人口11人…ポツンと浮かぶ愛媛の“最果ての島”で 全国が注目する「マンガ島」プロジェクト
人口わずか11人の愛媛、“最果ての島”。人口減少が著しい小さな島で、かつての賑わいを取り戻そうと奮闘する男性がいます。カギを握るのは「マンガ」です。
今治市内から車とフェリーを乗り継ぐこと、2時間。燧灘のほぼ中央にポツンと浮かぶ孤島が、今回目指す“最果て”の地。旧魚島村、いまは上島町に組み込まれた、高井神島です。かつては漁業で栄え、人口およそ300人を数えたという自然豊かな島…
しかし、旧魚島村は県内で最も隣の自治体と離れていて、戦後入って、人口が急速に減少。今ではわずか11人が暮らすのみとなっています。そんな“最果ての島”で、全国から注目を集めるユニークな取り組みが…
長谷部理さん:
「(作者の山田貴敏さんと)知り合いだから、この人にお願いしてみるねと電話したのが最初です。俺のマンガにピッタリだからいいよってことになりました」
壁に描かれた巨大な絵!テレビドラマにもなった、へき地医療がテーマの人気漫画、「Dr.コトー診療所」の主人公です!
よく見ると…島のあちこちに、人気漫画のキャラクターが!実はこれ…
高井神自治会 地区長 木村定さん:
「人口が減っていく一方で。何が良いかといったらアニメで何かをして、子どもと両親が島に来てくれればもしかしたら人口が増えるかもしれないと。賑やかになるだろうという最初の考えです」
長谷部理さん:
「彼から、人が減っているからチカラを貸してくれないかということで」
島の自治会長・木村さんと、大学時代の友人で、15年前に初めて島を訪れた長谷部さんが仕掛けた島の再生プロジェクト、「マンガ島」の取り組みです!
マンガの作者と町の許可を得て、9年前から島の空き家の壁に描き始めました。今ではその数、30以上に!
長谷部さん:
「どうせマンガやるんだったら世界のマンガ島にしたい」
今では週末になると、東京や横浜からもファンが訪れる観光スポットになりました。
木村定さん:
「もう夢みたいな話です。我々が思いつかないようなことになっていくだろうと」
そんな二人を後押しする嬉しい出来事も。
馬場政典さん:
「このまま終わったら人生面白くないなと。変わったことをしたいというのが元々あるので」
ネット記事で二人の取り組みを知った馬場政典さん。去年10月、それまで暮らしていた愛知から、家族4人で高井神島に移り住み、島で唯一の食堂を開きました。
店名はズバリ!「食事処まんが亭」です!!
馬場さん:
「(愛知では)通勤だけで片道2時間かかっていたので、子どもたちの起きているところは見なかった。ここに来たら当然僕はずっとここにいるので、一般的な会社員に比べたら圧倒的に(家族と過ごす時間は)多いんじゃないですか」
愛する家族のために移住を決断した馬場さん。妻・智恵さんはというと…
妻・智恵さん:
「突然、何の前触れもなく言ったんで。何言ってるのかなって」
馬場さん:
「不安はもちろんあったんだけどそれ以上にうまくいったらすごいことになるじゃないかと。夢を叶えた時の喜びも絶対すごいだろうなと思ったのでやることにしました」
島に移住して、まもなく1年。
妻・智恵さん:
「突然ママ明日このノートがいるってなった時に買いにいかなきゃないじゃん!てなって。終便で行って帰って来れるんですけど店がやってない」
ちょっと不便なこともあるそうですが、夫婦で力を合わせて、最果ての島でお客さんをもてなす日々を送っています。
馬場さん:
「お待たせしました。どうぞー」
一番人気は、炒めたトマトと玉ねぎに、8種類のスパイスや調味料を合わせた、ひき肉がたっぷりのひと品。土鍋で炊いたごはんも嬉しい、最果てのキーマカレーです!
三宅記者:
「ん~うまい。スパイスがほどよく効いていて食欲が増します」
人気の味は、ほかにも。
智恵さん:
「カリっとしている感じ。ビールが進む」
夫婦で暮らした、愛知を代表するご当地グルメ。ニンニク醤油にアクセントの胡椒が効いた、手羽先です!
三宅記者:
「ニンニクが強すぎない甘いタレがお肉に合います。何個でもいけます。これは本当においしいです」
長谷部さん:
「(漫画の作品を)見に来てもどこにも食べる所がなくて、そのまま帰るから食堂を作ろうと」
少しずつ賑やかさを取り戻し始めた、人口11人の小さな島。
長谷部さん:
「毎回違う先生が講義に来るから、ここになんとか先生と書いて」
まもなく廃校になった高井神小中学校の校舎を活用しての“漫画学校”も、開校予定です。
長谷部さん:
「描いてくれた先生に授業をお願いしています」
教壇に立つのは作品を提供したプロの漫画家。開校式では地元の小中学生を招いた1日限定の漫画教室も開かれます。
長谷部さん:
「一人でも二人でも漫画学校からプロが出てくれれば。私の思うような本当の漫画の島、世界の漫画の島になるんじゃないかと思っています」
小さな島の再生を目指す大きな夢は、まだまだ続きます。