「福祉の仕事ってクリエイティブだぜ!」特養ホーム施設長は福祉のヒーロー “介護職”の魅力発信《長崎》
「やらされる仕事」から「やりたい仕事」へ。
“介護のしごとの魅力” を、生徒や学生に伝える活動を続ける男性を取材しました。
ともに活動する仲間に『伝える技術』を教えます。
約40人の高齢者が入所する、長与町の特別養護老人ホーム「かがやき」。
施設長は、原田 竜生さん 39歳。
介護の現場で20年近く働いています。
(記者)
「原田さんはどういう人ですか?」
(高齢者)
「親切」
(高齢者)
「いつも声をかけてくれる」
原田さんにはここの施設長以外に、もう1つの顔が…。
(認定式)
「介護のしごと魅力伝道師として認定します」
子どもたちや学生に介護の仕事のやりがいを伝える『伝道師』です。
(原田 竜生さん)
「“感謝される仕事、素晴らしい仕事”…と言ったところで、やっぱり響かない」
県が7年前から始めた制度で、原田さんは1期生。
学校の授業での講話などに派遣されることから、この日は6期生の新人伝道師に、話し方や資料の作り方を指導しました。
(伝道師6期生 池田 くるみさん)
「今後 人前で発表する機会が多くあると思うので、いい経験になった」
急速な少子高齢化で人手不足が課題とされる中、県は2022年度から26年度までに、県内で新たに1500人の介護職員の確保が必要としています。
“きつい” イメージがつきまとう介護の現場。
専門学校を卒業し、施設で働く中で原田さんは “あること” を感じました。
(原田 竜生さん)
「何時になったからおむつ交換、何時だったら食事。食事だからみんなを “一気に(全員)起こす” みたいな環境で、何かにチャレンジするって、できていないって思った」
よりよい介護へのチャレンジする機会を得たのは、働き始めて7年程たった時でした。
(原田 竜生さん)
「土曜日の朝食は “朝マック” とか。
高齢者の人たちに食べたいっていう要望がある。
チラシを見て「何これ?」って。「パンケーキって何?」みたいな…。
高齢の車いすのおばあちゃんたちも(興味のあるものを)食べる。
嬉しかった」
突然、原田さんからこんな質問が…。
(原田 竜生さん)
「(あなたは)施設に入りたいって思います?」
(原田 竜生さん)
「思わないでしょ。思わない理由に何があるかというと、制限が多いからとかがある。
だったらそういうものを消していかないと、おもしろいものが作れない」
福祉の現場で より快適に過ごせる場面を作ることは、介護する側の “やりがい” になり、介護される側の “生きがい”になる…。
この『思いに応える』 取り組みは、自身が施設長を務める今の老人ホームでも…。
(原田 竜生さん)
「水分補給ですって、お茶が出たりする。その時点で選択肢がお茶しかない。
私たちが当たり前に(日常で)やっていることが、施設に入ると当たり前じゃなくなる。そういうところを1つずつ、いろんな改善をやってくれているのかなと思う」
入所者の日々の思いを聞いた職員が、新たな発想で考えたアイデアを積極的に取り入れることで、より楽しく過ごせる施設を目指しています。
福祉の現場で挑戦する若手職員の声を届けようと先月、東京で全国の社会福祉法人によるイベントが開かれました。
(タレント みやぞんさん)
「やらされている仕事から やりたい仕事へ。
福祉の仕事をクリエイティブにするヒーローです」
全国から選ばれた7人の「社会福祉HERO’S」の一人として登壇した、原田さん。
長崎県からは初めての受賞です。
(原田 竜生さん)
「介護をはじめ、福祉の可能性って本当に広い。だからスタッフたちに声をかける。まずやってみようと。そして殻を破って気づいてほしいんです。
福祉の仕事ってクリエイティブだぜ!って」。
3月5日、県庁で開かれた伝道師の研修では、講話のデビューを控えた6期生10人が、先輩たちに成果を披露しました。
(6期生のプレゼン)
「介護の仕事で得る幸福感はどれも印象的で、とても感じたことがないような感謝を経験する」
認知症の高齢者が場所も覚えていないのに「墓参りに行きたい」と訴えた事例を、絵本のスタイルでプレゼンする人も。
(原田 竜生さん)
「聞いていて、どこで売っている本だろうと思うくらい、引き込まれた」
(伝道師6期生 久松 希美さん)
「絵本にした方が、スライドがめくれていっても飽きずに見てくれるかなと思った」
この春からは新たに、県と共同で子どもたちに介護の魅力を伝える活動をスタートさせる予定です。
(伝道師6期生 中村 拓己さん)
「(原田さんに)追いつけ追い越せじゃないが、かなり意識している」
(原田 竜生さん)
「決められた15分で何を伝えるかを一生懸命考えているので、そんな経験を積めるのはいい機会。
もっともっと自分なりに磨いて、10通りの魅力を伝えてほしい」
特別養護老人ホーム「かがやき」で働く立花 幸楓さんも、伝道師の4期生。
原田さんと働きたいと、この施設に入りました。
(特別養護老人ホームかがやき 立花 幸楓さん)
「伝道師の活動で原田さんに会い、そこで原田さんのいる施設を知って、ここで何かできるんじゃないかなと思って入職したので、実際できている。
できたから、すごく今、やりがいを持って働くことがいる」
「やらされる仕事」から「やりたい仕事」へ。
(原田 竜生さん)
「魅力を伝えるのは、結局現場の人たちがどう思うかだと思う。
だからこそ、現場にそう思ってもらうための人たちをどんどん、どんどん育てないといけないと思うし、いろんな所で魅力があふれてくると、県内も盛り上がる。それが伝道師の役割として伝えたいところ」
介護の “ヒーロー” が、未来の仲間とともに魅力を発信し続けます。