高校サッカー第100回大会・開幕戦実況記
熱戦が続く全国高校サッカー選手権大会はいよいよ2日から3回戦が始まります。今回は、高校サッカーに“帰ってきた国立競技場”での開幕戦実況を務めた日本テレビ山本紘之アナウンサーが、特別な一戦を終えたリポートを伝えます。
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12月28日、第100回全国高校サッカー選手権大会が開幕しました。その節目の大会で口火を切ったのが、東京B代表の関東第一高校と大分代表の中津東高校の一戦。
私は、今大会、8大会ぶりに“帰ってきた国立競技場”での開幕戦実況を務めました。国立競技場は、「TOKYO2020」に向けた建て替え工事のため、第92回大会を最後に高校サッカーでは使用されてきませんでした。
東京五輪・パラリンピックを終え、第100回大会から高校サッカーの聖地として国立競技場が帰ってきました。その国立での開幕戦のカードとなったのが、東京B代表の関東第一高校と大分代表の中津東高校の一戦です。
関東第一は2大会連続4度目の出場。率いる小野貴裕監督は、ここ6年で4度の東京都大会優勝と、“関一”を東京の強豪校に押し上げました。関東第一は戦術家・小野監督のもと、攻守におけるポジショニングや動きを徹底的に叩き込んできました。相手によって3バック、4バックとシステムを変え、DFラインからボールをつないで相手ゴールに迫ります。
「勝つために必要な選手がそろっている」と小野監督が話すチームは、サブの選手が出ても戦力が落ちることはありません。
注目は前回大会も全国の舞台に立った“攻撃の核”肥田野蓮治選手のセンスあふれるプレーです。開幕戦では自身も得点をあげ6-0の大勝。2回戦の尚志戦でも随所で存在感を示し、PK戦の末に勝利。鬼門であった“2回戦の壁”を突破し、チーム最高のベスト16に進出しました。
一方、開幕戦で関東第一と対戦した中津東は7大会ぶり5度目の出場。首藤啓文監督が一年かけて選手たちのポテンシャルを引き出してきました。
就任当初は「技術、特徴はあるが好き勝手プレーしていた」という中津東。彼らが最大限その力を発揮できるよう、チーム全体で「意図の共有」を徹底させました。試合中に多く見られた、パスの出し手と受け手のタイミング、コースがバッチリ合う瞬間は、首藤監督が選手たちに刷り込んできた賜物(たまもの)です。
また一際目を引いたのが、左サイドハーフ国広雄陽選手のドリブルです。開幕戦では関東第一に敗れてしまいましたが、何度も左サイドで仕掛けゴールに迫ったプレーは、見る人の印象に残ったかと思います。
そして開幕戦で忘れてはいけないのが、選手たちが密かに狙っていた「新しくなった国立での選手権“初ゴール”」です。FW陣が注目されましたが、決めたのは関東第一のMF8番・若松歩選手でした。前半13分にゴールネットを揺らし、高校サッカーの歴史に名を刻みました。
私が次に実況するのは1月2日、3回戦の宮崎日大×静岡学園の一戦。どんな歓喜と涙が待っているのかわかりませんが、その瞬間、瞬間を実況できる喜びをかみ締めながら、100回大会がさらに盛り上がることを期待しています。
ふり向くな、君は美しい。