第2の人生は海上保安官 異色の転身…28人が新生活開始
桜の便りが届き始めた先月26日、広島県呉市にある海上保安大学校で卒業・修了式が行われ、156人が海上保安官として新たな一歩を踏み出した。
一糸乱れぬ卒業生らによる行進から始まった式典。
卒業生の代表は「近年の国際情勢は非常に厳しさを増している。国内外から寄せられる期待にこたえるべく若き柔軟な対応力を発揮し、最前線の現場で日本の海を守っていく」と強い決意を語った。
海上保安庁は、来月、創設75周年を迎えるが発足以来、領海警備や海難救助、海洋調査など様々な業務を行ってきた。
そんな中、日本の周辺海域をめぐる情勢は年々、厳しさを増し特に沖縄県・尖閣諸島周辺の海域では中国海警局の船が毎日のように接続水域を航行し領海侵入も頻発している。
海上保安庁の業務量が増す中、現場の最前線で活躍する幹部を養成する海上保安大学校の役割は非常に重要になる。
卒業を迎えた学生は私たちの取材に対し、「職務は多岐にわたるので国内のみならず国外でも活躍できる海上保安官になりたい」、「現場で冷静に対応できる保安官を目指す」と目を輝かせた。
今回、門出を迎えた156人のうち28人は実は特殊な経歴の持ち主だ。
海上保安大学校には、これまで高卒で入学するコースしかなかったが人材確保が急務となりおととし、大卒者も入学できる「初任科」が新設され2年間で幹部を速成することになった。
ライフセービングなど海にかかわる仕事をしていた人のほかドローンによる測量業務、会計事務所や法医学教室出身者もいる。
こうした異色の経歴をいかし業務が急増している海上保安庁に新しい風を吹き込みつつ即戦力の幹部として活躍してもらうのがねらいだ。
一期生として初任科を修了した法医学教室出身の佐藤若菜さん(28)は2年間の学校生活について「集団生活は初めてでハードルだったが同期がいて心強く大きな宝」と振り返った。
「私たちの進んだ道が後に続く初任科の道になるのでその自覚をもってこれからやっていきたい。法医学と海上保安庁の架け橋となれるような人間を目指したい」と意気込んだ。
また、会計事務所に勤務していた吉川政伸さん(30)は「予算やお金というところで当庁を支えるのがひとつと業務を経験するなかで得た能力をどんな場面でもいかせるような海上保安官になりたい」と決意を語った。
修了した初任科生28人は式典後すぐに配属先に移動。
船での生活をしながら今後、各現場で指揮をとるための訓練をスタートさせていて、今後、海上保安庁のパイオニアとして鮮明な足跡を残すことが求められていくことになる。