子宮けいがん撲滅へ 女子高校生がTikTok動画を知事に提案
日本では、子宮けいがんで死亡する女性は年間約3000人にのぼります。このがんを防ぐため、広く情報を知ってほしい、と群馬県の女子高校生2人が活動していて、群馬県知事にTikTok動画も提案しました。2人が訴えたいこととは?
群馬県の高校2年生、みかこさんとゆいさんは、子宮けいがんについて広く情報を知ってもらいたいと、Instagramを立ちあげました。子宮けいがんを調べようと思ったきっかけは、好きなインフルエンサー(淡島りりかさんなど)が取り上げていたのを見たこと。
調べてみると、子宮けいがんで死亡する女性が年間3000人近くいること、子宮けいがんの主な原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を防ぐためのワクチンの接種率が他国より低いことなどがわかりました。
こうした情報をもっと広く知ってほしいと考えていた時に、群馬県が政策を提言する高校生を募集しているのを知り、それに応募し選ばれました。
8月からこれまで、2人は県の担当者や産婦人科医師、行政に詳しい人などにも何度も相談し、子宮けいがんになる人をなくすための提言をまとめ、11月23日、群馬県の山本一太知事に直接、説明しました。この際、2人が考えたTikTok用の踊りを知事にもトライしてもらいました。
■高校生2人がまとめた提言とは…
知事に提言したのは、ワクチン接種と検診の推進です。具体的には
・学校にインフルエンサーを呼び講習会を実施
・TikTokなどで情報発信
・生理用ナプキンのパッケージにメッセージをのせる
・子宮けいがんワクチンの学校での集団接種
(各自が医療機関に予約し出向くのが大変なので。ただし、あくまで希望する人のみが接種。生徒や保護者への丁寧な説明も必要)
・県が3日間ほどの集中キャンペーン期間を作り、期間中に接種や検診を受けた人にプレゼント贈呈
知事は、物事を進める際、大勢の人がいいと思う一方、そうじゃないという人たちの意見、思いも大事だと述べた上で、子宮けいがんワクチンの啓発などを進めていく考えを示しました。県としては、TikTokでの発信とナプキンのパッケージにメッセージをのせることは進めたいと答え、2人はその日のうちに担当課と打ち合わせを行いました。
若い世代に関心を持ってもらえるようなデザインを2人が考え、それをもとに、県がナプキンのメーカーにかけあう方向で進めることになりました。
■2人に話を聞きました。
――提言をまとめる中で一番苦労した点は?
自分たちでは、ワクチン接種や検診率を上げるためにできることをふんわりした感じでは次々思いついたんですけど、アドバイザーの方に現実的なところを突かれると、そうか、これは難しいかなと、取り下げたりしました。インターネットだけで調べるのが難しいので、産婦人科医の先生2人に相談しました。
――知事への提言は伝えきりましたか?
学校での集団接種を提言の一つとして挙げたんですけど、県からは「難しい」という反応で、本当は、過去に実施した自治体の例など追加の説明をしたい気持ちもありました。今後、提言の仕方を少し変えて、県の担当の方々にも相談し、理想の形ではなくても実現できるか考えてみたいです。実は10月ぐらいに子宮けいがんワクチンの接種に行ったんですけど、送付された接種券を母が持っていて、母にまずサインをしてもらう必要があった。あと病院に電話して予約をしなきゃいけないけど、学生だと病院が開いている時間になかなか電話をかけられず、「ああ、今日もかけられなかった」と結構ハードルが高かったんです。学校でワクチンを打てますよとなったら、打つ人が増えるんじゃないかと思います。
――ほかに実施してみたい対策は?
学校でパネルディスカッション形式でインフルエンサーを呼んで、講演会をやりたいなと思います。学校で開催した方が絶対に生徒が見てくれるので。あと男子にも聞いてもらいたい。それから2人でインスタのアカウントを作りました。HPVって何だろうとか、検診に定期的に行きましょうねとか発信したい。インフルエンサーの方々は難しい内容もわかりやすくまとめてくれて、影響力も大きいので、こういう方々に協力してもらえたらなとも思います。
――今後進めていく中で一番伝えたいことは?
何よりも子宮けいがん罹患率ゼロということで、学生にはワクチン接種について知ってもらいたい。副反応を心配される親御さんもいらっしゃると思うんですけど。今は研究も進んで、ワクチンの効果が確認されてきているので、そういう情報を知ってもらえたらなと思います。そして、ワクチン接種で効果はあるけど、その後は定期検診も大事で、この2つのセットで、本当に子宮けいがんを撲滅できると世界的にいわれている。正しい情報を広めて、子宮けいがんが日本から無くなればいいなと思います。
──知事に提言する「リバースメンター」制度について
私たちが考えていることを大人がこんなにサポートしてくれる機会はないので、すごくうれしい。学校の先生も相談に乗ってくれますけど、(「リバースメンター」制度を支援する団体の)スタッフの人が専門家にメールを出してくれたり、人を紹介してくれたり、助けていただいて、とてもありがたかったです。
TikTokとか生理用品のパッケージデザインなどが実際に進んで、自分たちが言ったことが、すごく早く具体的に動きそうで、こどもでも大人に訴えれば、社会を変えることができるんだなと実感しています。やってみて本当によかった。自分たちだけのコミュニティーでは、活動してきたけど、ここまで大きく動くようなことはなかったし、事業化するなんてなかったのでうれしい。これまではこどもが何か発表しても、その場だけで終わってしまうことがあって、そこの一歩先にまで進むのが、「リバースメンター」の強みだと思う。
「リバースメンター」の任期は来年3月まで。2人は県と協力し、対策を実現していきたいと話しています。