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【独占】岡田武史が現地で感じたイングランドサッカー 日本とは異なる監督育成論

2022年2月1日 20:00
【独占】岡田武史が現地で感じたイングランドサッカー 日本とは異なる監督育成論
ヨーロッパを制したチェルシー(イングランド)
◇FIFAクラブワールドカップUAE2021(2月4日開幕)

2月4日、サッカーのFIFAクラブワールドカップUAE2021が開幕します。サッカー元日本代表監督の岡田武史さんから、ヨーロッパ王者チェルシーが所属するプレミアリーグ、そしてイングランドのサッカーについて解説をいただきました。

「今、イングランドのサッカーのレベルは世界でトップクラスじゃないかな。ボールを止めて蹴るっていうのはすごいですよ。精度が高いんです。リフティング、ドリブル、フェイントとかをやらせたら日本人の方がうまいんですよ。(イングランドは)キックの精度に関してはびっくりするぐらい。もっと下手だと思ったら、こんなうまいんだっていうのはすごく印象にあります」

岡田さんはイングランドに出向いた際、10代後半の選手たちのキックに驚いたことがあるそうです。練習前に体を温めようと体育館に集まって遊んだとき、日本ではボール回しやリフティングを行うところを、彼らはキック合戦(腰ほどの高さを基準とし、それよりも下に当てたら1点。上なら負けというルール)を開始。そのゲームに参加して、岡田さんはカルチャーショックを受けました。

「最初全然できなくてビックリしたのも覚えている。僕なんかもう、インサイドで当ててもポワーンといったり、(ふかして)パーンといったりするんだよ。それなのに最初のインステップで、ボレーでバーンと蹴り返してきた。何だ、これはって思って。それぐらいキックというものの精度は高かった」

日本とイングランドの違い。もちろん、日本にも特性がありますが、見習うべき点はあるといいます。

「サッカーはボールを蹴る競技なんですよ。思ったところに思ったボールを蹴れるかどうか。子どもの頃に上に上がってくる子は、ボールリフティングがうまかったり、コントロールがうまかったり。ドリブルとかは下手だけど、キックはいいっていうやつがなかなか上に上がってこないんですよね。僕がずっと言っているんだけど、日本の一つの問題点だと思います」

FIFAワールドカップ南アフリカ大会の前年、2009年に岡田さんはチェルシーの練習場を訪問したことがありました。当時のアンチェロッティ監督は、2000年にユベントス(イタリア)で指揮を執った時期に岡田さんが視察に訪れて以来、長年にわたって親交。チェルシーの指揮官に就任したばかりの時期に、練習場で再会しました。

「環境はやっぱり素晴らしいですよ。すごくシンプルで小ぎれいで。機能的で無駄がないような施設ですよね」

当時チェルシー所属で、コートジボワール代表のFWドログバ選手と握手を交わすなど、貴重な時間を過ごしたそうです。

「僕らは(2010年の)ワールドカップ前にコートジボワールと練習試合することが決まっていて、練習が終わったら、アンチェロッティが『ドログバ、ちょっと来い』って呼んでくれて。握手したら、練習試合で闘莉王がドログバを骨折させて。試合会場ではもう、ドログバに会わないように……」

イングランドには、「監督を育成する」という考え方があります。日本との違いについて、岡田さんの見方を話してくれました。

「トゥヘルもそうなんだけど、育成の監督をしながらトップの監督になる。日本の場合、有名な選手が選手(生活)が終わるとすぐトップのコーチをやる。トップのコーチから次に監督。これじゃなくて、(ユースの)監督をしてこなきゃいけないんですよ。ヨーロッパの有名な代表選手でも、辞めたらまず育成の監督をやるでしょ。育成の監督をやって、トップの監督。やっぱりコーチじゃダメなんですよ。その辺がヨーロッパは歴史があって。(日本では)育成(のチーム)に行くと、何か格落ちみたいにみんな考えちゃうんだけど、そうじゃないんですよね。そういう意味では育成の存在っていうのは優秀な監督を育てるためにも必要なところかもしれないね」

チェルシーでは2022年、現役時代は長年主将を務めた"伝説的DF"ジョン・テリー氏がアカデミーのコーチング・コンサルタントに就任しました。2017年の退団以来、5年ぶりの古巣復帰。若手育成に着手します。

「彼も育成の監督で終わろうとは思っていないと思うよ。そこで経験を積んで、いつかトップになろうとか、まず、やっぱりそういうところで経験を積んでいくってことをものすごく彼らは大切にしていますよね」