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PTAって強制?子を持つ親悩ます役員決め・・・独自入手した「勧誘マニュアル」の実態

2023年12月1日 6:13
PTAって強制?子を持つ親悩ます役員決め・・・独自入手した「勧誘マニュアル」の実態
入手した「訪問時の参考マニュアル」を基に作成

「PTA役員の勧誘・訪問マニュアルが配布されている」 日本テレビの情報提供サイトにこんな投稿がありました。学校の行事や登下校時の見守りなど、先生と保護者が協力しあって子どもをサポートする「PTA」。難航するのが委員決めや役員決めですが、取材すると、委員決めに“割り箸”が使われたり、役員指名にあたっての“訪問マニュアル”が存在したりしていました。そこには訪問時のセリフの指南まで。PTAに悩む声も寄せられる中、PTAの『今』を取材しました。
(報道局 調査報道班 及川光昭)

■小学校で“ブラックPTA”も 保護者は夜まで帰れず…

PTAとは、学校に通う子どもの「保護者」と「教職員」で構成される“社会教育団体”で、加入も退会も任意となっています。しかしー。


現役PTAの会長
「(本来は任意ですが)入学したら全員PTAに入って頂くという流れでした」

PTAの実態を語ってくれたのは、関東にある小学校の現役PTAの会長です。

以前、この学校では、保護者全員が“PTAに入会します”という選択肢しか書かれていない同意書(入会届)を学校に提出しなければならなかったといいます。

提出しない保護者については、PTAが学校から名簿を借りて調べたといいます。

現役PTAの会長
「提出していない方に対しては、後ほどお呼び出しをして、出してくださいというお願いをしました。何が何でも書いてもらうということです」

さらにー。

現役PTAの会長
「委員を決めるために保護者が集まったのですが、6年生の委員だけが決まらず、昼過ぎに始まった会は、夕方6時まで続き保護者が帰れなかったこともあります」

それでも、決まらないと…

現役PTAの会長
「委員が決まらないときは“くじ引き”で決めます」

割り箸の先端に色がついた“くじ”を引くと、委員に選ばれるのだといいます。
そして、委員を辞めるためには“ある儀式”が。

現役PTAの会長
「委員の活動に参加が出来なくなった保護者は、他の保護者の前で
理由を述べないといけません。私たちは“免除の儀式”と呼んでいます」

保護者の前で、委員を辞める理由を説明し、2/3の同意が得られないと辞められないといいます。

■PTA役員の“勧誘マニュアル”の存在も

負担に感じ「役員や委員をやりたくない」という声も多く聞かれる中、役員を勧誘するための「マニュアル」を作っているPTAもありました。

私たちに情報をよせてくれたのは、大阪・高槻市の小学校の現役PTAの保護者です。

来年度の役員を指名するための指名委員に「あるマニュアル」が配られたといいます。
そのマニュアルには、保護者にPTA役員になってもらうために、どういう説得を重ねるかなど、きめ細かなやり方が記載されていました。

■「勧誘マニュアル」の実態は?

マニュアルのタイトルは、「訪問時の参考マニュアル」。
まず“1回目の訪問”は、「挨拶程度に短時間で切り上げる」と記されています。

【インターホンの場合】
『〇〇の学校PTAのものですが、“お渡ししたい物がある”ので開けて頂けませんか?』

インターホン越しで“指名委員”と言うと、保護者が玄関を開けてくれない可能性があるため、“渡したい物がある”と、違う目的を言うよう“セリフ”まで記されています。

【自己紹介・訪問の目的を言う】
「初めまして、〇〇学校の指名委員会を代表して参りました〇〇です。来年度の〇〇候補に指名委員会“全員一致”で(ご主人または奥様)が推薦されましたので、お願いに参りました」

その後、2~3日以内に、改めて伺うために在宅時間の確認や、PTAの規約を渡すとしています。

そして帰り際にはー。

「私たち指名委員が来た事は“ご内密”にお願いします」と記載。家族以外、誰にも話してはいけないといいます。

2回目の訪問は“ 役職の説明”。

「考えて頂けましたでしょうか?今日は“役職の説明”に参りました」

話を聞いてくれない保護者には、こんな対策が…

「聞いて頂けない場合は、『これが私たちのお仕事です』と伝える。私たちは〇〇さんには是非〇〇(役職)でお願いしたいです」

それでも、他の保護者や、違う役職を希望すると…

「その方もいい方ですが、今回は〇〇さんにお願いしたいです」

そして、最後に…

「良い返事を頂けるまで“何度でも参ります”」

マニュアルは、3回目以降の訪問まであり、あわせて17の手順が書かれていました。

また、同じ学習会で配られた資料にも「やりたい人より、やってほしい人を推薦できるように」と記されています。

今回、学習会で配布されたマニュアルについて、高槻市教育委員会は。

高槻市教育委員会
「令和5年8月の指名委員学習会で参加者に配付した資料であることを 高槻市PTA協議会から伺っております」と、実際にマニュアルが配布されていたことを認めています。

