“人食い”の異名も──致死率3割「劇症型溶連菌」の感染、過去最多ペース 毒素「9倍」変異株が流入か 飛まつ感染も?
溶連菌の一種“人食いバクテリア”の感染が急増しています。今年の感染者は、過去最多だった去年を大きく上回るペースで増加。この「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の致死率は約3割で、命に関わる症状が引き起こされます。流行の背景や対策を考えます。
藤井貴彦キャスター
「今年に入って特に注意してほしいと言われているのが、“人食いバクテリア”とも呼ばれる、溶連菌の一種による感染症です。最近感染し、今も入院しているのが、元中日ドラゴンズの選手で現在独立リーグのチームに所属する滝野要さん(27)です」
「5月17日にドアに指を挟み、左手中指に切り傷ができました。その後も試合に出場していましたが、4日後には切り傷から壮絶な痛みがでて、23日に病院に行くと直ちに入院・手術となり、後に医師から『“人食いバクテリア”に感染していた』と告げられました」
「今、こうした感染が増えているということです」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「正式には『劇症型溶血性レンサ球菌感染症』と言われるもので、感染が確認された人は去年が941人で過去最多でした。今年は既に891人(5月19日時点)と、去年の同じ時期の約2.8倍に上っています」
小栗委員長
「溶連菌という細菌に感染した人が、まれに『劇症型』と呼ばれる命の危険にも関わる症状を引き起こすものです」
「具体的には、初期には風邪のような症状、手足の壊死(えし)を引き起こすような腫れや痛みの急激な悪化、息苦しさや冷や汗、数十時間以内の多臓器不全といった症状が出ます」
「30歳以上の人に多く、48時間ほどで命を落とすケースもあり、致死率は約30%と高いことから“人食いバクテリア”とも呼ばれています」
藤井キャスター
「滝野選手の場合は、ドアに指を挟んだことが感染のきっかけではないかとみられています。どんなことから感染してしまうのでしょうか?」
小栗委員長
「東京感染症対策センター所長で聖マリアンナ医科大学の賀来満夫特任教授によると、傷口から入るケースが多いものの、感染経路が不明の方も多く、4月に東京都では医療従事者向けのマニュアルを改定し、飛まつ感染も感染経路に追加したということです」
「全く基礎疾患がない若い人でもなることがあるので、注意が必要です」
藤井キャスター
「なぜ今、増えているのでしょうか?」
小栗委員長
「賀来特任教授は『コロナが比較的落ち着いて感染症対策を徹底する人が減ってきていること、毒素の量が従来株より9倍多く感染力も強いとされる溶連菌の新たな変異株“M1UK”が海外から入り、今年は既に4割以上が置き換わっていることが要因では』と話します」
藤井キャスター
「どんな症状が出たら、溶連菌の劇症型を疑うべきなのでしょうか?」
小栗委員長
「傷口まわりの腫れや痛みが急激に広がった場合や、意識がもうろうとする、息苦しくなるといったショック症状が出た場合には劇症型の可能性がありますので、できるだけ早く医師に相談してほしいということです」
「また、そもそも感染しないためには傷ができたら傷口を清潔にする、マスク・手洗いといった基本的な感染対策も効果があるということです」
藤井キャスター
「まずは私たちにできる対策を、ということですね」
板垣李光人さん(俳優・『news zero』水曜パートナー)
「小さい時に溶連菌に感染したのですが、のどがとても痛かったのを覚えています。劇症型は致死率30%ということです。現実味がなければないほど、『自分はならないでしょ』と思ってしまいがちですよね」
「自分もあるかもしれない、手の消毒などコロナがあって気を付けていたものが緩みつつあるな、と思っていました。僕もやれることはやっていきたいなと思いました」
(5月29日『news zero』より)