“幻の高級食材”ブランド化への道!「三崎の赤ウニ」日本一を目指す現役海士の挑戦
伊方町の三崎地区は、幻の高級ウニと言われる「赤ウニ」のブランド化を目指しています。
高級路線へ舵を切ることで、担い手不足などの課題に立ち向かう漁師たちを取材しました。
愛媛の西の端。佐田岬半島に位置する伊方町三崎地区。目の前に広がる豊予海峡は餌が豊富で海流が速く、タイやブリ、アジ、サバなどの好漁場として知られています。
中でもいま旬を迎えているのが…「赤ウニ」です!
阿部さん:
「これがいな!がいなでこれ! 10.5(センチ)ぐらいかな」
「感謝しかないです。こういうのがまだ獲れる海というのは、本当にすごいと思う」
毎年8月から10月末にかけて海士と呼ばれる素潜り漁師によって水揚げされる赤ウニ。一般的なムラサキウニやバフンウニに比べ、身が大きく滑らかな食感で、上品な甘みがあることから高値で取引されています。
県漁協三崎支所 尾﨑健史運営委員長:
「紫色、薄ピンク、赤色3色あるんですけど、全部、同じ種類の赤ウニです」
現役の海士にして地元漁協の運営委員長を務めている、尾﨑健史さん(32)です。
尾﨑さん:
「こっちは、よその産地ではほんの一部でしか獲れないものがこれだけの量そろうんで。とても他の産地には真似できないものが多く獲れるのが眠ってしまっていたので、それを掘り起こす、磨くっていう作業をこの2年くらいかけて取り組んでいる」
佐田岬周辺の豊富な海藻を食べて大きく育つという三崎の赤ウニ。ほかの産地との差別化を図り、新たな看板商品として売りだそうと考えています。
尾﨑さん:
「こっちのサイズが、ブランド化しようとしている原料になる赤ウニですね。パッと見9センチですね」
尾﨑さん、手始めに漁獲してもいいウニの量と大きさにこれまでより厳しい制限を設けました。
「(海中で海士が)持ったら大体重量分かるんで。身の入りもサイズも大体分かる。一日あたり獲っていい量は、一人あたり10キロまで。去年までは15キロまで獲ってよかったんですけど」
Q厳しくした?
「厳しくしました。資源が減っているのが分かっていたので」
水揚げ量が30年前の6分の1にまで減少している三崎の赤ウニ。新たに設けられたルールは、産地の差別化と同時に、限りある資源を未来へ残すためのものでもあります。
海士 阿部和馬さん:
「より大きいのを獲るようになったって言うより、小さいのを獲らないようにした。資源を残すために、まだ成長著しい時期のものを獲らずに、1年2年待って、資源を残そうという風にやって。もちろん獲れる量は減りますけど、その分いい物を獲って、いい加工品作って単価でカバー出来るならいうので、みんなで納得して」
続いてのポイントは、「加工」。鮮度を保つため、水揚げされたその日のうちに身を取り出します。その時使うのが、この道具。
尾﨑さん:
「きれいに(殻を)割らないと割った時点で身が割れる。刃を入れる場所も考えてもらってきれいにスパッと真っ二つに割ってもらっている」
一気に殻を割ることで身が傷つかず、廃棄部分が減少。貴重な赤ウニを無駄なく利用することが可能になりました。取り出した身から不要な部分を取り除く作業も欠かせない工程です。
尾﨑さん:
「この作業はどれだけ時間をかけてもいいから丁寧にやってもらっている。1粒が700円800円するものなので、本当に一粒一粒丁寧に取ってもらっている」
これで完成!かと思いきや、尾﨑さんのこだわりにはまだ続きが…
尾﨑さん:
「人工海水です。オゾン水に、食塩を混ぜたもの。消費者の方たちに最高の状態で届けたい」
阿部さん:
「これがいな!がいなでこれ!」
商品名は、南予の方言で「大きい」や「すごい」を表す“がいな”に決定!これまでの2倍近い、80グラム1万円で販売します!
尾﨑さん:
「大きくても、赤ウニ本来の上品な甘味と滑らかな食感が残ったままの製品になるので、唯一無二のうちだけしか出せない赤ウニが提供できる」
商品へのこだわりと強気の価格設定。そこにはこの30年で7割減ったという海士の担い手不足解消と、収入の向上、そして三崎への思いが込められています。
「それだけ減ってきた中で、水揚げ量の減少に伴う収入の減少を、ブランド化でどうにか単価を上げて少しだけでも補えたら」
海士歴40年 阿部良太郎さん:
「若い人がな、率先して動いてくれるけん。期待しとるし頼もしく、この三崎の海は宝の海やし、後世に残したい、資源を守りたい、それがひしひしと伝わってくるけん応援もしたい。物はもう一級品やけんな、どこ行っても負けんよ。この大きさは」
地域活性へ、クラウドファンディングで資金を募りながら活動を続ける尾﨑さん。
「応援してくれる方々、ファンをつかみながら、地域の人たちと一緒に熱量を上げていきながら三崎の漁師一丸となって日本一、三崎の赤ウニ日本一を目指して頑張っています」