なぜ、マニュアルは作成されたのでしょうか?
PTA関係者に配布した高槻市PTA協議会は、日本テレビの取材に対し「取材にはお答えできません」と回答しています。

■元指名委員「恐怖と絶望…」「PTAをやめると無視」

PTAの役員選びに作成された“マニュアル”。
私たちは、実際にマニュアルを使ったことがあるという元指名委員から話を聞くことができました。指名委員は"くじ引き”で選ばれたといいます。

元指名委員
「先輩ママから『指名委員になったら最悪』だと聞いていたので、まさか自分がくじを引くなんてという…恐怖と絶望ですね」

「1回目の訪問は挨拶ぐらいで、規約を渡して引き上げ、2回目でお返事を聞きます。その時に渋るようであれば『できますよ!』と励ましの言葉をかけて、もう1回すぐにご挨拶させてくださいと、次のアポをとらせてもらう。そして、3回目は『あなたしかいないんです』と半ば押しきる形で話をもっていきます」

時には、PTAに加入すらしていない人の家も訪れ、PTAの役員を依頼するケースもあるといいます。


この元指名委員は“PTAのあり方がおかしい”と思うようになり、その後、PTAを退会しました。すると、他のPTA会員からこんな仕打ちが-。

元指名委員
「PTA会員の保護者に挨拶をしても無視され、見て見ぬふりをされました。自分の子どもが学校の休みの日に、近所に遊びに行ったら(PTA会員の子に)『あなただけこっちで遊んでね』と言われ、“仲間はずれ”にされることもありました」

また別の小学校の母親は、子どもの入学時、PTAへの加入を断ると、担任からこんな言葉を投げかけられたといいます。

PTAに加入しなかった母親
「保護者と担任の二者面談のときに、担任から『PTA会員ではない人には記念品を渡せないとか、そういうことがあるかもしれません。そういうことになると僕も困るんですよ』みたいな言い方をされて手紙を渡されました」

渡された手紙の送り主は“PTA会長”だったといいます。
その手紙には…

PTAに加入しなかった母親
「『学年活動の記念品、夏祭りの無料引換券、卒業に関する費用など、そういうものはPTA会員の方々への還元だから、“未加入の方は対象外”になってしまいます』と書いてありました。本来は、やりたいと思う人が集まるべきなのに、PTAに入るのが前提の風潮になっていて、学校という公教育の場で、PTA会員かどうかで子どもに差別があるのはおかしいと思います」

■かつて“全員PTA会員”の小学校、現在は「参加型」に変更 

こうしたなか、PTAのあり方を見直した学校があります。

埼玉県にある草加市立松原小学校。
コロナ前までは、保護者はPTAに自動加入し、全員がPTA会員だったといいます。しかし…

松原小学校 大上哲治PTAボランティアセンター長
「PTAのあり方について保護者と話し合いました。結論として、各PTA活動を自分たちでサークルとして立ち上げて、自分は何を活動するのか選んで頂くような、エントリー制という形をとりました」

現在はPTAの入退会は自由で、委員会も廃止。
保護者がやりたい活動を作り、参加も自由だといいます。

現在、PTA活動の参加率は約9割。
以前あった、ベルマーク活動や広報誌などは廃止され、PTA会費は、支払い義務のない「支援金」に変更したといいます。

松原小学校 大上哲治PTAボランティアセンター長
「人も集まった人数でやるので、お金も集まった金額で出来る活動でいいと考えています」

そして、PTAのあり方についてこう話します。

「保護者がPTA活動をやらされても、つらいじゃないですか?PTA会員として参加すれば学校のためにはなるのかもしれませんが、子どもを置いてまでPTA活動をするのは結局、子どものためにはならないと思います。保護者が自主的に、前向きに参加出来るPTAになれたら、変わっていけるのではないかと思います」

時代とともに価値観も変わりつつある中、学校と保護者の向き合い方を改めて見つめ直す時期にきているのかもしれません。

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