【高校サッカー注目・徳島】徳島市立 過去最高のタレント軍団で悲願の国立を目指す!
昭和から平成、そして令和へと時代の移り変わりに徳島県の高校サッカーをけん引してきた「市高ブルー」が悲願の国立競技場ベスト4を目指します。
■少数精鋭ながら選手層の厚さは過去最高
「自分が見た世代の中では選手層が一番厚い」
そうチームを評するのは河野博幸監督。選手権大会では、監督に就任して以降10回連続で県大会決勝、そのうち7度は全国の舞台へとチームを導いた徳島の名将です。3年前の98回大会、県勢としては23年ぶりとなる選手権全国ベスト8入りしたことで、四国の公立校に夢を求めて関東や九州からも入部希望者がやってくるようになりました。
それでも、部員数は63人と全国の強豪校と比べ少ない人数ですが、選手たちは『目標は3年前の過去最高成績を超えるベスト4』(織田大翔主将)と口をそろえて言います。
徳島市立の練習グラウンドには、ほかのチームではあまり見ない光景が広がっています。ABCといったチーム分けがされず、1年生から3年生全員が同じ場所で同じ練習をしているのです。「1年生でも、怪我に泣いた選手でも、部員全員がいつでも試合に出られる可能性がある環境だ」と河野監督。
常にアピールの場である練習は活気にあふれ、主力選手にとっても『練習強度が落ちる面はあるが、同じメンバーばかりではなくいろんな仲間と練習することで新しいサッカー感に触れることもあるし、何より相手の事を考えてプレーする力が身につく』(織田大翔主将)と成長の場になっていることが、少数精鋭かつ選手層の厚さを実現している所以です。
■地元開催ながら苦しんだインターハイ
7~8月、インターハイ“躍動の青い力 四国総体”が徳島県など四国4県と和歌山で開催されました。サッカーは徳島県内で行われ、地元のサッカーファンにとっては全国の強豪たちを目の当たりにできる夢のような夏となりました。
徳島市立の今年の3年生はいわゆる地元開催のターゲットエイジに当たり、大きな期待を寄せられながら3年間練習に励んできました。しかし夏場に相次いで主力選手が負傷離脱。守備の大黒柱・稲川陽友選手や両翼の吉田壮汰選手と柴田侑茉選手、さらに技巧派SBの野々村泰成選手などが不在の中、何とか県大会は優勝し全国の出場権を得ました。
迎えたインターハイの初戦、相手は栃木の“赤い壁”矢板中央高校です。試合展開は前半30分、ロングスローから先制を許し追う展開となります。後半アディショナルタイムにエース・林秀太選手の劇的ゴールで同点に追いつきますが、直後のプレーでまたしてもロングスローから失点。強さ高さが武器の強豪に一歩及ばず、1-2のスコアで初戦敗退となりました。ゴールを決めた林秀太選手も「自分がもう一点決めていれば勝てた試合。徳島開催なので何が何でも勝ちたかった」と悔しさを口にしました。
■試練を乗り越え迎えた選手権
夏の悔しさを乗り越え、秋になると続々と主力が怪我から戻ってきました。県予選ではまだ本調子ではなかった彼らも最後の冬に向けてコンディションを高めてきています。本来の力を取り戻した徳島市立、持ち味は「推進力」です。「力強く走れて前に出られる選手が多い」との河野監督の言葉通り、走力自慢・体力自慢の選手が相手ボールマンに次々と襲い掛かる積極的な守備が武器です。
中でも先頭を走るのがインターハイでも点を決めたエース・林秀太選手。無尽蔵の体力で前線からプレッシャーをかけ、攻撃に転じると幾度となくゴール前への出入りを繰り返し、ここぞという所では自然とボールが集まる位置にポジションを取って決定機に絡みます。
県大会ではフィニッシュで思うように結果が出ず『優勝した喜びよりも悔しさが勝っていた』(林秀太選手)と悩みましたが、その悔しさを結果につなげたのが12月3日の四国プリンスリーグ最終節の今治東戦です。後半アディショナルタイムにこの試合2点目のゴールをもぎ取り、単独リーグ得点王に輝くなど、選手権に向けて調子を上げてきています。
徳島市立は攻撃パターンも多彩です。中でもSB河合侑馬選手はSBの概念を覆すようなドリブルテクニックと鍛え抜いた背筋から繰り出すロングスローがストロングポイント。最終ラインの選手も積極的に攻撃に参加するのがチームのカラーです。
前がかりになった隙をつかれたとしてもゴールを守るのは今大会屈指のGK、U-17日本高校選抜に選ばれた藤澤芭琉選手。188cmの長身を生かした制空権の広さと、機敏かつダイナミックなセーブでゴールに蓋をします。夏場に怪我をしていた主力に代わって出場機会を重ねた控え選手も大きく成長し、戦力は充実しています。
奇しくも、初の選手権ベスト8を達成した3年前と同じ、初戦の相手は福島県代表尚志高校となりました。今年プレミア参入を決めた強敵ですが、『初戦この相手に勝てば勢いに乗れる』(林秀太選手)と選手達も気合は十分です。
今年こそ国立の舞台へ!チームの悲願達成に向けて四国の公立の雄が新たな時代を切り開きます。
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/四国放送)