“粗大ゴミ”減らす自治体と企業の試みとは
世界が取り組むSDGs。増える一方の粗大ゴミが問題になっています。こうした中、お得に、気軽にものを再利用してもらおうと自治体と企業が始めたある試みが注目されています。
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今月、東京・世田谷区の住宅街の一角にできた施設には、午前9時のオープンと共に続々と人がやってきました。みなさん着くなり降ろすのは、家具や家電です。
トランクぎっしりに、ものを詰め込んだ女性もいました。持ってきたのは、かき氷機です。
「ホームパーティーよくやっていたが、コロナでできなくなった。こういうイベントものが全然使えなくなって」
大量のキャリーバッグを持ち込んだ男性は─。
「いま海外にいけなくなった。使う機会がなくなった」
実はここ、家で不用になったものを持ち込むことができる、その名も「世田谷区不要品持ち込みスポット」です。本来、粗大ゴミの回収には手数料がかかりますが、無料で引き取ってもらうことができます。
利用者
「捨てちゃうのも、もったいない。ひょっとしたら、使ってもらえるかも」
利用者
「フリマアプリの販売も考えたが、手間・送料があるので」
運営するのは世田谷区とベンチャー企業の「ジモティー」です。月およそ1000万人が利用するものの取引を行えるサイトを展開する会社です。
ジモティー取締役 片山翔さん
「簡単に持ち込めてリユースできるスポットを作ることで、ゴミの廃棄量を減らす実証実験」
スポット開設の背景とは何でしょうか。世田谷区のゴミの中継所を、おとずれると、床一面を埋め尽くす家具や家電などの粗大ゴミがありました。わずか2日分の量だといいます。
世田谷区 清掃・リサイクル部 泉哲郎事業課長
「(回収の)申込件数が一時期に比べて非常に多い」
コロナ禍前の去年2月時点では、粗大ゴミ回収の申込件数は、月に3万件ほどでしたが、今年5月には、およそ4万5000件に増加。
世田谷区 清掃・リサイクル部 泉哲郎事業課長
「家具の買い替え、インターネットショッピング、リモートワークで必要な機材の買い替え、進んでいるところもあるかと」
しかし、回収した粗大ゴミの中には、まだ使えるものも多いといいます。そこで今回、不用品の中でもまだ使えるものを持ち込める場所を作り、どれだけリユース品として引き取られるか調べる実証実験を始めたのです。
持ち込めるのは、世田谷区民だけで、事前に予約し、直接、持っていきます。破損したものなどは、持ち込めず組み立てが必要なものは、完成した状態で引き渡すのがルール。
小さい頃から遊んだ遊具をお父さんと持ち込んだ男の子は─。
利用者
「世田谷区のHPで見て、捨てないで使ってもらえる方がいい」
そして、リユース品の引き取りは世田谷区民以外も可能。実際に来て見ることができますが、ジモティーのサイトにも、写真付きでアップされます。
区外から来たという、男性は─。
利用者
「ジモティーに載っていて、ほしかった。コロナで太っちゃったんで」
コロナ太り解消のため、ほしかったというトレーニング器具を、無料でゲットしました。使い心地は─。
利用者
「効いてますね、背筋が。これでやせます」
無料のキャリーバッグを引き取りにきたのは、千葉県から来た外国人男性です。
利用者
「本当にスゴイね、問題ない全然」
ほかにも、椅子やソファー、ホットプレートなどの調理家電に、ゴルフバッグなど無料で引き取れるものが、ずらり。
無料のゴルフバッグをゲットした利用者
「バッグに負けないくらいのスコアを」
有料のものもありますが、手が届きやすい価格帯にしているということです。
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一方、不用品を持ち込む人には、どのような事情があるのでしょうか。
世田谷区に住む、福沢さん一家。元気な3人の子供たちとにぎやかな日々を送っています。
福沢尉浩さん
「在宅で仕事することが推奨。家で仕事する機会が増えた」
月のほとんどが、テレワークです。でも、その場所が…。
「ちょっとどいてや」
「いやー」
「こちらで…」
2階は、寝室や物置として使っているため、仕事は、家族の共有スペースで行っています。
「子供がいる時はなるべく静かにしてと、遊びに行ってもらったり。物置になっている部屋を空けて、自分の書斎みたいにできたら最高。夢の書斎」
仕事に集中できる書斎を作るため、家族総出で、家の中の不用品を整理しました。
スタンドライトはまだ使えますが、子供が倒さないよう、物置に入れっぱなしになっていました。不用品はほかにも、買い替えたため使わなくなった鏡や家電などが見つかりました。
妻・綾子さん
「普通だったら(処分に)お金がかかる。気軽に持っていけるということで」
次の人のために消毒して、「不要品持ち込みスポット」へ。使えることがわかれば、ものの数分で引き取ってくれます。
「『お願いします』で終わった。すごい楽」
「家の不用品がなくなったので、夢の書斎に近づいたかな」
帰ろうとした、その時─。
「ママー、これほしい!」
「モノが増えるんですよ…」
夢の書斎は、もう少し先になるかも…。
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このスポットの開設は、来年3月までの予定です。今後、ジモティーは、ほかの自治体との運営も検討したいとしています。