「ゴミ拾いは面白い!」常識を変える挑戦
■ゴミ拾いのイメージを変える
全国各地で様々な団体が行うゴミ拾い活動。グリーンバードがターゲットとしているのは、社会貢献に熱心な人たちでも、ちゅうちょなくポイ捨てする人でもなく、集団における「2:6:2の法則」で「6」に位置する人たちだ。
悪いと思うが、周囲に流されて自分もポイ捨てしてしまう。ボランティアに参加したいが一歩踏み出せない。そんな人たちの行動を変えることで、ポイ捨てのない社会の実現を目指している。
「一度でもゴミ拾いに参加した人は、ポイ捨てをしなくなるという傾向があります。ゴミ拾いに興味のない人がどうすれば参加したくなるかが重要です」
そのためにまず、ゴミ拾いのイメージを変えることから始めたという。
「ゴミ拾いと聞くと、真面目で堅実で、ともすると問題を起こした時の罰則のようなネガティブなイメージがありました。そこで、全員おそろいの緑色のビブスを着て活動し、街中で目立たせる事で、ゴミ拾いをオシャレでカッコよく見せようとしました」
誰でも気軽に参加できるように、掃除用具など必要な物はなく、手ぶらで参加可能。参加登録も不要だ(2021年6月現在は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、人数制限の上、事前登録制となっている)。
最後に集合写真を撮影し、あいさつを交わして解散。次回の参加は強制しない。掃除の時間は集合から解散まで約1時間。拾い足りないくらいの時間に設定しているという。
ただ、ゴミ拾いだけでは、やりがいはあっても「楽しい」という感情は湧かない。そこで考えたのは、出会いの場としての機能だった。
「参加者同士の間で、自然に会話が生まれる仕掛けを考えました。例えば、参加者には、燃えるゴミ袋か燃えないゴミ袋のどちらか1枚しか渡しません。すると、『たばこの吸い殻、お願いします』といった会話が生まれます。そのやり取りを繰り返してくうちに『どんな経緯で参加されたんですか?』など、気づけばゴミ以外の話で盛り上がり、仲良くなるんです」
街に住む人、働く人、学ぶ人など、世代や性別を超えて参加。普段出会うことのない人たちがゴミ拾いを通じてつながる。そんな光景が全国各地で繰り広げられているという。
「ゴミ拾いをきっかけに町内会や商店会とつながり、イベント企画や運営など、地域のお助け役を担うようにもなりました。また、ここで生まれたつながりは災害の時にもいきています。西日本豪雨が発生した際には、岡山チームのメンバーが集結し、災害復興の支援を行いました。ゴミ拾いが地域に新たなコミュニティーを形成しているのです」
■ゴミ拾いをビジネスに
福田さんが初めてグリーンバードの活動に参加したのは高校生の時。大学受験の内申点を上げるためにボランティア活動を探していたところ、見つけたのがグリーンバードだったという。
「不純な動機で参加したんです。すると、会社員や美容師、アーティストなどいろんな人たちがいて。それまで同世代の人としか話す機会がなかったので、ゴミを拾う以上に、様々な人との出会いがとても新鮮で楽しかったです」
大学進学後も福田さんは活動を続けたが、たまに参加する程度の関わり。卒業後は広告会社に就職した。社会人になって3年ほどたったある日、当時の理事長に呼び出された。そこで言われたのが「3代目の理事長をやらないか」という言葉。突然の誘いに驚いたものの、その場で「やります」と答えたという。
「心のどこかで働き方にモヤモヤしていたんだと思います。一生に一度の人生。もっとたくさんのことに挑戦し、成長したい。そんな時にグリーンバードに誘われたんです。
多くの人にゴミ拾いへの興味を持ってもらう仕掛けを生み出す仕事に面白さを感じました。世間的にみると、NPOは非営利でビジネスと一線を画している存在です。ゴミ拾いをビジネスとして確立し、NPOという職業の選択肢を知ってもらいたいと考え、理事長を引き継ぐ事を決意しました」
ただ、ビジネスへの挑戦は初めからうまくはいかなかった。広告会社の経験を生かして企業に営業したものの、断られてばかり。そこで福田さんが考えたのは「全国の参加者の声を聞き、グリーンバードの可能性を見直すことだった」という。
「話す中で気づいたのは、“ゴミ拾い”という枠から一歩踏み出さなければいけないこと。ただゴミ拾いをするだけでは、ゴミ拾いに興味がない人たちに届きづらい。別のアプローチが必要だと考えました。そこで『ごみ拾い×〇〇』の掛け算を構想しました」
音楽、スポーツ、ファッションなどジャンル問わず、様々なコラボレーションを仕掛けた。その中で導き出されたのは、“ゴミを拾う以外”のアクションだったという。
「例えば、2019年ラグビーW杯の際、試合会場のゴミ拾いをするのではなく、袋の上下を結ぶとラグビーボールの形になる仕掛けのあるゴミ袋を観客に配布しました。また、タピオカブームに伴うポイ捨て問題に対しては、原宿の交差点に、タピオカの容器に見立てたタピオカ専用のゴミ箱を設置しました。ゴミを拾うのではなく、“正しく”“楽しく”捨ててもらい、ポイ捨てを防止したのでです」
■拾ったゴミに新たな価値を見出す
グリーンバードでは、新たなチャレンジも始まっている。プラスチックゴミ問題に着目して、全国各地で拾ったゴミを、洗浄・粉砕・成型の工程を経て、コースターに生まれ変える「アップサイクル」の事業をスタートした。ゴミを循環させることで、新たな活動資金にもなっているという。
「これだけ多くのゴミがポイ捨てされていることや、この問題解決にどんなアクションを起こせばいいのか、そんな気づきをコースターを通じて伝えたいと考えています」
ポイ捨てのない社会に向けて全力で挑む福田さん。これからも変化し続けることでゴミ問題解決を目指す。
「19年前に活動を始めた当初は、ゴミ拾いを広めることがミッションでした。それから地域コミュニティーとしての機能が生まれ、様々な領域との掛け算が生まれ、今はアップサイクルという新しい価値も生まれています。これからも進化を続けて、ゴミ拾いの常識を変えていきたいですね」
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この記事は、日テレのキャンペーン「Good For the Planet」の一環で取材しました。
■「Good For the Planet」とは
SDGsの17項目を中心に、「地球にいいこと」を発見・発信していく日本テレビのキャンペーンです。
今年のテーマは「#今からスイッチ」。
地上波放送では2021年5月31日から6月6日、日テレ系の40番組以上が参加しました。
これにあわせて、日本テレビ報道局は様々な「地球にいいこと」や実践者を取材し、6月末まで記事を発信していきます。