「扶養控除」見直しで高校無償化から外れる世帯も 子育て団体が反対
政府のこども・子育て関連の政策について、子育ての当事者らが記者会見し、望む方向に進んでいる政策もあるとしながらも、高校生がいる世帯の税金を軽減する「扶養控除」が廃止されると、高校無償化の対象から外れてしまうなど、ほかの制度にも影響がでるとして、「扶養控除」の見直しに改めて反対しました。
12月1日に東京都内で会見したのは、子育て中の保護者の団体や子育て支援団体など4つの団体です。4団体はこれまで、「妊娠・出産の無償化」「児童手当の所得制限撤廃」「妊娠期から必要な支援をする子育て版のケアマネジャー導入」「全てのこどもに保育を」「安定財源の確立」を求めてきました。
1日の会見で4団体は、政府が打ち出している政策をみると、「妊娠・出産の無償化」が非常に進捗していると歓迎し、「出産が保険適用されたら画期的」「妊婦健診が無料になれば国際標準が実現する」としました。
そして、政府が打ち出した政策の中で、子育て世帯が望む方向に一番進捗しているのは「児童手当」だとし、高校生にも対象を広げ、所得制限をなくすという政府の方針は、「世界標準に追いつく大きな前進。第三子のカウント方法を変えることも期待したい」と述べました。
しかし、高校生年代の子がいる世帯に児童手当を支給すると同時に、政府は、高校生や高齢者がいる世帯の所得税を軽減する「扶養控除」の制度を見直して、高校生がいても、その世帯の所得税が軽くならない可能性がでてきていることには強く反対しました。
会見した1人、教育経済学が専門の日本大学の末冨芳教授は、高校生の扶養控除が廃止されると、納める税金が増えるだけでなく、これまで受けていた教育に関する支援制度が受けられなくなる世帯がでてくる、他の制度にも影響を及ぼすとして、扶養控除見直しに反対しました。
扶養控除がなくなると、課税所得(税金の対象となる所得)が上がるため、年収制限などにかかってしまい、高校生等奨学給付金や高校無償化などが受けられなくなる世帯がでると訴えました。
子どもと家族のための緊急提言プロジェクトの榊原智子さんは、政府が児童手当拡充の一方で、子育て世帯から集める税金を増やすとすれば、「やっとユニバーサルな児童手当にむけ、一歩踏み出したはずなのに、なんでまた、こどもを育てている人たちの中での再分配を行うのか。金額の問題ではなく、方向性として違うと思う」と反対しました。
「子育て世帯のうちでも富裕層については、そこまで支援する必要はないのでは」という意見について、海外の事情にも詳しい榊原さんは、「フランスや北欧などでは、富裕層含めてこどもがいる世帯におしなべて支援がある。もし制度に(所得制限など)線引きがあると、それが変更される可能性があり、人々からすると見通しがたたない。教育費など金銭面含めて、こどもを持つことに不安やリスクを感じる人たちにとって、見通しがたたない状態でいいのか」「こどもを持っている世帯の方が出費がかさむのだから、同じ年収の場合でも、こどもがいる世帯に、こどもがいない世帯からお金を送る再分配をしないと、子育て支援にはならない、とフランスなどの政策担当者から即答された」と話しました。
末冨教授は、「こどもが増えている局面であれば、所得制限を設ける方が合理的、こどもが増えすぎては困るので。しかし、今は超少子化の局面なので、基本戦略はカップルが持つこどもの数を増やすという考えのはず。親の所得になどこだわるな、と。すべての所得階層でこどもが増えなければ、超少子化の打破などあり得ない」と主張しました。
さらに、「高所得世帯はより多く税金を納めている。税金を多く納めているから、支援から閉め出すというのは負担と受益のバランスから考えてもおかしい。よりたくさん税金を払っている人のこどもだから支援しませんというのは、こどもの権利の否定だと思う。親の所得にかかわらず、すべてのこどもを応援すべきだ」と強調しました。