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「名称変更」でイメージ改善? 「痴呆」→「認知症」「肌色」→「うすだいだい」 商品名変更で売上げ“10倍”も

2022年12月16日 21:49
「名称変更」でイメージ改善? 「痴呆」→「認知症」「肌色」→「うすだいだい」 商品名変更で売上げ“10倍”も

名は体を表すといいますが、名前一つでその物へのイメージも変わってきます。「成人病」を「生活習慣病」、「保母さん」を「保育士」など、元のイメージを改善するような呼び方への変更が行われています。また、企業が商品名を変えたことで売上げが伸びたケースもあります。「名称変更」でどんな効果が期待できるのかをヒモトきました。

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日本ケンタッキー・フライド・チキン 判治孝之社長(今年10月)
「『サンド』という呼称から、『バーガー』という商品名に変更させていただきます」

ケンタッキーは10月、40年近く使い続けた商品名を変更しました。バンズでチキンを挟んだ商品の名前を「サンド」から「バーガー」にしました。すると、売り上げが約1.5倍になったといいます。

街の人
「サンドっていうよりバーガーっていった方が、ハンバーガーなのかなって思う人が増えそう」

たかが名前、されど名前。

今年6月、東京都の小池知事は、育児休業「育休」の名称を「育業」という愛称にすることを提唱しました。

東京都 小池知事
「『育業』、育児が未来を担う子供を育てる大切で尊い仕事だと」

さらに政府は、宇宙が安全保障の重要な役割を果たしているとして、「航空自衛隊」の名称を「航空宇宙自衛隊」に変える方針です。また、日本糖尿病協会などは、「糖尿病」という病名に多くの患者が抵抗感を抱いていることから病名を変更したいとしています。

このところ続く名称変更。どんな効果が期待できるのかヒモトきました。

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名は体を表すといいますが、名前一つでその物へのイメージも変わってきます。例えば、「肌色」は「うすだいだい」に、「痴呆(ちほう)」は「認知症」になど、元のイメージを改善するような呼び方に変わっています。

【“名称”の変更例】
「育休」→「育業」(東京都)
「肌色」→「うすだいだい」
「航空自衛隊」→「航空宇宙自衛隊」
「ロスタイム」→「アディショナルタイム」
「成人病」→「生活習慣病」
「保母さん」→「保育士」
「中途採用」→「経験者採用」(経団連案)

福岡市はかつて、暴走族の呼び方を変えることに取り組みました。迷惑な行為をやめさせるために、「珍走団(ちんそうだん)」という、あえて格好悪い“イケてない”呼び方にすることで暴走族に入る若者を減らそうという試みでした。

現在「珍走団」という呼び方が定着しているわけではありませんが、福岡市によると、こうした取り組みもあって暴走族が減り、今は対策に力を入れる必要もなくなっているということです。

神奈川県大和市では、「ひきこもり」の人々に寄り添うため、「こもりびと」という独自の呼び方で支援をしています。市の担当者は事件などでネガティブなイメージがあったため、より温かみのある名前に変更したとしていて、「当事者は、周りから理解してもらえているという気持ちが高まったようだ」と話しています。

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商品名を変えたことで、売り上げが伸びたという商品もあります。

伊藤園の「お~いお茶」は、1989年に元々の名前「缶入り煎茶」から「お~いお茶」に商品名を変えたことで売り上げが6倍以上伸びたといいます。そもそも缶入り煎茶が発売された1985年当時はまだ、お金を出して缶のお茶を買うという時代ではなく、あまり売れなかったということでしたが、商品名を変えると売り上げがアップしたといいます。

「ネピア鼻セレブティシュ」は、以前は「ネピアモイスチャーティシュ」という名前でしたが、名前を変えたことで売り上げがなんと10倍に伸びたといいます。

当時は保湿ティッシュがあまり認知されていなかったため、「モイスチャー」という名前だとぬれたティッシュ、「ウエットティッシュ」だと勘違いされ、あまり売れなかったということです。そこで2004年に、鼻に使う高級なティッシュということで「鼻セレブ」という名称に変えたところ、売り上げが伸びたということです。

ネーミングなどを研究する中央大学・国際経営学部の飯田朝子教授は「名前には人を注目させる求心力がある」と話します。名前を変えることで世間の見方も変わり、たとえ新しい名前が浸透までしなくても話題になることで、一定の効果も期待できるということです。