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手の甲にキス、暴言も…医療従事者を悩ます患者の「ペイハラ」実態【#みんなのギモン】

2023年10月14日 9:55
手の甲にキス、暴言も…医療従事者を悩ます患者の「ペイハラ」実態【#みんなのギモン】

「迷惑行為は認めません」
患者やその家族らによる医療従事者への暴言、暴力などを表す「ペイシェント(患者)ハラスメント」の禁止を呼びかけるポスターです。
罵声に平手打ち…医療従事者を悩ます「ペイハラ」の実態とは-。(報道局 調査報道班 菊地庸太)

■シャワー入浴「一緒に入りたい」

今月、取材に応じてくれたのは、ある総合病院に勤務する20代の女性看護師。
ひとつひとつ思い返すように記者に話しました。

「二の腕を触られたり、手を引っ張られて手の甲にキスをされたり。シャワー入浴の際、介助の必要がないのに『一緒に入りたい』と駄々をこねる人もいます」

こうした行為をしてくるのは高齢の男性患者が多いといいます。

総合病院に勤務する20代の女性看護師
「最初はびっくりしました。いずれも認知機能はしっかりしている患者さんです。ただこういう仕事なので、ハラスメントという認識を持つのがなかなか難しかったです。仕事中は集中しているのであまり思わないんですが、仕事が終わってから思い出すんです。恐怖がのちのち来る…来ましたね」

「冗談でもやっていいことと悪いことがあります。やられた側がどう思うのかを考えてほしいです。あくまで医療従事者と患者の関係、その一線は守ってほしいです」

■面談室に6時間「お前の治療はどうなってんだ!」

ペイハラは医師に対しても。ある男性の外科医(50代)はこう証言します。

「治療の効果が思うように出ない患者さんがいたのですが、家族の方から強く厳しい言葉で怒鳴られました。『何やってるんだ!うまくいってないじゃないか!この病院どうなってんだ!お前の治療はどうなってんだ!ここじゃどうにもならない!今すぐ転院させろ!』と、病院の面談室で5~6時間続いたと思います。夕方にいらして深夜までやっていました」

転院して病状が改善することに医師は懐疑的でしたが、医師が家族の意思を尊重して主張を受け入れると、患者は転院したといいます。

「不安が高じて態度や言葉が強くなるのは人間なので仕方ないです。私たちはそういう状況が少しでも和らぐよう小まめに分かりやすく説明することに尽きます。ただ、なかなか聞く耳を持って頂けない患者さんやご家族も実際には存在します。『それはあんたたちのミスでしょ!』と」

■外来窓口で「待ち時間が長い!」

そして病院の事務職員らも、つらい経験をしていました。ある病院の事務職員に話を聞くと・・・。

「外来の窓口で大声をあげて騒ぐ患者さんがいます。『待ち時間が長い!』『あの医者の態度がよくない!』『あの看護師の対応は何だ!』と。『殴ってやろうか?』と言われたこともあります。待合室で患者さんに目線を合わせるため、膝をついて対応している際、平手打ちされた職員もいます」

■約7割が「ペイハラがあった」と回答

今、ペイハラは各地の医療機関で問題になっていますが、長崎県の医師会が2020年に行った調査では、県内72病院のうち約7割にあたる49病院が「ペイハラがあった」と回答し、その内容として「執ような要求」「暴言や暴力」「業務妨害」「医療行為に対する非難や責任追及」などが挙げられています。
また被害を受けたのは看護職員が約9割と最も多く、次いで事務職、医師でした。

厚生労働省は全国の都道府県などに対し、ペイハラ対策の情報を医療機関に周知することや警察との連携を推進するよう呼びかけ、患者から繰り返し迷惑行為などがあった場合には、診療の求めに応じなくてもよいとする通達を行いました。

■ペイハラあれば「警察に通報」

そのペイハラ対策に4年前から取り組んでいる埼玉県の春日部市立医療センターを訪ねました。

各フロアの受付や待合室に張られていたのは、「迷惑行為はお断り!!」と書かれた黄色いポスター。
ペイハラ行為があった場合には「警察に通報し厳正に対処します」との文言が。

■看護師を盗撮しネットに…

さらに「撮影・無断録音禁止」と書かれたポスターも。この病院でペイハラ対策の先頭に立つ蜂矢隆彦副院長はこう話します。

「多くの方に見て頂けるように何か所にも掲示しています」
「ある入院患者が検温などで部屋に入ってきた若い看護師を盗撮し、『この病院にはこんなにかわいい看護師がいるよ』といってネット上にアップしたことがありました。盗撮を抑止するためにもこういったポスターを掲示しています」

■万が一の「さすまたチーム」

さらに、見せてくれたのは防犯道具の「さすまた」。

「暴れる方々を抑えるため6人1組の『さすまたチーム』をつくり、警察の指導の下で訓練も行っています」

ペイハラ対策に取り組み始めてから4年。その間に変化はあったのでしょうか?

「患者様とご家族にマナーを意識して頂けるようになりました。職員も個人の責任ではなく組織として対応していることを意識できるようになり、職場の安全と安心につながっています」

■ペイハラで刑事責任も…

思えば記者自身も、体調不良で気持ちに余裕がなかったせいか、看護師の対応が冷たく感じられた時があり、ついついカッとなって強い口調になってしまった経験があります。

ペイハラに詳しい福﨑博孝弁護士は、誰もが加害者になる可能性があると指摘し、刑事責任に問われる可能性もあると警鐘を鳴らします。

「暴行罪、傷害罪、脅迫罪、威力業務妨害罪などが考えられます。また病院側から損害賠償を求められる恐れもあります」

ただ、患者と病院、双方が配慮の気持ちを持つことが大事だとも強調します。

■患者と病院「お互いにリスペクトを」

ペイハラに詳しい福﨑博孝弁護士
「患者も家族も、病気になれば精神的に追い込まれていく。医療従事者であればすぐ分かりそうなものの、あまりの忙しさに配慮を忘れてしまうことが多いのです。ペイハラをする患者や家族だけが悪いわけではなく、病院側にも反省しなければいけない点はある場合もあります。
患者と病院がお互いに対するリスペクトや配慮を欠いてしまったことが原因となって、ペイハラが生まれるケースが非常に多いのです。すべてのペイハラが一方的にどちらかが悪い、というものではないことを是非皆さんに知って頂ければと思います」

●あなたの身の回りの怒りやギモンをお寄せください。

お寄せいただいた情報をもとに日本テレビ報道局が調査・取材します。

#みんなのギモン

https://www.ntv.co.jp/provideinformation/houdou.html

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