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温暖化を防ぐ? 二酸化炭素を吸収する「ブルーカーボン」に注目 海草「アマモ」の再生広がる

2023年5月31日 19:42
温暖化を防ぐ? 二酸化炭素を吸収する「ブルーカーボン」に注目 海草「アマモ」の再生広がる

海の植物が二酸化炭素を吸収する「ブルーカーボン」が注目されています。今、海草を増やす取り組みが、企業や自治体で広がりを見せていて、中でも「アマモ」の再生が盛んになってきています。

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神奈川・横浜市にある「海の公園」の砂浜は多くの人でにぎわい、大人も子どもも一生懸命、海の中をのぞき込んでいました。探していたのは、「アマモ」という海草の種です。主に水深の浅い砂浜など、日本全国でみられるアマモ。実は、“身近でできるカーボンニュートラル”として注目されています。

近年、頻発する大雨などの異常気象の原因といわれるのが、二酸化炭素の急速な増加による「地球温暖化」です。地球の平均気温の上昇を抑えようと、日本は2050年にカーボンニュートラルの実現を宣言。官民挙げた取り組みが始まっています。

その二酸化炭素の新たな吸収源として注目されているのが「ブルーカーボン」です。

私たちの生活などで出る二酸化炭素は、海水にも溶け込みます。アマモなどの「海の植物」は光合成で二酸化炭素を体に吸収し、酸素を放出します。この時、植物がため込む分の炭素が、海の青さにあやかり「ブルーカーボン」と呼ばれています。

日本テレビは今年、ブルーカーボンの取り組みをスタート。5月、東京ガスグループなどと一緒に「海の環境保全」のイベントを開きました。二酸化炭素を吸収してくれる「アマモ」を増やすため、この日は、その種を採取しました。

イベントに参加した子ども
「アマモを再生したら、今起こっている地球温暖化がとまるって知った」
「(アマモを)いっぱい植えて、それを地球にいいようにやる」

採取した種は成熟させて、秋に海へ戻します。盛んになっているアマモの再生。実は生息場所にも理由があるといいます。

海辺つくり研究会 木村尚理事
「人が参加しやすいんです、浅い砂浜で。実はアマモのCO2(=二酸化炭素)の吸収効率が高い」

国土交通省の資料によると、炭素の吸収量は地上が19億トンに対し、海では29億トンと陸に比べて約1.5倍のポテンシャルがあるといわれています。

政府も「ブルーカーボン」の可能性に注目しています。

国土交通省・港湾局 青山紘悦室長
「魚がたくさん来る、水がきれいになる、CO2(=二酸化炭素)を吸収する源になる。最近は特に力を入れてやっています」

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アマモの茂みは別名「海のゆりかご」。多くの生き物が生息しています。

今回、イベントを開いた東京ガスは、アマモ場の再生に6年前から取り組んできました。なぜ、エネルギー会社が「海の再生」に力を入れているのでしょうか。

東京ガス・サステナビリティ推進部 小林直子さん
「二酸化炭素使用量を減らしている」

その取り組みの「成果」は、神奈川・横浜市の東京ガスのショールームにありました。

東京ガスは2021年、ブルーカーボンで吸収した二酸化炭素量の一部を買い取っていました。それをショールームで出す二酸化炭素の一部に埋め合わせをして、実質的な二酸化炭素削減につなげていたのです。

東京ガス・サステナビリティ推進部 小林直子さん
「エネルギー会社として、今は化石燃料に頼っていますが、持続可能な社会にしていく1つの活動として自然の環境活動をしています」

しかし、アマモ場自体がまだ少なく買い取れる吸収量も限られているため、他社との競合で2022年以降は買い取ることができていません。

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ブルーカーボンの取り組みを広げる自治体も増えています。福岡市は2005年からアマモ場再生に取り組んでいます。

福岡市・港湾空港局 上尾一之課長
「博多湾の環境保全に携わりたくても『時間や機会がない』という方もいますから、制度を活用することで間接的に協力することができます」

2020年から博多湾の「アマモ」などによる二酸化炭素の吸収量を売買して、売り上げを環境活動にあてる制度を実施。市民も購入できるようにしています。

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二酸化炭素削減につながる「ブルーカーボン」。私たちが自然環境の問題に気づくことが大切だといいます。

海辺つくり研究会 木村尚理事
「『自分ぐらいやらなくても、なんとかなるんじゃないの』っていう意識の人が相変わらず多い。全員が何らかの形で取り組んでいかないとCO2削減できない」

「アマモ再生」からつながる「ブルーカーボン」。みんなでできる取り組みが広がっています。

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