【能登半島地震】記者が見た被災地 断水続く石川・内灘町 下水道は復旧のメド立たず 液状化が再建の壁に
石川県金沢市では観光客の姿も見られ、一見、元日の地震の影響を感じさせない週末を迎えていました。
しかし車で20分ほど走ると、見えてきたのは地震の深い爪痕でした。
■樋口淳哉記者
「車庫だったのでしょうか。完全に土地が盛り上がってしまっています。」
道路は波打ち、住宅や電柱が大きく傾いていました。これらは液状化の被害です。
液状化は、支え合っていた土の粒子が地震で強い衝撃を受けたことでバラバラになり、地盤全体がドロドロになる現象です。
金沢市に隣接する内灘町(うちなだまち)では、町を横断する道路沿い6キロにわたり被害を受けました。
路面の隆起や沈下、地盤の傾きなどで建物への被害は1473件に上ります。
■岡野寛さん
「こんなにひどくなるとは思っていなかった。」
岡野寛さん(76)は、被害が大きかった内灘町の西荒屋地区に住んでいます。現在は避難所を離れ、自宅で生活しています。
■岡野さん
「もともとはこうやって(開けたら)止まっていたのが(手を)離すと(バタン)。ちょっと傾いているから家が。3階では生活できん。気持ち悪くなって。」
家の前の道路も陥没しました。町内の水道管もあちこちで切れ、いまも断水が続いています。
生活に必要な水を得るため、毎日、岡野さんが向かうのは近くの小学校にある給水所です。妻と2人分、必要なだけペットボトルに注ぎます。
■岡野さん
「どれくらいかかるのか見えないから、それが一番不安ですよ。」
町は上水道の2月末の復旧を目指していますが、下水道についてはメドが立っていません。
石川県の馳(はせ)知事は、液状化被害ならではの「復旧への壁」があるといいます。
■石川県・馳浩 知事
「隣の家との境界が分からないほどのずれ。これをどうするかという問題がまずあります。道路・宅地ともに高さが大きく変化し、どの高さを基準として復旧するのかという課題がございます。液状化による現象を課題として理解し、今後どうするか。」
さらに、高齢化が進む中、再建を希望する人がどれだけいるのか。町は住民の意向を確認したあと、復興のプランを立てる予定です。
生まれ育った町に住み続けたいと願う岡野さんですが、先行きの見えないふるさとの行く末に不安が募ります。
■岡野さん
「今現在おる人間をどうするんですかという話なんです。私たちがそれを行政に要請したって行政だって手一杯。誰を恨むわけでもないし、しょうがないなと思ってあきらめています。お湯で沸かしたのを食べていますが、いい加減、普通のご飯を食べたいなと思う。」
地震発災からまもなく2か月です。生活再建に向けた道筋を被災者に示すことが重要となってきています。
■松井礼明アナウンサー
「被災地で取材してきた樋口記者、少しのどを痛めた?」
■樋口記者
「はい、街中を復旧工事にあたる大型車両が多く走っていて、砂ぼこりを吸ってしまったためか、のどを痛めてしまいました。」
■松井アナウンサー
「住んでいらっしゃる方も、そういったほこりの中、生活していらっしゃる。VTRでは道路が浮き上がって建物が傾いていましたが、復旧状況はどうなんでしょうか。」
■樋口記者
「はい、私が行っている間も、輪島市など奥能登につながる幹線道路が一部開通しました。復旧作業は徐々に進んでいます。しかし、液状化している地域では、少し置き去りにされているようにも感じました。」
■松井アナウンサー
「こちらは液状化した被災地を上空から見た映像です。」
■樋口記者
「倒壊した建物は少ないため住むことができるのではないかと見えるのですが、実は家が傾いていて、住むことができません。ある住民は自宅を壊すしかないが、金銭的な支援もないので何もできないと話していました。そして道路もそうです。大型の車が行き交う幹線道路は徐々に開通しているのですが、液状化した地域の細い路地などは修復が追いついていません。自宅前の亀裂を住民たちが自ら修復する姿も見られました。」
■松井アナウンサー
「そして、断水が続く水道管もでしょうか。」
■樋口記者
「はい。上水道の整備を2月末までとしていますが、内灘町で作業していた地元の水道工事の方に話を聞きますと、資材が足りないとおっしゃっていました。」
■松井アナウンサー
「18日まで取材を続けてきた樋口記者の報告でした。」