酒田市の東北公益文科大学の「公立化」に向けプロセスの方向性合意 入学希望者の増加狙う
現在、民間が運営している酒田市の東北公益文科大学の「公立化」実現に向け、吉村知事と庄内2市3町のトップによる初めての検討会議が6月、開かれ、財政負担など公立化に向けたプロセスの方向性について合意しました。
酒田市の東北公益文科大学は、県と庄内地方の自治体が設置費用を負担し、民間の学校法人が運営する「公設民営方式」で2001年に開学しました。
しかし、少子高齢化が進む中で大学の経営の安定を目指し、2020年以降、庄内地方の自治体や経済団体などから公立化を要望する声が上がりました。大学の定員は現在、235人ですが、昨年度と今年度の入学者はともに定員割れしている状況です。
公立化された場合、大学の運営はこれまでの民間の学校法人ではなく、自治体が設立した大学法人が行うことになります。一般的に公立の大学は私立の大学よりも学費が安いことなどから、公立化によって、入学希望者が増えることなどが期待されています。
県高等教育政策・学事文書課 五十嵐裕彦高等教育政策主幹「大学を取り巻く環境は非常に厳しいものがある。18歳人口の減少などで定員割れする大学も出てきている。学生確保が安定すれば大学の経営も安定するという側面もある。優秀な学生に集まっていただいて、地元に定着していただくと地元に対する効果も出てくると考えている」
県と庄内の各自治体の実務責任者によるこれまでの協議を経て、6月7日、吉村知事と庄内2市3町のトップによる初めての検討会議が開かれました。会議では、公立化に向け課題となっている「運営に当たる大学法人の設立方式」、「財政負担の在り方」、「重点的に強化する大学の機能」の方向性について県と庄内2市3町の間で合意しました。
まず、大学を運営する法人は、運営コストの抑制やスムーズな意思決定などの観点から、庄内2市3町で組織する「庄内広域行政組合」と県が共同で設立する方向で検討していくこととなりました。
大学運営に当たっての財政負担のあり方については、公益大が開学した当時の割合をベースとして、県が55%、庄内2市3町が45%とする方向です。
また、それぞれの市と町の負担割合については、「各市町が等しく負担」、「各市町の人口規模に応じて負担」、「各市町への経済波及効果で算出した額を負担」、「卒業生の各市町への就職者数をもとに算出した額を負担」の4つの要素を踏まえて検討するということです。
大学の機能強化の方向性については「地域課題の解決」や「デジタル分野の人材育成」、「国内外で活躍する人材の育成」などに力を入れていくとしました。
会議を受け、酒田市の矢口明子市長は「公立化に向けた3つの課題について、合意に向けた道筋が一定程度見えてきた」とコメントしました。
また、鶴岡市の皆川治市長は「重要な会議となった。市議会にもできるだけ早く丁寧に説明していきたい」と話しています。
一方、公立化の時期は未定で、県や庄内2市3町は今後、協議を加速させていく考えです。