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1.5℃の約束まであと0.4℃ COP27の注目点は…日本は世界の温暖化対策をリードするのか

2022年11月7日 21:35
1.5℃の約束まであと0.4℃ COP27の注目点は…日本は世界の温暖化対策をリードするのか
地球温暖化対策を話し合う国際会議「COP27」が11月6日、エジプトで始まりました。世界各地で異常気象による甚大な被害が相次ぐなか、どう解決策を見いだすのでしょうか。COP27の3つの注目点を読売新聞科学部の中根圭一記者が解説します。

■1.5℃の約束まで残りはあと0.4℃しかない

地球温暖化が進む今、世界各国は「1.5℃」を努力目標に掲げています。

この「1.5℃」とは、2015年に採択された「パリ協定」で設けられた数値のことです。今世紀末までの世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える努力をするという目標を指します。ところが、既に1.1℃上昇していて、残りは0.4℃しかありません。

国連気候変動枠組み条約事務局は10月下旬、「各国が温室効果ガスの排出削減目標を達成しても、今世紀末までにおよそ2.5℃上昇する」という報告書を公表しました。現状の取り組みを続けるだけでは、パリ協定が求める努力目標を達成することができず、ほど遠い状況にあります。

■「COP」は何の略称?

その温暖化対策を考えるのがCOPです。正式には「国連気候変動枠組み条約締約国会議」という長い名称ですが、英語にすると「Conference Of the Parties」=「仲間の会議」という意味になります。

現在、198の国と地域が締約して「仲間」となっています。今回のCOP27はきのう11月6日にエジプトで開幕し、約2週間、開催されます。日本でも1997年に京都で3回目の「COP3」が開かれ、先進国の温室効果ガス削減の数値目標などを定めた「京都議定書」が採択されました。

■ポイント(1)「異常気象」で甚大な被害 途上国への支援は?

主なポイントは3つあります。まず1つ目は、異常気象によって甚大な被害に見舞われている途上国への支援策。これがCOP27の主要なテーマとなります。

世界中で気象災害が頻発し、環境が大きく変わっています。

例えば、パキスタンでは今年の夏、大洪水が発生し、国土の3分の1が水没しました。約1740人が亡くなり、人口の7分の1人あたる約3300万人が被災しました。パキスタンの8月の雨量は例年の3.4倍で、1961年以降で最高を記録しています。今も一部地域は1メートル以上、沈んだままとなっています。

ほかにも、ブラジルも豪雨に見舞われ、欧州は熱波に、アフリカは干ばつ、フィジーは海面上昇と、世界中で異常気象による被害が目立っています。

温暖化による悪影響、これを「ロス&ダメージ」と言います。途上国はそもそも社会基盤が脆弱なため、先進国に比べて深刻化する傾向にあります。解決策として先進国からの資金援助、そして、脱炭素や災害復旧に関する技術の提供を途上国が求める動きもあります。しかし、先進国にとっては多額の資金が必要となるため、合意のとりまとめには紆余(うよ)曲折が予想されます。

■ポイント(2)ロシアのウクライナ侵略が温暖化に拍車

今年2月、ロシアがウクライナ侵略に踏み切ったことで、欧米各国はロシアへの制裁の一環として、ロシア産の原油や天然ガスの輸入禁止や削減を進めました。日本もロシア産の原油については6月から輸入をしていません。しかし、エネルギー資源をどこかから得なければならないため、天然ガスが取り合いになっています。各国はロシアに代わる天然ガスの調達先として、アメリカや中東などからの輸入を増やしていますが、天然ガスの価格が高騰してしまって、電気代も上がり、電力の安定供給が難しい状況になってしまいました。

そのため、ドイツなどでは、より安く、手に入りやすい石炭による火力発電を改めて活用する動きが出てきました。石炭火力発電は、温室効果ガスの排出量が天然ガスの2倍に上るため、温暖化に拍車がかかるという構図になります。脱炭素社会への「旗振り役」だった欧州が「石炭火力発電回帰」となると、温暖化対策の流れにブレーキがかかった状態になりかねません。

2015年に採択された「パリ協定」に加えて、日本も2020年に「カーボンニュートラル宣言」をして、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという高い目標を掲げています。さらに、去年イギリスで開かれたCOP26の成果文書「グラスゴー気候合意」では、すべての国が石炭火力発電を段階的に削減する努力をすることが初めて盛り込まれ、「脱炭素」へと足並みをそろえて行こうとしていました。

ところが今回、ロシアのウクライナ侵略によって「石炭回帰」というこれまでの流れと逆行する要素が加わりました。COP27では温暖化対策の計画の実行に遅れが出ないよう、各国の協調が試されます。

■ポイント(3)気候変動の影響を受ける「若者」が動く

気候変動の問題は、次世代、さらにその次の代と長い目で取り組んでいく必要があります。

温暖化対策に当事者意識を持って取り組む若者も増えています。COP27の直前には、若者が集まって議論するCOYというイベントが開かれました。

日本からも大学生を中心に活動する環境NGO団体「Climate Youth Japan」の早稲田大学4年生の山本陽来(やまもと・はるき)さんが日本代表として参加して、エジプトでの様子を撮影した写真をおくってくれました。

山本さんは取材に対して、「COYには、各国の環境活動家や研究者、起業家など、世界中から気候変動に関心のある多くの人が集まり、小学生の姿もありました。パリ協定6条の炭素市場や、洋上風力発電、ユースエンパワーメント(地位向上)など、気候変動対策に関するあらゆるトピックが話し合われました」と報告してくれました。

さらに、山本さんは「グローバル・ユース・ステートメントという文書が作られるので、ユース、若者の声が少しでも社会に届くことを願っています」と報告してくれました。

■日本が世界の温暖化対策をリードせよ

COP27において日本政府が求められていること、それは「日本が世界の温暖化対策をリードせよ」ということです。

日本はかつて「環境先進国」と呼ばれ、優れた環境技術を誇っていました。しかし、現在は「環境後進国」とも呼ばれています。温暖化対策では欧州が大きくリードしているうえ、米国も、バイデン政権になってからは脱炭素の取り組みが加速しています。冒頭でも触れましたが、今世紀末までに気温上昇を1.5℃に抑える努力目標がありますが、現在で既に1.1℃上昇しており、残りは0.4℃しかありません。

COP27では、日本が脱炭素の議論をリードするのかどうか、視聴者の皆さんは日々のニュースでよくチェックしていただきたいと思います。

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