提訴9年 生活保護費訴訟が判決へ 富山 原告らの思いは
国による生活保護費の基準額引き下げは違憲だとして、富山市に住む受給者らが国と市に対し減額処分の取り消しなどを求めた裁判の判決が24日、富山地裁で言い渡されます。
提訴から9年。判決に臨む原告らの思いを吉田記者が取材しました。
富山市に住む82歳の男性。
病気を理由に10年ほど前から生活保護を受給しています。
原告男性
「あまり温度が低いところで寝ると免疫力が低下するとか言うでしょ。だから僕も付けた方がいいと思うけど、それで工夫したのが、あらゆるもの(毛布)を積み重ねて」
雪が降る厳しい冬でも、節約のためにエアコンは使っていません。
何枚も毛布を重ねることで寒さをしのいでいるといいます。
原告男性
「僕みたいにあらゆるものを積み重ねて寝ているなんて、(国は)知らないんじゃないかなという気がする」
生活保護制度は、日々の生活に困っている人に必要な金銭を支援し、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助けることを目的にしています。
支給額は、国が定める「最低生活費」から年金や手当といった「収入」を差し引いた金額で、男性の保護費は老齢年金を差し引いた5万円ほどです。
食費や光熱費でほとんど手元に残りません。
この生活保護基準をめぐり、国は2013年から2015年にかけて物価の下落などを理由に大幅な引き下げを行いました。
平均6.5パーセント、最大で10パーセントという前例のない下げ幅で、男性への支給額はひと月に3600円ほど減額されました。
男性の代理人で、県内で生活困窮者を支援する西山貞義弁護士は、生活保護基準の引き下げは憲法が保障する生存権に反していると訴えます。
西山弁護士
「憲法で保障されている最低限度の生活というところを、多数決原理で引き下げてしまうというところは、少数者の権利を侵害しているという形になりますので、司法の立場から見ると、これは絶対に許してはならない」
2015年1月、富山市の受給者ら5人が国などに対して決定の取り消しを求める訴訟を富山地裁に起こしました。
被告の国側は、引き下げの妥当性を強く主張し、裁判は去年8月に結審しました。
生活保護をめぐる訴訟は、富山を含め全国29の都道府県で起こされていて、これまでに、原告の勝訴は13件、敗訴は11件と判断が分かれています。
このうち弁護団が「潮目が変わった」と振り返るのが、去年11月30日に示された名古屋高等裁判所の判決です。
判決は、国の引き下げについて「客観的な数値との合理性や、専門的知見との整合性を欠き、厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱している」と結論付け、「決定の取り消し」に加えて初めて「国への賠償」を命じました。
一方、1月15日に示された鹿児島地裁の判決は、減額処分を取り消したものの賠償請求については退けました。
年が明けた1月4日。
地震の爪痕が残る神社に西山弁護士の姿がありました。
西山弁護士
「何があっても、この国は健康で文化的な最低限度の生活を保障してくれるんだっていう、そういう気持ちになるような、そんな社会ができればいいかなと思いますね」
提訴から9年、生存権のあり方などを問う裁判で24日、富山地裁はどのような判決を言い渡すのか。
注目が集まります。