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【特集】新潟地震から60年 「液状化現象」 当時の証言から浮かぶ課題とは《新潟》

2024年6月22日 21:21
【特集】新潟地震から60年 「液状化現象」 当時の証言から浮かぶ課題とは《新潟》

能登半島地震で深刻な被害をもたらした液状化現象。60年前の新潟地震では新潟市の中心部で水が噴き出し、アパートは傾き、倒れました。

液状化は津波よりも早く発生し、避難をさまたげる恐れがあるといいます。その時、住民たちはどう動いたのか。過去の震災から課題が見えて来ました。

水浸しになった道路

水浸しになった道路。

その上を歩く住民たち……。

「家の中に水が」

60年前のあの日、住み慣れた街は一変しました。新潟市中央区の関屋地区に住む加藤武さんです。

加藤武さん(67)
「やっぱり水がすごかったですね。トラックが通るたびに水が家の中に飛び込んでくる」

液状化現象

1964年6月16日に発生した新潟地震。当時の映像には“ある現象”がとらえられていました。

地面から噴き出す水。液状化現象です。

新潟市の中心部はまたたくまに浸水。

アパートが倒れる

川岸町では、4階建てのアパートが傾き、倒れました。

泥水で埋め尽くされていた

当時、新潟市の浜浦小学校に通っていた加藤さん。給食の時間に大きな揺れに襲われました。

自宅は学校から1.5キロほどの場所にあります。川岸町のアパートからは約300メートル。地震の後、津波が来ないことを確認し、約20分かけて歩いて帰宅しました。

近所はすでに泥水で埋め尽くされていたといいます。

自宅に異変が

自宅にも異変が。

加藤武さん
「向こうまでずっと廊下だった、それが波を打っていた」
Q家は傾いた?
「すごいですよ、みんなずーっと潜っていった」

床下から大量の砂が

液状化により建物は30センチほど沈みました。さらに床下からは大量の砂が。

加藤武さん
「家の中から引っ張り出した砂、液状化です。あちこちに山にしたと思う。そんな量じゃない、この部屋も仏間もすごいことになっていた。みんな床をはがして砂をとっていました」

自宅を直すまで約3カ月間は、庭で生活をしていたといいます。

「この世の終わりかと」

関屋地区で寿司店を営む宮北邦昭さんと由紀さんです。

宮北邦昭さん(73)
「この世の終わりじゃないかなと思うような」

宮北由紀さん(78)
「これグラウンドですよね。真ん中から噴き出た」

学校のグラウンドから水が

当時、川岸町にあった新潟明訓高校に通っていた由紀さん。地震発生時はすぐに机の下に隠れたといいます。窓の外に目をやると。

宮北由紀さん
「グラウンドから水が噴き出ていたんです、大量の……」

当時の新潟明訓高校では

これは、発生直後に撮影された新潟明訓高校の様子です。

グラウンドには多くの生徒が避難しています。

泥水が吹き出す

そのすぐ近くでは泥水が噴き出しています。

宮北由紀さん
「もうドーっと垂直に出ていたんですね、本当に垂直に。もう怖いと、それしかなかったです」

なんとか歩いて帰宅

学校から自宅までは数百メートル。歩いて10分ほどの距離です。由紀さんは液状化で水浸しになった道を歩き、なんとか帰宅したといいます。

宮北由紀さん
「家の中入るすれすれぐらいまで水が来ていた。引くまで結構、日数がかかった気がします」

自宅は半壊の判定を受けましたが、その後復旧し、住み続けることができたといいます。

新潟地震で大きな被害をもたらした液状化。この地震を契機に本格的な研究が始まりました。

液状化を研究する新潟大学の卜部厚志教授は、液状化は津波が来るよりもずっと早く発生していたと指摘。その上で避難の大きな妨げになると警鐘を鳴らします。

新潟大学 災害・復興科学研究所 卜部厚志教授
「揺れ終わった直後から液状化は始まる。その後に日本海側ですと10分とか15分以内に津波が来る。逃げなきゃいけないんですけど、砂が噴出している。避難しなければいけないが道路が使えない。というのが複合して起こる、それが一番まずいパターン」

能登半島地震でも

元日の能登半島地震。新潟市では最大震度5強を観測しました。

すぐに津波警報が出され、60年前と同じように液状化も発生しました。

基礎を入れ直し住み続ける

関屋地区に住む加藤武さんです。液状化で被災した自宅はその後、基礎を入れ直し、傾きを修正。60年たった今も住み続けています。

加藤武さん
「10年先のやつが明日来るかもしれませんからね。備えだけですね、備えだけあればどうにかなりますがね」

寿司店を営む宮北由紀さん。元日の地震では何も持たずに着の身着のまま避難したといいます。

宮北由紀さん
「新潟地震を経験したというのを踏まえて、その地震を味わったからこそ怖さがわかるというか。忘れません、だからその記憶があるから、地震があると怖いというのが鮮明によみがえってきて」

“作戦”を立てて避難を

津波からの避難は現在も原則、徒歩での移動が求められています。もし津波と液状化が重なって発生したら。近くに避難所がない地域では。

新潟大学 災害・復興科学研究所 卜部厚志教授
「この辺の家の人はこの道を使ってこっちの山に行くとか、ここの辺の方はこの道を使って国道に上がるとか、戦略・作戦を立てて地域で練習をして既存の民間の建物を活用して。その時だけ避難をさせてもらう、行政が中に入って地域のみなさんと持ち主とやらなきゃいけない」


2024年6月14日「夕方ワイド新潟一番」放送より

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