「富山湾の宝石」シロエビが“記録的不漁”に 一部メニュー値上げも 専門家“地震の影響懸念”か
富山湾の宝石ともよばれるシロエビが、記録的な不漁となっています。大型連休明けまで漁を休む事態となっています。
1日、「富山白えび亭 東京駅店」には行列ができていました。
並んででも食べたくなる味。皆さんのお目当ては…
「シロエビが食べたかったので。なかなか新しいものは食べないのに、(娘が)シロエビは『おいしい、おいしい』って」
「エビの味は濃厚なんですけど、さっぱり食べられる感じ」
「飽きないよね」
上品な甘みと食感が特徴の、富山県のブランド食材「シロエビ」
しかし、このシロエビを巡って、いま、問題が──。
白えび亭 統括店長 田中良成さん
「とれれば…ということで我慢はしてきたんですけど、不漁ということで、ものがないので、急きょ値上げを」
値上げの原因となっているのが、シロエビの不漁です。
この店では、先月からシロエビを使用する一部メニューを、最大2割ほど値上げしました。
さらに――
白えび亭 統括店長 田中良成さん
「北陸支援割みたいなものもありまして、やはり北陸に来られるお客さんが多くて、(シロエビの)需要も高まっている」
北陸を訪れる観光客が増え、シロエビの需要が急増し、値上げを後押ししているといいます。
「シロエビがとれないことで、より苦境にたたされるとは思っていなかったんですが…。以前に比べても、ほんとに高価な食材になったなという感じがします」
“富山湾の宝石”とも呼ばれるシロエビに、何が起きているのでしょうか。
シロエビの漁獲量1位を誇る、富山県。先月1日から漁が解禁され、豊漁が期待されましたが、現状は…
シロエビ漁師
「ほぼとれていない状況です。漁獲が低いままだと、やはり死活問題」
漁解禁から先月18日までの水揚げ量は2894キロで、去年の1日分の水揚げ量にも届いていないのです。
記録的な不漁を受けて、新湊漁業協同組合は、先月20日からゴールデンウィーク明けの今月9日まで休漁を決定しました。
その影響は、県内の飲食店にも及んでいます。観光客などでにぎわうゴールデンウィーク中は、シロエビの在庫がなくならないよう、すでに確保しているといいますが、県内でもシロエビの提供が厳しくなる恐れがあるといいます。
新湊きっときと市場 宮正一料理長
「(不漁が続けば)メニューの中から、はずれることもあると思います」
記録的な不漁に調査を行う専門家は
富山県水産研究所 海洋資源課 三箇真弘さん
「能登半島地震の影響が懸念されております。海底地滑りにより、底付近に生息するアミ類が減少すれば、それを捕食するシロエビに影響を与えることも、もしかしたら考えられるかもしれません」
シロエビが多く生息する富山湾。しかし、地震によって、富山湾の海底にある渓谷の斜面が、広範囲に崩壊。その影響により、シロエビの餌となるプランクトンが少なくなるなど、環境が変わった可能性があるといいます。
富山県水産研究所 海洋資源課 三箇真弘さん
「4月だけでは、シーズン全体の状況について把握することが難しい。調査も今後、実施予定ですので、そういった調査を通して、地震の影響を慎重に判断していきたいと考えています」
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不漁で苦しむなか、都内の企業では、ある動きが。
シロエビの殻などを低温で揚げたチップスを、富山県にあるシロエビの加工メーカーと共に開発したといいますが…
オイシックス・ラ・大地グリーン戦略室 東海林園子室長
「(加工メーカーから)殻の供給ができないかもしれない、という一報をいただいた」
先週、その加工メーカーから届いた、悲痛な叫び。
そこで、富山県内の加工業などの復興を目的とした、1つの商品につき50円の寄付を行う支援をスタートしたのです。(※白海老チップス 235円)
オイシックス・ラ・大地グリーン戦略室 東海林園子室長
「今まで一緒に歩んできた生産者のために、“何かできないか”ということで、みんなで相談をして、寄付付きの支援をさせていただいています」
「昨年まで生産者が大事に用意していた分で、(商品を作り)できるだけ寄付を返して、海の保全やシロエビが絶えないような、環境活動を提案できればいいなと」
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富山県水産研究所は、今月上旬にシロエビを採取し、生育状況などの調査を行うということです。