【特集】病院の経営危機 佐渡市で唯一の看護学校が閉校へ 経営難のJA新潟厚生連に県が10億9000万円支援《新潟》
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新潟県は経営危機のJA新潟厚生連などに向け、新年度予算案などで財政支援を予算案に計上しました。
佐渡市では厚生連の運営する唯一の看護学校が募集停止へ。経営難の影響が広がる中でも生徒たちは地域医療を将来に繋ごうとしています。
佐渡看護専門学校はJA新潟厚生連が運営する佐渡市で唯一の看護学校。生徒の実習先は、同じく厚生連が運営する佐渡総合病院です。
学校の卒業生の約6割が佐渡総合病院に就職。学校と病院は市内中心部に隣り合って立地し、島内医療をつないできました。
しかし、人口減少などの影響で2014年度以降は定員割れが続き、去年12月に2027年度末での閉校が決まりました。2024年度の入学者は学年定員40人に対し、11人でした。
(1年生)
「母校がなくなることがすごくさみしい」
「これからも高齢者が増えると思うので大変なんじゃないか」
閉校の背景には厚生連の経営難があります。2023年度の決算は約36億円の赤字。2024年度は12月時点で45億6000万円の赤字が見込まれます。
経営改革のため、佐渡の看護学校は閉校へ。佐渡市内では厚生連が運営する介護施設も閉所しました。
花角知事が「2大病院ネットワーク」と掲げる厚生連と県立病院。知事は定例会見で支援を繰り返し強調してきました。
赤字経営は県立病院も同様です。2025年度、12の県立病院で見込まれる赤字は29億円。2026年度末に22億円の資金不足となる恐れがあり、危機的な状況が続きます。
病院の経営難はすでに市民生活に影響を及ぼしています。厚生連・村上総合病院では3月中旬から分娩を休止。少子化により、産科は毎年1億円の赤字を産んでいました。
特に帝王切開での出産は他の診療科の協力も必要で、医師不足の中、体制を維持できなくなったといいます。
(産婦人科部長 藤巻 尚 副院長)
「産婦人科医が執刀医と助手をして、麻酔科医が麻酔をかけ、できれば新生児の呼吸状態を見るために小児科医も立ち会ってもらうのがベスト。小児科、麻酔科の充実や分娩数が増えていく傾向があれば再開もありえるが、なかなか難しい」
経営の立て直しを迫られている村上総合病院は、あえて病床の「ダウンサイズ」を目指していることが今回の取材でわかりました。
現在の稼働病床203床を200床未満の199床へ。そうすることで、国から地域に寄り添う「かかりつけ医」機能を担うと位置付けられ、診療報酬が手厚くなるといいます。
(村上総合病院 杉谷想一 病院長)
「地域密着だから医療を受けるという需要がある。例えばお年寄りの方でここなら通えるから先生の言う治療を受けてみようとか。極論をいうと村上総合病院で手術をしてくれるなら受けるけれど,新潟市の大きな病院に行けと言われたら受けないというお年寄りはいっぱいいる。高齢化が進み、今までは患者さんが1階からエレベーターに乗って歩いて検査を受けてくれていたのが、今はベッドから車いすにも移れないという人が増えている。ひとり当たりの仕事量は東京、埼玉の病院と比べても負けていないと思う」
県は厚生連に対し、総額10億9000万円の支援を新年度予算案と2月の補正予算案に計上。補正予算案は全会一致で可決されました。
取材の日、佐渡看護専門学校では卒業を控える3年生が、国家試験を目指す後輩たちにアドバイスをつづっていまました。
(3年生)
「佐渡総合病院は佐渡唯一の中核病院。マイナスの面だけじゃなくてプラスの面もあるのに…。それだけじゃないんだよ!と思ったりはします」
(2年生)
「お世話になった佐渡に恩返しでもないんですけれど役に立てたらいいなと思いました」
厚生連は佐渡看護専門学校の閉校後、市外から看護師を確保するための取り組みを検討しています。
厚生連への支援を含む新年度予算案は現在、県の2月議会で審議中です。