×

【解説】名跡“猿之助”誰がつぐ? “既定路線”は市川團子…名前に“悪いイメージ”も

2023年6月28日 20:44
【解説】名跡“猿之助”誰がつぐ? “既定路線”は市川團子…名前に“悪いイメージ”も

歌舞伎俳優の四代目・市川猿之助容疑者が逮捕され、歌舞伎界を超えて大きな衝撃が広がっています。“猿之助”という代々受け継がれた名跡は今後、どうなっていくのでしょうか。

●「家族3人で次の世界へ」
●「猿之助」名跡つぐのは誰か?

以上のポイントを中心に詳しく解説します。

■事件発覚前日に「自殺の方法」検索… 新たな供述が明らかに

27日、母親に対する自殺ほう助の疑いで逮捕された、市川猿之助こと喜熨斗孝彦容疑者(47)。捜査関係者への取材で28日、新たな供述が明らかになりました。

市川猿之助容疑者
「睡眠導入剤を用意して砕いて水に溶かして、両親が飲みやすいように準備しました」
「両親と3人で自殺することになったのは、私に関する記事が週刊誌に掲載されることがひとつの大きな引き金になった」
「家族3人で次の世界に行こうということになった」

「次の世界に行こう」という言葉について、両親含めた3人のうちの誰が言ったのかは、わかっていません。

ほかにも「家族3人で前の晩にうどんを食べた後、睡眠薬を水に溶かして飲んだ」という趣旨の話や、猿之助容疑者の携帯電話の解析などから、事件が発覚する前日に「自殺の方法」を検索していたことも新たにわかりました。

■「市川猿之助」は屋号「澤瀉屋」の名跡 「スーパー歌舞伎」が有名

猿之助容疑者の逮捕によって、歌舞伎界にはどのような影響があるでしょうか。

歌舞伎役者にはそれぞれ「屋号」というものがあります。屋号とは、店名・社名のようなもので、たとえば「成田屋」という屋号がありますが、これは江戸時代に成田山と縁が深い市川團十郎家が名乗ったのが始まりと言われています。

「屋号」には代表的な名跡があり、中村屋なら中村勘三郎、高麗屋なら松本幸四郎などが有名です。「澤瀉(おもだか)屋」という屋号の名跡は「市川猿之助」で、明治時代から150年以上続く名前だということです。

そして、澤瀉屋の「お家芸」といえるのが、「宙乗り」です。この宙乗りやきらびやかな衣装などを取り入れ、派手な立ち回りをするなど、現代風の演出を取り入れた新しい形の歌舞伎に挑戦をしてきたということです。

こうした「スーパー歌舞伎」は澤瀉屋が行ってきたものです。

その澤瀉屋の家系図を見ていきます。

スーパー歌舞伎は、猿之助容疑者のおじにあたる三代目市川猿之助、現在の二代目市川猿翁さん(83)が始めました。実は猿翁さんは、スーパー歌舞伎での宙乗りが「5000回」というギネス世界記録を持っています。

スーパー歌舞伎で人気を博した「市川猿之助」は、歌舞伎界にとっては非常に重要な名跡になったということです。

猿翁さんの息子が市川中車さん(57)です。ドラマや映画では香川照之さんとして有名です。一方、猿翁さんの弟が、今回亡くなった市川段四郎さん(76)で、その息子が逮捕された猿之助容疑者ということになります。

歌舞伎界にとっては、なくてはならない人たちといえます。

■「スーパー歌舞伎Ⅱ」「ONE PIECE」と“融合” 挑戦的な試みを続け…

猿之助容疑者は、1983年に「二代目市川亀治郎」として初舞台を踏み、多くのドラマや映画でも活躍する歌舞伎界きっての若手スターの1人でした。2012年に四代目として「猿之助」を襲名します。襲名披露では「猿之助という名前は“神様”に等しい憧れの名前」という言葉を残しています。

おじが始めた「スーパー歌舞伎」を発展させた「スーパー歌舞伎Ⅱ」を始めたり、人気マンガ「ONE PIECE」と歌舞伎を融合させたりと、革新的で挑戦的な試みを続けてきました。

歌舞伎評論家の中村達史さんは「新しい歌舞伎も古典の歌舞伎も、どちらも高い水準で演技ができるというのが、(猿之助容疑者の)傑出したところ」と話しています。

■名跡つぐのは「既定路線」市川團子さんか 容疑者復帰の可能性は…「3つの条件」

猿之助容疑者が守り、育ててきた名跡や芸が、これからどうなっていくのか、気になるところです。「猿之助」の後継者については、注目されている役者がいます。

市川中車さんの1人息子、五代目市川團子さん(19)です。2012年、8歳の時にスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」で初舞台を踏み、5月に猿之助容疑者の事件が発覚した際には、公演中の歌舞伎で猿之助容疑者の「代役」を務めました。

歌舞伎評論家の中村さんに「猿之助をつぐのは誰なのか」と聞くと、「歌舞伎界ではずっと團子さんがつぐことが『既定路線』だった。当然その前提で、みんながこれまでも動いてきた。ただ、今回のことで名前に悪いイメージがついてしまった。一番重要になってくるのは、おそらく團子さんの意思だと思います」と話していました。

また、猿之助容疑者が復帰する可能性というのはあるのでしょうか。

中村さんによると、仮に猿之助容疑者が将来、復帰する可能性があると考えるならば、次の「3つ条件」があるということです。

●世間の空気
●本人の意思
●主催者の松竹

「この3つすべてが合わさって“復帰していいよ”とならなければ、復帰は難しい」と話していました。

歌舞伎界がこの難局をどう乗り越えるのか、注目されます。

(2023年6月28日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)
24時間ライブ配信中
日テレNEWS24 24時間ライブ配信中
logo

24時間ライブ配信中