パッションで勝つ徳島商業 高校サッカー
第100回全国高校サッカー選手権が12月28日に開幕します。徳島代表の徳島商業は29日の1回戦で静岡学園(静岡)と対戦。徳島商業の注目選手とチームの特長を紹介します。
■創部100周年!歴代OBの想いを身に纏い戦う
10月18日、徳島商業のグラウンドには新調されたユニホームに袖を通した選手の笑顔がありました。鮮やかなオレンジ色、左胸にはクラシックな漢字表記で『徳島商業』。右胸と左腿のエンブレムには『100th』の文字がプリントされています。
創部100周年。部として大きな節目を迎えた今年、奇しくも訪れた100回大会。“またあの強い徳商を!”OB達が想いを込めて選手達に届けたプレゼントです。
デザインは徳島商業が唯一国立で闘った75回大会着用ユニホームの復刻版。「身が引き締まる思い。期待をしてくれている事が嬉しい。チームではそれに応えようと声を掛け合いながらここまで来た」とキャプテン増田太陽選手が話すように、OB達の想いは彼らを強く後押ししました。その証拠に新ユニホームを身に纏ってから、彼らは負けなしで全国大会出場を決めたのです。
■去年の初戦敗退から“山登り”で県の頂点へ
前回大会、まさかの初戦で姿を消した徳島商業。当時、就任1年目だった小西健太監督は「今思えばそれまでの流れや生徒の自主性に甘えてしまった所があったのかもしれない。猛省した」と振り返ります。「明らかに変わった」と選手達も口を揃える真っ向勝負の指導の中で、今年から導入したのが郷土の地形を利用した鬼の2部練習でした。
徳島市のシンボル眉山、県民にとって心の原風景ともいえる、徳島市を見守るように優しくたたずむ標高290mの小さな山。しかし徳島商業の選手達にとっては過酷な修行の場です。
まず、学校から麓まで約5kmのランニング。登り口の近くにある神社の階段で100段以上のダッシュを二桁。そして両手に満タンの500mlペットボトルを持ち、頂上まで約2kmの上り坂で持久走。登り切った先でまたも階段ダッシュが待っています。そして帰りも眉山山頂から学校までを走り、そこからサッカーの練習が始まるのです。日によっては学校近くの海水浴場、小松海岸でも砂浜ダッシュで走り込みを行ってきました。
■エースが証明する走り込みの成果
「人生で最も辛い時間」とエース守岡樹希也選手は話します。「でも試合中“本当に疲れた”と思った時、あの景色が浮かんでもう一歩が出るようになる」とも付け加えます。全国出場をかけた選手権県決勝の舞台で、その言葉通りの活躍をエースが見せます。相手ボランチから猛烈なプレッシャーでボールを奪うと、それ以上の鋭い出足でボールを運び、30m超えのシュートをゴールネット左隅に突き刺しました。迷わず振りぬいた右足が描いた弾道は正にワールドクラス。
「土壇場で自分でもびっくりするような力が出せる」と話すエースの得点で2-0と前半リードした徳島商業。このリードが仲間に勇気を与え、ライバル徳島市立高校から4-1と快勝を収めたのです。新人戦2回戦(1月)と県総体決勝(6月)で0-2と同スコアで敗れた徳島市立相手にリベンジを達成しました。試合後も選手達は「勝因は走り込みの成果」と口を揃えました。
■走力で守って速攻 迷いなし!
徳島商業の武器は『走力』と『パッション』。シンプルがゆえに彼らには迷いがありません。守備はキャプテン増田太陽選手の統率でコンパクトに保ち、個の力で勝てない相手には2人~3人で最後まで体を投げ出して守ります。
そして全員で奪ったボールを前線のスプリンター3人、エース守岡樹希也選手(3年)、唯一去年からスタメンでテクニックも兼ね備えた作本幸之助選手(3年)、そして県決勝アディショナルタイムにダメ押し2ゴールを奪った冨士村優選手(1年)に迷わず預けます。
そのワンプレーワンプレーを“小さな闘将”大坪永遠選手(2年)が「OBの皆さんも徳商は元気な方が嬉しいはず。声で盛り上げる」というコメント通り、熱い言葉で鼓舞し、会場をも味方につけるパッションの渦を作り上げるのが彼らの戦い方です。
■伝統の力で100回大会へ!
「選手達の頑張りに加えて、色んなめぐり合わせや見えない力が背中を押してくれる感じがする」
就任2年目の小西健太監督がそう話すように、100年の歴史を背負い戦う事を“プレッシャー”ではなく郷土の山・海で鍛えぬいた足腰と精神で“力”に変えて進む徳島商業。
かつて国立に立った75回大会は5試合中3試合がPK勝ちでした。数々のミラクルを起こしたオレンジ軍団。当時と同じデザインのユニホームに込められた想いが100回大会、復活の全国のピッチで奇跡を起こすか注目です。
※写真は小西健太監督
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/四国放送)