ワリエワ選手の五輪出場“妥当”と裁定 判断のポイント・専門家の見解は
北京オリンピック・フィギュアスケート団体で優勝したロシアオリンピック委員会のカミラ・ワリエワ選手のドーピング問題をめぐり、重要な判断が下されました。裁定のポイント、専門家の意見など詳しく解説します。
■ワリエワ選手の出場「妥当」と裁定…ポイントは“要保護者”
日本時間14日午後3時すぎ、スポーツ仲裁裁判所は、ロシアの反ドーピング機関がワリエワ選手に対して行ったオリンピック出場を認める判断は「妥当」との裁定を下しました。
この裁定を受けて、ワリエワ選手の15日のシングルへの出場は認められる見通しです。
裁定のポイントは、16歳未満で世界反ドーピング期間が定める「要保護者」、保護監督下にある年齢だということで、例外的な対応が必要だということがあります。
そして、問題の検体は、オリンピック期間中には出ていませんでした。2021年の検体であって、通知が遅れたのは本人のせいではないということも考慮したといいます。
■ワリエワ選手 異名は「絶望」コーチはザギトワ選手ら指導
世界中が注目していた裁定結果が出たわけですが、14日、ワリエワ選手はショートプログラムを15日に控え、練習を行うため、リンクに姿を現しました。
13日午後の練習では、4回転ジャンプを次々と成功させていました。
ワリエワ選手は、15歳の女子フィギュアスケートの金メダル候補ということですが、どのような選手なのでしょうか。
2種類の4回転ジャンプとトリプルアクセルを組み込み、ほかの選手が絶望するほどの強さで「絶望」と呼ばれています。
コーチはロシア女子の最強時代を築いたエテリコーチで、ソチのリプニツカヤさんや平昌のザギトワ選手ら金メダリストを指導してきました。
■昨年12月提出の検体から“検出”経緯は
一体何があったのか、経緯を解説します。
発端は、去年12月、ロシアで開催された大会で、ワリエワ選手はロシア反ドーピング機関にドーピング検査の検体を提出したことです。
そして、6週間以上たった今月7日、北京オリンピックのフィギュアスケート団体戦が行われ、ワリエワ選手が出場し、ロシアオリンピック委員会は優勝しました。
その後、昨年12月に提出された検体から、服用が禁止されている「トリメタジジン」が検出されたことが明らかになりました。
検査結果を受け、ロシア反ドーピング機関は、ワリエワ選手の出場資格を一時的に停止しました。しかし、ワリエワ選手側から異議が申し立てられ、9日、出場停止を解除し、一転してオリンピックへの出場が認められました。
すると、この決定を不服としたIOC(=国際オリンピック委員会)などが、相次いでスポーツ仲裁裁判所に提訴しました。
オリンピック期間中で、翌15日にシングルを控えている中、ぎりぎりの時間に裁定が行われたことでも注目されました。
■ワリエワ選手本人など関係者約50人に6時間近く“聴取”
スポーツ仲裁裁判所は、13日夜から14日未明にかけて、ロシア側の判断が妥当だったかどうか、関係者への聴取を行いました。
聴取は北京の臨時オフィスからオンラインで実施され、ワリエワ選手本人も参加したほか、ロシア反ドーピング機関やIOCなどの関係者およそ50人に6時間近く行われたといいます。
そして、日本時間14日午後3時すぎ、出場資格の停止を解除し、オリンピック出場を認めたロシア側の決定は「妥当」とし、IOCなどの訴えを却下しました。
■なぜトリメタジジン ?反ドーピング専門家に聞く
仲裁人は200人ほどいるということで、今回の裁定には早川さんは関わっていませんが、これまでも多くの事例の裁定に関わってきました。
次の3つのポイントについて、聞きました。
1.今回の判断について
なぜ、トリメタジジンがワリエワ選手の体に入ったのか直接的な経緯について、調べることなく判断されたということです。
15歳で要保護者だということもありますが、検体の調査の遅れがワリエワ選手のせいではないということを重視した結果だといいます。
なぜ、体の中に入ったのかは、「保留したまま」と話していました。
2.なぜ、検査結果が6週間以上遅れた?
6週間というのは「異常な遅さだ」と言いました。一般的には1週間もあれば出て、選手村にも入れていない状況だということです。
時間がかかった理由について、ロシア反ドーピング機関は、コロナの感染拡大で検査機関のスタッフが自主隔離になったため、検査結果が届いたのは今月7日だとしています。
実際に検査が行われたのはスウェーデンの機関で、結果がいつわかって、それがいつIOCなどに報告されたのか、この間、何が起きていたのか疑問が残ったままということです。
3.なぜトリメタジジン が検出された?
トリメタジジンは、過去に中国の競泳選手から検出され問題になったこともあり、有酸素運動で使うケースが多いといいます。
「まだ若くて、持久力が足りないが、苦しいところを見せられないフィギュアのような競技ではあり得るのでは」と話していました
さらに、体調が悪いと代謝が落ちて今回だけ残った可能性もあり、「今回が初めてなのかも気になるポイントだ」と言いました。
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この問題については、まだ説明が足りないので、気になるところが多くあります。
今後については、15日、フィギュアスケートシングルが行われますが 、金メダル候補のワリエワ選手は今回の裁定を受けて、シングルへの出場は認められる見通しです。
一方、団体戦の順位については、スポーツ仲裁裁判所は「私たちが判断することではない」としていて、今後、国際スケート連盟が最終的な判断をすることになります。
(2022年2月14日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)