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「米占領下の沖縄」写真展 撮影者の思い

2021年5月19日 0:09
「米占領下の沖縄」写真展 撮影者の思い

今月15日、沖縄が日本に復帰して49年となったのにあわせ、アメリカ統治下の沖縄の暮らしを伝える写真展が東京・銀座で始まりました。

半世紀以上たったいまを生きる私たちに問いかけるものとは。写真を撮影したジャーナリスト、森口豁さんに話を聞きました。

写真展「アメリカ世の記憶展」では、東京都出身で沖縄で長年、取材を続けてきた森口さんが1950年代から70年代に撮影した、30点あまりが展示されています。

1960年に伊是名島で撮影された「団塊の子ら」は、浜辺でまぶしい笑顔を見せる子どもたちの写真。彼らの多くは、中学卒業後、パスポートを持って本土に集団就職。差別と偏見に耐えながら一生懸命働いていたといいます。

1966年に那覇市で撮影された「中高生の『大行進』」は日の丸やプラカードを掲げ、デモ行進する学生たちの写真。

沖縄はなぜ、他国の支配下にあるのか。自分たちは日本人ではないのかと、日本への不信感を募らせる若者も少なくなかったといいます。

■復帰も「変わらぬ基地」日常の沖縄から見えるもの
Q.今回の写真展で1番伝えたいことは?

A.これは沖縄の歴史年表のようなところには出てこない、沖縄の日常なんです。つまり年表と年表の間を写したもの。活字に例えるなら、大文字のOKINAWAじゃなくて、小文字のokinawa。つまり、ごく普通の沖縄の人々の日常だったり、子どもたちの生活だったり…そういう写真なんですよね。

僕も報道関係にずっと携わって沖縄にいたから、事件・事故、悲惨な犯罪、米軍の犯罪、いろいろ見ているし、現場に行ってる、写真も撮ってる。でも、ここではそういうところは一切はずして、事件・事故の間をつないでいる、沖縄のごく日常的な風景、そういうところを見て欲しいんです。

Q.本土復帰前と復帰後、沖縄の人たちの置かれている状況をどのようにみていますか?

A.沖縄の人が復帰に託した思いというのは、重すぎる基地負担というか、軍事基地の重圧から逃れて、昔のような平和な、緑豊かな沖縄に戻るんだと、それが復帰だと、ずっとそういう意味で、沖縄の人たちは復帰に願いを込めていた。ところが実際に、復帰してみたら、基地は変わらない、変わらないどころか、自分たちの前に米軍のフェンスだけではなくて、日本政府という新たなフェンスが立ちふさがって、何をいっても、まずそのフェンスにまずはねられちゃう。アメリカに届かない。基地を減らしてくれとか、犯罪を減らしてくれとか、そういう意味で沖縄の人は非常に失望しているし。

それから、沖縄も実際の話、基地は減っていない、減ってないどころか、いま新たに辺野古の基地作ろうとしているでしょ、海を埋めて。そんなこともあって、僕が見て、もう沖縄に通いはじめて60年、生活していた期間も含めて60年になるけど、そういう意味では、沖縄はますます厳しくなってる、悪くなってる。沖縄の人たちは、非常に自分たちは差別をされているんじゃないかという受け止め方をしていますよね。

この写真展そのものは、これからもきっと日本には米軍の基地もある、犯罪もある、いろんなことが起きるでしょう、これからも。起きていくに違いないけど、その合間、大きな事件から事件の間をつないでるのは、こういう日常ですよ。本土の人に沖縄を理解して欲しいと僕は願い続けているけど、「点」で沖縄を理解するんじゃなくて、単に「事件があった」とか「悲しいことがあった」とか、その時その時の「点」で理解するんじゃなくて、それをつないで「線」にしてくれと。「線」にするために、こういう日常の姿というのを、きちんと一人一人の心の中に刻み込んでくれたら、つながるだろうと。「線」になったら、それが「面」になるだろうと。本土の人が沖縄を理解する「面」として広がるだろうと。そういう願いを込めて、この小さな写真展をやっているのですよ。

■新たな戦争への恐怖…届かぬ沖縄の思い
Q.沖縄戦では、沖縄が本土の防波堤となったといわれている。そういった状況はいまも変わってないと思いますか?

A.最近、沖縄の基地は米軍だけじゃなくて、自衛隊の基地建設がどんどん進んでいる。特に、宮古・八重山諸島ね。ミサイル基地建設が進んでますよ。とても沖縄の人たちはみんな恐れを感じている。というのは、これだけの戦争というのは、かつてのような地上戦じゃなくて、ボタン1つで決まっちゃうような、逆にいえば、沖縄に住んでる人からいえば、10分~20分のうちで逃げないといけない、そういう戦争ですよ。ミサイル基地がたくさんできて、戦争だっていって、沖縄の人たちは、小さい島といっても、石垣島、宮古島、それぞれ5万人あまりの人たちが住んでいるわけでしょ。その人たちがどこに逃げるの?海を渡ってよ。逃げようがないようね。

そういった意味で、新たな基地化、米軍基地だけじゃなくて自衛隊も含めた新たな軍事基地化というのが進んでいることについて、沖縄の人はとても、不安に思っていますし、根強く小さな戦いでも、根強く反対の戦いを続けているよね。でも、なかなか本土に届かないんですよ。沖縄の人たちがどんな思いで、何を叫んでいるかというのは。それが沖縄の人にとって、1番はがゆい思いじゃないかな。

Q.そういったことが少しでも写真展で伝わったらと…?

A.かわいい子どもたちの写真とかあるでしょ?ああいう子どもたちの目の輝きとかほほえみとか、そういうものを、写真を見る人や本土の人が脳裏に焼き付けて、沖縄で何かあった時には、その子どもたちのあどけない表情とか笑顔を思い出して、沖縄の問題は自分たちも一緒に声をあげないと解決しないんだということに気が付いて欲しいと…そんな気がしていますけどね。

■悲惨な戦争体験…次世代が受け継ぐには?
Q.本土の人、そして戦後生まれの世代が沖縄の問題を共有していくにはどうしたらいいですか?

A.実際に沖縄では、住民の4人に1人が死ぬようなひどい戦争があったわけよね。戦争に巻き込まれたわけね。その体験がずっと、まだ、じいちゃん・ばあちゃんぐらいがその体験者だけど、ずっと語り続けている。やっぱり、長い歳月と共に、どんどん歴史とか戦争とか、そういうものが遠い過去のものになっていく、これはやむを得ない。でも、それはやっぱり、やむを得ないと忘れてしまうんじゃなくて、きちんと、体験者たちの声をきちんと受け止めて、それをまた次代に引き継いでいくような、やっぱり体験者が感じた恐怖というのを、想像力を思いっきり働かせてね、描いて欲しいよね。

想像の世界だけども、戦争というのはどんなに悲惨なものか。そのためには写真を見ること、あるいは本を読むこと、映画を見ること、いろんな方法があると思うけどね。あらゆるジャンルを活用して、そういう体験を自分のものにしていく…みたいなことを、本土の人にはやって欲しい。僕もヤマトンチュなんだけど、その1人としていいたいね。

写真展は、東京・銀座の沖縄県アンテナショップ「銀座わしたショップ本店」で今月31日まで開かれています。

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