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研究・ビジネス・教育で気候変動問題を解決

2021年6月25日 20:29
研究・ビジネス・教育で気候変動問題を解決

■Think・Do・Be 3つの取り組みを実施

高間さんがCEOを務めるSustainability&Resilience(通称su-re.co)は、インドネシア・バリ島を拠点に活動する“国際サイエンティスト集団”だ。活動内容は「シンクタンク」「ドゥー(Do)タンク」「ビー(Be)タンク」の3つに分けられ、いずれも「地球のギフトメーカーになること」をモットーに、持続可能な社会づくりのために行っている。

「シンクタンクは日本でも耳にすることがあると思います。要は研究機関ですね。私の研究領域はエネルギーと気候変動で、事業のコアとなっているのは欧州連合の研究事業です。また、国連やJICA(=国際協力機構)などの、政府系プロジェクトのコンサルティングも行っています。

ドゥータンクは研究を基にしたビジネスを行っています。コーヒーやチョコレートを販売し、収益の一部を気候変動を学ぶためのスクールの運営や、バイオガスエネルギーを広める活動にあてています。最後のビータンクでは、教育活動や政策提言など、人や自分を変えていく活動を行っています」

高間さんはオックスフォード大学で環境学の博士号を取得した研究者。そのため、コアとなるのはやはり研究事業だという。

3つの軸で事業を行うことにより、収益源を多角化するとともに、それぞれの活動が相互に影響を与えているという。例えば、研究やビジネスの経験を生かすことで、教科書だけでは提供できない学びを若者たちに提供できるという。

2021年3月には東京大学でオンライン講座を開講。通信制高校のクラーク記念高校では、サステナビリティの授業を行っている。さらに、持続可能性を学ぶことで注目されているインドネシアの「グリーンスクール」とも連携し、長期的に教育に関わることも決まったという。

「僕たちが実際にやっている研究が授業に生かせ、授業やビジネスで得た知見が研究に生きる。また、バックグラウンドの面白さから商品に注目してもらえることもあるんです」

■su-re.coを生んだ4つのスイッチ

高間さんがsu-re.coの活動に行きつくまでには、高間さんの“スイッチが入った”4つの経験があった。最初のスイッチは、10歳のとき。高間さんの価値観を大きく変えた出来事だという。

「10歳のときに交通事故に遭い、1学期の授業に丸々出られず落ちこぼれていました。そんな僕に占い師が『君は大器晩成型だ』と言ったんです。そこから、コツコツ続けたり長期的視野で物事を考えたりするようになりました」

2つ目のスイッチは、高校卒業後に経験したオーストラリア自転車1周旅での出来事だ。1万8千キロメートルある砂漠を自転車で横断しているとき、360度ほぼ砂漠の中で、花が咲いている風景に出会ったという。

「考えられない世界ですよ。まったく音がなかったんです」

この強烈な体験から、自然保護に目を向けるようになる。自然について学ぶため、高間さんはオックスフォード大学に進学した。

3つ目のスイッチは、卒業後にシンクタンクで働いていた頃に訪れた。スウェーデン政府のプロジェクトに携わっていた高間さんは、南アフリカのハセララ村で気候変動と住民の暮らしぶりについての研究を行った。その研究レポートは、IPCC(=気候変動に関する政府間パネル)がノーベル賞を受賞した際、参考文献に挙げられたという。

「でも、僕はその村の人たちに解決策を提示できなかったんです。気候変動も含め、彼らが置かれている状況があまりにも悲惨で。国も助成金をばらまくだけで、本質的な解決策を提示できていませんでした。そんな中、村の農家の人に『勉強だけじゃなくて、何かしなさい』と言われたんです。研究は重要ですが、それだけではいけない。この気づきが研究、ビジネス、教育を並行で行うsu-re.co立ち上げにつながっていきました」

最後のスイッチが押されたのは、JICAがインドネシアで取り組む気候変動の巨大プロジェクトに参加して2年目のことだった。父親が脳梗塞で倒れ、数週間の闘病の末に亡くなったことを機に、自分の生き方を見つめ直したという。

「僕は研究者として、考えることを何よりも重視しています。僕たちが取り組んでいる社会課題は、解決に時間がかかるものです。インターンやスタッフにも『3か月で解決しようと思わないように』と伝えています。

しかし、人生は長いとはいえ、確実に明日がくるとは限らない。父の死を受けて、僕は僕のやりたい方法で取り組みたいと思い、JICA専門家の契約を更新せずにsu-re.coを立ち上げることにしたんです」

■考えることで、より正しい行動を

今後、高間さんは教育に力を入れていきたいという。

「SDGsが広く知られるようになった一方で、17の目標を暗記するだけのセミナーなど、本質的ではない教育も見られます。現在、クラーク記念高校で僕が行っているのは、17の目標が決められた経緯や国連の運営方式を伝え、その上で個人ではどのようなレベルで実践できるのかという授業です。実現したい未来に到達するためには、逆算して物事を考え活動することが求められます。SDGsも同じです」

長いスパンで物事を捉え、今できることを考えて実行する。そのあり方について、高間さんは「やっぱり、10歳のときに言われた『大器晩成型』が効いているんですよ」と笑った。

「私の場合、何か選ぶとき、短期的には苦しくとも長期的には利益が出るものをどうしても選んでしまうんですよね。

今の若い人たちは、早く結果を出さなければという思いから、とにかく行動に意識が向いているように感じることがあります。しかし、善意から始まった活動のはずなのに、良くない結果になってしまったということが山のようにあるのが現実です。十分に調べていないまま走りすぎた結果だといえるでしょう。

アイデンティティーが研究者である私としては、やはりThinkを大切にしたい。勉強をして、過去の偉人から学ぶことができれば、さらに良い解決策が提案できると思います。考えてから動くことで、本当に正しいことができるのです。回り道のようでいて、最終的なゴールに到達するのは案外早かったりもすると思います」

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この記事は、日テレのキャンペーン「Good For the Planet」の一環で取材しました。

■「Good For the Planet」とは

SDGsの17項目を中心に、「地球にいいこと」を発見・発信していく日本テレビのキャンペーンです。
今年のテーマは「#今からスイッチ」。
地上波放送では2021年5月31日から6月6日、日テレ系の40番組以上が参加しました。
これにあわせて、日本テレビ報道局は様々な「地球にいいこと」や実践者を取材し、6月末まで記事を発信していきます。