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【特集】まもなく審議へ 世界遺産登録の可否は…「佐渡島の金山」の舞台裏 推薦書作成の委員や元イコモス本部執行委員に聞く 《新潟》

2024年7月25日 19:56
【特集】まもなく審議へ 世界遺産登録の可否は…「佐渡島の金山」の舞台裏 推薦書作成の委員や元イコモス本部執行委員に聞く 《新潟》

ユネスコの世界遺産委員会が7月21日に開幕しました。
「佐渡島の金山」は世界遺産に登録されるのか。
推薦書の作成にも携わった専門家やイコモス本部の元執行委員に審議を前にした感触を聞きました。

■江戸幕府の財政を支えた佐渡金山

〈斎藤久美子キャスター〉
「残された数多くの資料がその繁栄を伝える佐渡島の金山。 400年もの時を経てもなお輝きを放っています」

江戸時代の小判です。
刻印されていたのは佐渡で作られたことを示す「佐」の文字。
当時からほとんど姿を変えず黄金色に輝いていました。

8月25日まで長岡市の県立歴史博物館で実物を見ることができます。

この金が採掘されていたのが「佐渡島の金山」です。
17世紀には世界最大級の産出量を誇り江戸幕府の財政を支えたとされています。

江戸時代までの資産を世界遺産に登録しようと政府は去年、ユネスコに推薦書を提出しました。

■遺跡との衝撃的な出会い~推薦書作成の舞台裏

その推薦書の作成に携わった人がいます。

新潟市歴史博物館みなとぴあの館長・坂井秀弥さんです。
考古学を専門に研究をしています。

〈新潟市歴史博物館みなとぴあ 坂井 秀弥 館長〉
「どういう説明をすると世界遺産としての説明が論理的にすっきりとできるかと。 わかりやすくできるか。そこが求められる」
「そういう観点からすると江戸時代に限定するのがやはりわかりやすい。それは日本独特の時代的背景。鎖国をしていてその間西洋の技術が入らない状態で手工業で生産を突き詰めていった。そこが説明がしやすい点だということ」

文化庁で全国各地の文化財を調査してきた坂井さん。

新潟市出身で、もともと県の職員として発掘調査を担当していました。
その当時、忘れられない出会いがありました。

いまから32年前の1992年……

「相川金山にすごい遺跡がある」
そんな情報を頼りに佐渡の山奥を訪れた時です。

〈新潟市歴史博物館みなとぴあ 坂井 秀弥 館長〉
「藪になってて、こうやって入って行くと墓石があちこちに倒れたり、建物の礎石が木の根元に隠れていたり」
「300年くらい廃墟になっていた そのままがこの山の中に残っているというのが現地に立つとわかる」

佐渡に残されていた歴史の痕跡……。

江戸時代の技術や文化をいまに伝える貴重な遺跡でした。

〈新潟市歴史博物館みなとぴあ 坂井 秀弥 館長〉
「ぞくぞくとくるんですね。足元には石磨という鉱石をする時の石磨が足元に落ちてますから、すごい迫力なんですね」

その後坂井さんは「世界文化遺産学術委員」となり10年以上にわたって推薦書の作成に携わりました。

「佐渡島の金山」は世界遺産に登録されるのか。

先月にはユネスコの諮問機関イコモスが4段階中、上から2番目。
「情報照会」の勧告を出しました。

〈新潟市歴史博物館みなとぴあ 坂井 秀弥 館長〉
「勧告の第一報を受けた時は「え」と思いました。そんなはずはないと思ったが、 2時間後に詳細な報告が来て読んだら、これは登録されるんだなと」
「3つの条件がクリアされれば、 世界遺産に登録されますということを勧告は言っていると思うので」

■元イコモス本部執行委員が語る“手ごたえ”

イコモスが条件として追加情報を求めた項目が3つあります。

①「北沢地区」の除外
②緩衝地帯の拡大
③商業採掘を再開しないという約束

この勧告をイコモスの関係者はどう見ているのでしょうか。

2011年までイコモスの本部で執行委員としてこうした勧告に携わった岡田保良さんです。
現在は日本イコモスの代表理事を務めています。

〈元イコモス本部執行委員 岡田 保良さん〉
「なかなか行き届いた丁寧な勧告だった」
「特に今回の登録可否については 前半の主要な3項目についてしっかりと答える必要がある」

①「北沢地区」の除外
追加情報を求められた3つの項目のうち「北沢地区」については6月、林官房長官が除外する方針を明らかにしています。

②緩衝地帯の拡大
2つ目の緩衝地帯の拡大…「相川鶴子金銀山」の資産を守るための範囲を沖合いに広げるよう求めています。
これについて佐渡市は7月、景観審議会を開き、これまで沖合およそ1キロだった範囲を最長で沖合およそ11キロまで広げることを全会一致で承認しました

③商業採掘を再開しないという約束
3つ目の商業採掘を再開しないという約束については、県によると採掘の権利者であるゴールデン佐渡が再開しない旨の表明書を国に提出したということです。

文化庁によると、これで3つの項目について対応は完了したことになります。世界遺産委員会の中で説明の場が設けられる予定です。

一方、イコモスは3つの項目のほかに、配慮を求める「追加的勧告」も出していて、その一つに「全体の歴史を現場レベルで包括的に扱う説明」が挙げられています。

これは、韓国政府が「戦時中、強制労働があった」と反発したことが念頭にあると見られています。

この追加的勧告に対しては…

〈元イコモス本部執行委員 岡田 保良さん〉
「これは直ちに今回回答を用意しないといけないという部分ではない。 追加的勧告というのは“今後”というニュアンスで捉えたらいいかと思う」
「水面下でも特に表向きは反対することはないだろうと見られていて、それが今回の登録の障害になるとは関係者は見ていないようです」

■準備は整った、あとは“登録”

県や佐渡市が世界遺産の候補地として名乗りを上げてから20年。

金山の価値を世界に伝えたい……

そんな夢がついに叶うのか……

〈推薦書作成の委員 坂井 秀弥さん〉
「ぜひともこの遺跡を未来永劫、 佐渡のため、新潟のため、日本のために活用できたらいいなと思います」

〈元イコモス本部執行委員 岡田 保良さん〉
「多くの人たちに佐渡金山の価値を体験していただきたいなと思います」

「佐渡島の金山」の登録を審議するユネスコの世界遺産委員会は21日からインドのニューデリーで行われています。

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