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【子宮けいがん】保護者の4人に1人「HPVワクチン」知らず…接種進まぬ背景浮き彫りに――今年は特に「夏休みの接種を」医師が勧めたい理由

2023年8月7日 12:09
【子宮けいがん】保護者の4人に1人「HPVワクチン」知らず…接種進まぬ背景浮き彫りに――今年は特に「夏休みの接種を」医師が勧めたい理由
調査結果「HPVワクチンについて知っている」(HPVワクチンに関する意識調査:厚生労働省)

子宮けいがんを予防するHPVワクチンについての意識調査で、対象となる小学6年生から高校1年生相当の女性のうち、28%が「知らない、聞いたことがない」と回答したことがわかりました。
医師は、「子宮けいがんは若い世代に多い病気で、ワクチンと検診で予防できます。非常に有効なワクチンなので、時間に余裕のある夏休み中の接種を検討して」と話しています。

■HPVワクチン、何のため?

HPVワクチンとは、子宮けいがんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を予防するためのワクチンです。
ウイルスには性交渉で感染するため、性交渉をする前の年代で接種するのが望ましいとされ、小学6年生から高校1年生までは、公費により無料で接種できます。

そして、国による積極的な接種の呼びかけが控えられた9年間に、対象年齢だった人(1997年度~2005年度生まれ)も、2025年3月までの間に「キャッチアップ接種」として無料で接種できます。

■HPVワクチン、実際の認知度は…

国による積極的な接種の呼びかけが再開して約1年半がたち、厚生労働省は接種対象者本人やその保護者約2500人にHPVワクチンに関するアンケートを実施しました。

その結果がこちら。

子宮けいがんを「知っている」「少し知っている」と答えたのは接種対象者本人では69%、保護者では91%でした。

また子宮けいがんの原因となるHPVウイルスに関して「性交渉の経験のある女性であれば誰でも一生に一度は感染する可能性がある」という知識を問うと、「非常にそう思う」「そう思う」と答えたのが接種対象者本人では37%、保護者では46%でいずれも半数を下回っています。

そしてHPVワクチンについては接種対象者本人の28%、保護者の9%が「知らない(聞いたことがない)」と回答しています。

政府が接種を勧める取り組み(積極的勧奨)を再開したことは接種対象者本人の53%、保護者の23%が「知らない」と答えています。

一方、積極的勧奨を取りやめていた時期に接種の対象年齢だった世代(1997年度~2005年度生まれ)の女性に対して無料で接種できる「キャッチアップ接種」を行っていることについては対象の世代の接種対象者のうち53%と約半数が「知らない」と回答しています。

また、HPVワクチンのリスクについて十分な情報がなく接種をきめられないとする接種対象者本人や保護者はいずれも51%で半数以上が接種のリスクを懸念している結果となりました。

厚労省はこの結果について「HPVワクチンや接種の制度に関して、認知・関心は接種対象者本人、保護者ともに低いと感じている。」との受け止めを示しています。

その上で、乳児期のワクチンと比べ、医療機関へのアクセスが減るなかでの接種のため、周知がしにくいという点があるとし、メリットの大きさをしっかり周知できるよう取り組みを進めるとしています。

また接種対象者本人の意思なども関わってくる年齢での接種となるため、保護者だけでなく対象者本人にも理解してもらい不安を払拭できるように呼びかけていきたいとしています。

■医師は…「高2、高3は夏休み中の接種を検討して」

子宮けいがんやワクチンの啓発活動もしている産婦人科医の稲葉可奈子さんは、この結果について
「個別通知が送られているにもかかわらず、保護者の4人に1人が『知らない』というのは大問題で、郵送で1回通知を送るだけでは不十分といえます。」と指摘。

実は稲葉医師の病院では、夏休みに入ったとたん、このワクチンを接種する人が増えているといいます。

このワクチンは3回接種が必要ですが「14歳までなら2回接種ですむので、夏休みと冬休み または春休みで接種を終えられます」と稲葉医師は説明しています。

そして「子宮頸がんはだれでもかかりうる病気、若い世代に多い病気ですが、HPVワクチンと子宮けいがん検診で予防できます。がんになる手前の病変も予防するにはワクチンが必要。」と話します。

このワクチン接種後に、全身の痛みなど様々な症状が報告されたことについては「大規模な研究で、接種した群・接種していない群で、こうした症状の発症率に差がなかった、つまり、これらの症状はワクチンが原因ではないという分析ががでています。ほかの予防接種と安全性は同等と知って欲しい」と説明しました。

さらに「子宮頸がんは人類がはじめて撲滅しうるがんで、実際に、男女ともにこのワクチンの接種率が高いオーストラリアでは2028年には子宮頸がんが撲滅されると見込まれています。各国で子宮頸がん患者さんが減ってきている中、日本でだけ増えています。」と指摘。

現在の高2、高3の女性にむけては夏休み中の接種を検討してほしいと強調します。
「キャッチアップ世代の方は、(無料で接種できるのが)来年度までなので、もし来年、受験生とか社会人になるという方は忙しくなる前、今年のうちに、など、タイミングを逃さないように検討を。接種したら、お友達にも話をしてあげて下さい。知らない方がまだまだいます。」と話しています。

■性交渉した女性のほとんどが感染

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、男女とも感染するもので、性交渉の経験がある女性のほとんどが一生に一度は感染する可能性がある一般的なウイルスです。
感染しても、ほとんどの場合は自然になくなりますが、一部の人で子宮の入り口付近がウイルスに感染した状態が続き、その後、がんへと進行してしまうことがあります。

そういったリスクを下げるために、HPVワクチンの接種が推奨されています。

■政府は積極的に打つことを呼びかけ

日本では2009年にHPVワクチンがはじめて承認され、接種が始まりました。
2013年に定期接種が開始されましたが、副反応などの報告が相次いだことから国として接種の積極的な呼びかけを控えました。

その後、海外の研究などで、ウイルスの感染予防効果などのメリットが、副反応などのデメリットよりもはるかに上回ることが示され、また情報提供やサポート体制が整ったことなどから、2022年に積極的な接種の呼びかけが再開されました。

※子宮けいがんやHPVワクチンに関する情報は厚生労働省のHP

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html