてみた。

――箱に表記されているイラストや文字が同じで、見分けがつきません。

箱は精巧に作られていて、どちらが“ニセ物”なのか見分けるのは困難。しかし、メーカーによると、商品によっては見分けるポイントがあるという。その一つが、箱に書かれた「ロット番号」だ。

――正規品は刻印がされているので、凹凸(おうとつ)感があります。

この商品の場合(JF-21)、正規品のロット番号は「刻印」され、凹凸がある。一方、“ニセ物”は「プリント」のため、凹凸はない。

さらに、一部の“ニセ物”では、商品の説明書きに「混ざる」と書くべきところが「混さる」となっているなど、誤字が交じるものもあるという。

購入前に注意すべきポイントは販売価格だ。正規品の価格は3本で1万5510円。しかし、大手ショッピングサイト内の一部のネットショップでは7400円と、半額ほどで売られているものもある。 

実は、取材班のスタッフが購入してしまった“ニセ物”も正規品の半額ほどで売られていた。あまりに安すぎる商品は、“ニセ物”の可能性が高いという。

■ピンク色に変わった水…カートリッジは“ニセ物”

取材班は実態を調査するため、浄水カートリッジを2つのネットショップから購入、正規品のメーカーに持ち込み、検査を依頼した。

“ニセ物”の場合はピンクに発色するという試薬を正規品のカートリッジを通した水と、ネットショップで購入したカートリッジを通した水にそれぞれ入れ、塩素を取り除くことができるか調べてみた。

リクシル担当者
「(正規品と持ち込み品それぞれ)遊離残留塩素に反応する試薬を入れます。」

――色が変わってきましたね?

リクシル担当者
「(ネットショップで購入したカートリッジは)水中にある遊離残留塩素に反応して、ピンクの発色をしています。正規品とは異なることが確認できます」

本物であれば、80%以上の塩素を除去できるというが、取材班がネットで購入したカートリッジの除去率は、わずか30%ほど。検査の結果、“ニセ物”と判明した。

■ “ニセ物”の芯材は樹脂?体に害を与える恐れも

さらに、別のネットショップで約3割引きで販売されていたカートリッジを切断して、水を通す内部の材質を調べてみた。

リクシル担当者
「正規品(JF-22)は芯材にセラミックが使われています。持ち込み品は樹脂だと思われますが、セラミックではない材質が使われています」

この商品もやはり、“ニセ物”だった。メーカーによると、本来の抗菌作用があるセラミックではなく、材質が不明な樹脂のようなものが使われていて、長期間使用した場合、体に害を与える恐れも否定できないという。

■「ニセ浄水カートリッジ」ショップの運営責任者を直撃

ネットで流通する「ニセ浄水カートリッジ」。取材班は、“ニセ物”を販売していたネットショップの運営責任者を訪ね、直接話を聞いた。

――ご自身の名義で運営されているストアで、大手メーカーの正規品として売られている浄水カートリッジが“ニセ物”だったんです。

ショップの運営責任者
「あ、そうなんですか?それは全くもう想像もつかない。驚いていますね」

――ご自身でショップを運営されている?

ショップの運営責任者
「いや、違いますね。(ショップの)名義は自分ですけれども、仕入れとか販売は第三者、他人がやっている」

運営責任者の口から語られたのは「第三者」の存在。ショップの名義を見ず知らずの第三者に貸し、販売など全ての業務を任せていたという。

ショップの運営責任者
「(第三者とは)実際に会ったことも、電話したこともない。どういった人なのか、日本人なのかどうかもわからない」

そして取材後、男性は販売を停止した。

■A氏から語られた「第三者」と「中国」の存在

別のネットショップの運営責任者が口にしたのも、「第三者」の存在だった。

ショップの運営責任者A氏
「僕自身は仕入れには携わっていなくて、仕入れから金銭の授受まで全部任せています」

A氏は、小遣い稼ぎでネットショップを始めたといい、仕入れなどは全て「第三者」に任せていると明かした。

――どこから、どういう商品を仕入れるかという相談は?

ショップの運営責任者A氏
「(仕入れは)日本もしくは中国という話を初めに伺いました」

――中国?

ショップの運営責任者A氏
「はい」

■ショップ開設と商品流通 “丸投げ”の実態

取材で明らかになったのは“丸投げ”の構図と、素性のわからない商品の存在だった。

A氏は自身の名義でショップを開設し、知人から紹介されたB氏のグループに運用を任せたという。A氏は名義を貸す見返りに、 売り上げの一部を報酬として受け取る契約を結んでいた。

B氏らから今度は「中国側」と呼ばれるグループにショップの運営が移され、この「中国側」が仕入れや発送など、全ての業務を行うようになったという。

では、B氏は「中国側」が“ニセ物”を売ることを知っていたのか。

A氏のショップ開設をサポートしたB氏
「ショップの開設サポートはしているが、商品の仕入れなど実際の運営は全て中国側でやっているから一切関わっておらず、わからない。正規品を販売していると認識していた」

B氏は、「全て中国側でやっている」と答えた。

■「ニセ浄水カートリッジ」被害を防ぐためには

去年の春、税関が撮影した写真には、段ボールに隙間なく詰め込まれた「ニセ浄水カートリッジ」が写っていた。発送元は中国だという。

リクシル事業部商品責任者
「300とか400という単位で見つかっています。国だと中国ですね。税関のところで差し止めをする、輸入しない、そこの対策ですね」

消費者が“ニセ物”を購入する被害を防ぐため、リクシルは4月から公式サイトで全ての浄水カートリッジの販売を始めた。

消費者庁は、「大手ショッピングサイトだから大丈夫」と思わないことや、安い商品には特に注意し、購入前メーカーに確認することなどを推奨している。

(4月22日放送 調査報道特番『QUESTION!みんなのギモン』より)