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名門徳商100回大会へ高校サッカー・徳島

2021年12月11日 15:48
名門徳商100回大会へ高校サッカー・徳島

例年より2日早く12月28日に開幕する全国高校サッカー選手権。節目の100回を迎える今大会に、徳島県からは創部100周年となる伝統校・徳島商業が出場します。

県内で最多、全国でも2番目の40回目の全国選手権出場を誇る徳島商業が徳島県の高校サッカーをけん引してきた歴史を紹介します。

■平成生まれの青年監督 指導者として再び県決勝の舞台へ!

『生きてる限り努力せい、まだ人生は続くんで』

これは、第87回選手権県大会決勝で徳島商業に0対4で大敗した鳴門高校の香留和雄監督が最後のロッカールームで選手達に贈った言葉です。

その13年後、徳島商業の体育教員室に当時、鳴門高校のGKだった小西健太さん(31)の姿がありました。「香留監督のあの言葉はまだ胸に残っています。でも僕は怠け者なので言葉通りに出来ているかはわかりませんけどね」そう言って苦笑いを浮かべる小西さんは高校サッカーの監督になる夢を去年叶えました。しかも赴任したのはまさかの徳島商業。

「当時の仲間からは裏切り者とからかわれますよ。でも最後は“決勝も頑張れよ”と言ってくれます」監督歴わずか2年で掴んだ徳島県大会決勝の舞台は徳島商業にとって9年ぶり。

今度は監督としてあの舞台に立つ事になりました。

■徳島県高校サッカーをけん引したライバル校

挑む相手は大会3連覇中の徳島市立高校。徳島商業にとっては積年のライバルです。

64回大会、徳島市立の全国選手権初出場から13大会連続で決勝は徳島商業と徳島市立の顔合わせとなるなど、いつしか徳島県ではこの両校がぶつかる選手権県決勝を「伝統の一戦」と呼ぶようになりました。

それまで徳島商業一強だった勢力図がかわり、2校が覇権を争うことで徳島県の高校サッカーは平成初期に目覚ましい成長を遂げます。

平成元年、国体で徳島県選抜が初優勝、チームの殆どが徳島市立と徳島商業の選手でした。平成3年には徳島市立が全日本ユース選手権で優勝、その翌年インターハイ王者となり徳島県勢として初の全国優勝。徳島商業も選手権75回大会で県勢初のベスト4進出を果たし、悲願だった国立のピッチに立つなど徳島県高校サッカーの黄金期を築きあげました。

■2強時代の終わりからの勢力図の移り変わり

しかし、その時代も一度終わりを告げます。徳島市立を2度、全国優勝に導いた逢坂利夫監督(→阿波高)と、県で唯一、国立で指揮をとった徳島商業の香留和雄監督(→鳴門)が異動によりチームを後にし、群雄割拠の時代に突入します。

その中で突如現れた新星が現在、徳島市立を率いる河野博幸監督でした。現役時代は徳島市立高校で2度の全国優勝(前述)を経験する名選手。

2003年、徳島商業の監督就任1年目で選手権県大会を制すと7年間で6回の優勝。その後、2度の異動で母校・徳島市立に赴任し8年間で6度、チームを全国選手権に導きました。平成後期から令和にかけては河野監督を中心に徳島県の勢力図が変わったといっても過言ではありません。

一方、徳島商業はここ8年間、県決勝の舞台から遠ざかるなど勢いを失い、伝統の一戦も90回大会が最後、古豪と表現されることも少なくありませんでした。

■遂に実現した10大会ぶりの伝統の一戦

しかし2021年11月13日、伝統の一戦が10年ぶりに実現しました。実に19回目、もちろん県内最多です。

キックオフからゲームを支配したのは徳島市立でした。

「全国で勝つ為のバージョンアップ」(河野監督)として今年から導入した多彩なパスワークで徳島商業に攻撃のチャンスを与えず決定機をうかがいます。

しかし徳島商業もコンパクトな守備で隙を作りません。先制したのは徳島商業、前半13分にムードメーカー大坪永遠選手(2年)のFKがゴールネットを揺らします。

40m近い距離があったものの「ゴール前に入れれば何かが起きると思った」(大坪)と、積極的にゴールを狙った伸びのあるボールはニアにキャプテン増田太陽選手(3年)が飛び込んで撹乱したこともあり、そのまま流れるようにゴールネットを揺らします。

勢いづいた徳島商業はそのわずか2分後、エース守岡樹希也選手(3年)が自慢の走力を生かして前線でボールを奪うと、迷わず右足を一閃。30m超えのスーパーミドルを突き刺し、徳島商業がリードを2点に広げ前半を終えます。

しかし後半の立ち上がりから徳島市立が攻勢に出ます。攻撃のテンポを上げ、自慢のサイド攻撃で決定機を作り始めます。すると後半21分、徳島商業最終ラインの裏のスペースにFW笠原颯太選手(1年)が抜け出し高精度のクロス。10番林秀太選手(2年)が頭で合わせ、遂に徳島商業の守備をこじ開けます。

その後も勢いに乗りゴールに迫りますが、徳島商業GK登大也選手(3年)の好セーブもあり、2-1のまま後半アディショナルタイムへ。攻める徳島市立が追いつくか、守る徳島商業が逃げ切るかの構図が試合終了まで続くかと思われたその時でした。

前掛かりになった徳島市立のパスをカットした冨士村優選手(1年)がミドルシュートで決定的な1点を決め、さらに終了間際にも冨士村がダメ押しの4点目を決めて4-1で試合終了。創部100年を迎えた徳島商業が、この100回大会で11大会ぶり40回目の徳島県の頂点に立ち、全国大会出場を決めました。

■名門復活!そして新たな選手権出場監督の誕生

試合後選手達に勝因を尋ねると口を揃えて「夏の走り込みの成果」と答える中で、多くの選手がつけ添えた「小西監督の分析が凄かった」の一言。

『生きてる限り努力せい、まだ人生は続くんで。』

13年前、恩師から届けられた言葉は、平成生まれで令和を戦う青年監督の胸に今も深く刻まれていました。

100年の伝統を背負い、高校生時代に成しえなかった全国大会出場の夢を選手とともに叶えた小西健太監督。それでも“自分は怠け者”と謙遜する笑顔に徳島県高校サッカーの明るい未来を感じずにはいられません。

(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/四国放送)

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