「尻に刺せ」と指示 工藤会ナンバー2は無罪主張を一転 トップは「すまんな」
一般市民を標的とした襲撃事件で、1審では死刑判決を受けた工藤会トップらの控訴審です。1審で無期懲役の判決を受けたナンバー2は、9月27日の被告人質問で、一部の事件について「傷つけるよう指示した」と自身の言葉で関与を認めました。
■樋口淳哉記者
「警察車両に先導されて、野村被告と田上被告が乗ったとみられる車が福岡高裁へ入ります。」
厳重な警備の中、福岡高等裁判所へと入ったのは、特定危険指定暴力団『工藤会』のトップ・野村悟被告(76)とナンバー2の田上不美夫被告(67)です。
2人は、1998年の元漁協組合長の射殺事件など、市民を標的とした4つの襲撃事件で殺人などの罪に問われています。
1審では、野村被告に死刑、田上被告に無期懲役の判決が言い渡されました。ただ、2人はすべての事件について一貫して関与を否定していました。
控訴審の初公判でも、弁護側は1審と同じく野村被告の無罪を主張する一方、田上被告については「一部の事件を指示した」と関与を認める方針に転じました。
■樋口記者
「きょうの裁判では、2人の被告人質問が行われます。無罪主張を一転させた田上被告が法廷で何を語るのか、注目されます。」
27日午前10時から法廷で始まった被告人質問では、まず田上被告が証言台の前に座りました。
冒頭、弁護人から「4つの事件で関与している事件はありますか?」と聞かれると、田上被告は「あります。看護師事件と歯科医師事件です。傷つけるよう指示しました」と、2つの事件について指示を認めました。
2013年に、野村被告が通っていたクリニックの女性看護師が切りつけられた事件について指示した理由を問われると、「(野村)総裁を侮辱して、からかったからです。陰部の脱毛でヤケドをさせられたとき、謝らずに『野村さんでも痛いんだね』『入れ墨よりは痛くないでしょう』と言ったと聞きました。カッときました。とぼけたおばはんだと思いました。(看護師の)頬をはつれ、それとお尻を刺してやれと言いました」と答えました。
また、2014年の歯科医師刺傷事件についても「尻に刺せ」と言って指示したとして、2つの事件ともに、野村被告に伝えることなく「独断で事件を指示をした」と話しました。
控訴審で、1審での主張を一転させたことについては「1審の弁護士の方針でもありましたし、私も否認すれば通るのではないかと思っていました」と述べました。
検察官からも繰り返し1審での発言との違いを問われると、「弁護士が言わなくてもいいと言った」と主張した田上被告ですが、「事実を話したくなかった。聞かれたくなかったというのがあると思う」とも話しました。
さらに、野村被告に対する思いを問われると「総裁は父親のような存在で、徳で人を引っ張っていくタイプの人です。自分の判断で巻き込んで申し訳ないという気持ちです」と述べました。
午後2時からは、野村被告への被告人質問が始まりました。
弁護士の「田上被告が指示をしたと聞いてどう思いましたか?」という問いに、野村被告は「田上も私のことを思いすぎてくれるくらいの人間やから、すまんなと」話したうえで、改めて4つの事件への指示を否定しました。
また、裁判長に言っておきたいことを尋ねられると「公正な判断をお願いしたいと思います」と述べ、1審でも主張した「公正な判断」を強調しました。