JR東海の検査専用車両「ドクターイエロー」引退 検測員の思い
先週、引退したJR東海の検査専用車両・「ドクターイエロー」。ラストランに込められた検測員の思いを取材しました。
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引退2日前。ドクターイエローの姿は、東京の大井車両基地にありました。最後の走行に向け準備をしていたのは、JR東海の検測員・板垣伸さん。
入社当時、架線を管理していた時に、ドクターイエローでの勤務に憧れました。検測員になっておよそ2年。車両は老朽化のため引退に。
板垣さん「もうじき引退なんだなと寂しさを感じつつ、ただいつも通り緊張感をもって前整備、行っている次第です」
実はラストランに向け、あるものも用意していました。
板垣さん「この資料のとおり装飾をしたいんですけど」
「ありがとう」の文字を窓につけ、ファンと車両に感謝を伝えるもの。
板垣さん「愛されているドクターイエローをこのまま黙って引退させてたまるかという思いがあって、どうしてもラストランに合わせてこの装飾を」
つける位置にもこだわります。
板垣さん「OK!ジャスト!」
検測員の思いを乗せて──先月29日、ラストランを迎えました。沿線に別れを告げながら、駆け抜けます。
記者「『ありがとう』という文字が見えます。ドクターイエローからこの街の皆さんへ、『ありがとう』の言葉が投げかけられています」
富士山とも最後の共演。そして…
アナウンス「ドクターイエロー最後の運転です」
午後6時前、東京駅に到着。およそ24年の歴史に幕を下ろしました。
鉄道ファン
「メッセージが貼ってあって、社員さんからも愛されている車両なんだな」
「昨日の夜作った旗です。ありがとう、お疲れさまって」
引退後の検査は、2027年以降、私たちも乗車する「N700S」の新型車両に、新たな装置を搭載し行われます。
現在、試作車両で装置の性能を確認していて、ドクターイエローにはなかった機能も。
JR東海・寺田泰隆さん「こちらに見えてきたものが、その装置になります」
架線を支える金具などを点検する装置。これまでは目視でしたが、高性能のカメラで走行しながら金具を撮影し、傷がないか確認します。
10日に1回のドクターイエローに比べ、営業する車両での検測はこんなメリットも。
寺田さん「ほぼ毎日データを取得できるということで、さらに安全性が高められると考えています」
多くの人に愛されたドクターイエローから、新幹線の安全を守るバトンが渡されます。