ワインを熟成するのに適した環境!? ダムを利用した新たな試み 特有の環境を生かした地域貢献 鳥取県鳥取市
「ダム」を利用して"ワインを熟成させる”という地域活性化につながる新たな挑戦が始まりました。
町田朱理 気象予報士
「殿ダムの外の気温はおよそ8℃ですが、ダムの中に入ると約12℃に保たれています。その特性を生かしてワインの貯蔵が始まりました」
鳥取市国府町にある殿ダムで、11月20日から始まったのがワインの貯蔵。このプロジェクトを進めているのは、鳥取市国府町で、ぶどうの栽培やワイン醸造を行う、株式会社兎ッ兎ワイナリーと国土交通省鳥取河川国道事務所。背景には「殿ダムの水源地域ビジョン」という取り組みがあります。
自然や歴史・文化を活用して地域活動を促進し、情報を発信していくというビジョンの一環で、ダム特有の冷涼な環境を活かしてワインを熟成させるのが目的です。
兎ッ兎ワイナリー代表取締役 前岡 美華子さん
「ブドウ栽培から醸造・販売まですべてこの鳥取市国府町で手がけておりますが、そのワインに地域資源の殿ダムという価値を乗せて発信させることにより、ワイン自体の価値観も上がりますし、この地域の魅力も発信できると思いますので、その点で非常に有効な活用方法をさせていただいたと感謝しています」
一方、ダムを管理する国土交通省は「全国で大量のワインをダムに貯蔵するのは初の試み。大雨時の治水だけでなく、新たな活用方法として地域に貢献できることを期待しています」としています。
このプロジェクトは、まずは3年熟成させワインの味や質を頻繁に確認しながら進められるということです。
なぜダムでワイン貯蔵なのかというと、日差しや気温が関係しています。ワインの保管に適した環境は、一般的に光が当たらず、13℃から15℃程度の一定の温度が維持される場所と言われています。この条件を満たす場所として、ダム内部が注目されています。
殿ダム管理支所によりますと、実際にワインを貯蔵する場所ではありませんが、同じダム内の監査路の年間温度は約12℃に保たれているそうです。このように、外気温が激しく上下する環境でもダム内は一定で、ワインにとって刺激が少ない安定した環境が期待できます。
また、湿度については、上部と下部で異なる可能性があり、8か所に温湿計を置いて今後、詳細な温度や湿度の計測を進めている段階です。このデータをもとに、さらに貯蔵環境が整備されそうです。
自然の力を最大限に活用した電力を消費しないワイン熟成の取り組み。地域活性化だけでなく、環境に配慮した方法として今後注目を集めそうです。