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あなたの実家が"空き家"になったら?トラブル予防策とは

2023年4月27日 12:02
あなたの実家が"空き家"になったら?トラブル予防策とは
放置された世田谷区内の空き家

国の調査によると空き家の総数は20年で1.5倍に増加しています。空き家のまま放置しておくと、不法投棄される場所になったり、木が生い茂り隣の家にはみ出したり、さらにはいつ倒壊してもおかしくない"迷惑空き家"になってしまいます。最近よく耳にするのが離れて暮らす実家の親が亡くなり、住む人がいなくなった"空き家になった実家"の存在です。自分の実家が空き家になったら?…トラブルにならないための予防策を取材しました。

■世田谷区は空き家の数が日本一

東京・世田谷区。大きな住宅が立ち並び、緑豊かなイメージも強い住宅街ですが、2018年の総務省の調査によると市区町村別では全国で最も多い5万250戸もの空き家があります。世田谷区建築安全課には空き家問題に対応する専門チームがあり、倒壊の危険など早急な対応が求められる約1000の空き家に対して、売却や解体に向けて持ち主と交渉を進めています。

世田谷区建築安全課 空家・老朽建築物対策 千葉妙子係長
「両親が亡くなられたり、施設に入られたりする時には、子供世帯は自分の家を持っています。そうなると子供世帯の実家が空き家になってしまいます。このようなケースが一番多いです」

空き家対策チームに寄せられる相談に多いのは次のようなものだといいます。
・自分達は別の場所で暮らしていて、実家が空き家になってしまった。
・庭の木が伸びて近所に迷惑をかけているのだが、手入れに出向く事が難しい。
・この先、売却するのかきょうだい間でも考え方に違いがある。

人が住まなくなり、手入れを怠ると家は傷み始めます。放置された状態が何年も続けば家は朽ち果てます。自分の実家がそうならないためにも、まずは区役所などの行政機関に相談しアドバイスを受けることが大切です。

行政の手によって空き家を強制的に解体し減らす制度もあります。これを「行政代執行」といいます。

2015年、国は増え続ける空き家対策のために「空家等対策特別措置法(空き家法)」というあらたな法律を作りました。自治体が倒壊の危険性がある空き家などを「特定空き家」に指定し、所有者に対して修繕や解体を行うよう「勧告」や「命令」を下すことできるようになりました。それでも従わない場合は行政代執行による"強制的な解体"が可能となり、解体費用は所有者や相続人に請求されることになりました。

とはいえ、行政代執行により解体されるケースは多くありません。2021年度に勧告や命令などを受けた「特定空き家」は全国で6821件ありますが、そのうち行政代執行により解体されたのはわずか47件です。

世田谷区建築安全課 空家・老朽建築物担当 千葉妙子係長
「行政代執行は空き家を減らすために行うものではありません。空き家は所有者が自分の責任で解体するもの。解体する気がない場合は『解体する責任がある』ということを明示するのが私たちの行うべき事です」

行政代執行は、倒壊寸前などの危険な状態にある空き家に対して、周囲の環境や安全を守るために行う「最終手段」です。自分の実家が空き家になり放置し続け「行政代執行」により解体されるというケースは「最悪な事態」と認識してください。

■予防策…「遺言書の作成」

親が死亡し、実家が空き家になったとき、法定相続人であるあなたがトラブルにならないためには、どうしたらいいのでしょうか?

重要なポイントは「相続する前の予防策」です。一つの答えとして被相続人に遺言書を作成してもらっておくことです。

もし仮にあなたにきょうだいがいて、遺産の分割協議で実家の今後について話し合いが行われたとします。兄は売却、弟は建て替え、妹は現状維持と、それぞれの意見や考え方が異なり、思うように話し合いが進まないといったことが起きるかもしれません。さらに、相続人の中に認知症の方や行方不明者がいた場合、協議はより困難なものになります。話し合いがまとまらず滞った結果、空き家のまま放置されてしまうという事態になりかねません。

そのような状態にならないための予防策のひとつが「遺言書の作成」です。遺言書で実家の処分方法を明確にしておくことにより、協議による揉め事や、空き家として放置されるといった事態を避けることができ、処分の手続きをスムーズに進めることができるようになります。

世田谷区にある「都民シルバーサポートセンター」は、高齢者が抱える相続や介護、生活などに関する様々な問題に対して相談やアドバイスを行っているNPO法人です。ここでは「遺言作成」のサポートを行っています。

取材をさせていただいたのは、2022年夏から高齢者施設で生活する87歳の女性Aさん。夫と死別し子どもはおらず、現在、自宅が空き家の状態だといいます。Aさんは自分の死後、空き家になった家をどうするか公正証書遺言に書き記しています。

都民シルバーサポートセンター 矢嶋真紀子 相談員(社会福祉士、公認心理師、精神保健福祉士、介護支援専門員)
「公正証書遺言を書いていただいて、公証役場で預かっていただいています。住んでいらっしゃる方の福祉的な支援をすることで、空き家にならないようにするのがご本人のためにもなります」

Aさんは相続した人たちが困らないよう自分が亡くなる前に「我が家」の道筋を明確にしていました。

都民シルバーサポートセンターの信夫武人理事長は今まで約60人の遺言原案を作成した行政書士兼遺言執行士です。

信夫武人理事長
「生前に遺言をしたためて、空き家にならないよう予防することが大切です。日本ではなかなか遺言を書く文化が育っていませんが、遺言の執行内容は100人いたら100通りあります。本人の判断能力がなくなったら遺言にすることはできなくなるので、早めに対策をすべきです」

信夫理事長によると、遺言書はご本人自らが作成する「自筆証書遺言」よりも、公証人が立ち会い、意思や判断能力を確認しながら作成する「公正証書遺言」を推奨しています。

住人がいなくなり様々な理由から放置される「都会の空き家」。自分の実家も放置された空き家にならないよう、予防策を考えておくことが重要です。

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