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”アトツギ甲子園”に挑む家具メーカーの男性 ペーパーレス化に海外展開 30歳の後継者が打ち出す改革 大手銀行を辞め山形へ戻ったワケは…  

2024年3月7日 18:33
”アトツギ甲子園”に挑む家具メーカーの男性 ペーパーレス化に海外展開 30歳の後継者が打ち出す改革 大手銀行を辞め山形へ戻ったワケは…  

中小企業の後継者が新たなビジネスプランを競う「アトツギ甲子園」の全国大会が8日、東京都内で開かれます。この全国大会に山形市の家具メーカーに勤める30歳の男性が出場します。山形から世界を目指し、会社を発展させようと奮闘する男性の思いを取材しました。

中小企業庁が主催する「アトツギ甲子園」。全国各地の中小企業の後継者が家業の強みを生かした新たなビジネスプランを発表し、競う大会です。

ホクシア 安孫子大輝さん「家業は家具一筋62年。父の時代に建設業に参入し現在の形となりました」

先月開かれた北海道・東北ブロックの予選大会で見事、全国大会への切符を勝ち取ったのが、山形市の家具メーカー「HOXIA」で役員を務める安孫子大輝さん(30)です。

安孫子さん
「山形から幸せを世界に広めていきます。これからのホクシアにご期待ください」

山形市立谷川に本社を構えるホクシア。従業員は35人でマンションの収納などをメインに設計から製造までを行う東北最大手の家具メーカーです。

安孫子さん
「これが家具の最初の材料。ここから切り出してパーツにしていく。クローゼットや物入れ下足入れなど家に付いている収納はほとんどうちの家具で対応できる」

安孫子さんは社長の長男で営業や施工管理を任されています。

東北大学に通っていたころの趣味はDJ。在学中にはタイの住宅設備会社でインターンとして経験を積み、卒業後は東京の大手銀行に就職しました。

安孫子さん
「すぐに家業に入るつもりもなかったですし、1回社会に出ないといけないという漠然とした思いがあった。一般企業に入って経験を積んでそれから考えればいいかなと思っていた」

転機は5年前、創業者の祖父から言われた一言でした。

安孫子さん
「『家業というのは事業を通して幸せを広めていくものだ』と。正直その時はなんのことだかよく分からなかったがよくよく考えると家業をもつ家系に生まれて帰ってくるチャンスもある。そして地元がもともと好きなので地元に貢献できる機会を得られるということで銀行でもっとやりたいという思いもあったが腹を決めて山形の家業に帰ってきた」

25歳のときに山形に戻って家業へ。未経験の家具業界に飛び込みました。

安孫子さん
「家具や建設の勉強は全くしてきていなかったのでゼロからのスタート。みんなからすれば何も知らないだろと思われたと思う。なので最大限の努力をして勉強するしかない。あとは現場に入って徹底的に現場主義で現場の声を聞いて仕事を覚えていくというのは心掛けてやってきた」

社員と話す中で膨大な量の紙の設計図を使っての作業に苦労していることを知った安孫子さんは、現場に1人1台タブレット端末を導入。業務の効率化を図りました。
ホクシアの社長を務める父・亨さんは当時、導入を心配していたと言いますが…

ホクシア 安孫子亨社長
「私が一番タブレットを使いだすのが遅くて社員たちはあっという間に覚えていった。まさにいま紙がない状態で工場が動いている」
(大輝さんが入ったからこその変化?)「間違いないでしょうね。これは結果が出ているので評価せざるを得ない」

また、安孫子さんが力を入れているのが海外展開です。
ホクシアはフィリピンにもオフィスを展開し、家具の設計業務を任せているほか、現地のスタッフを技能実習生として山形の工場に招いています。

安孫子さん
「人材が確保できないという面はもちろんあるが組織の多様性を非常に重要視しています。非常に明るくてスマイリーな方々で彼らのパワーを山形の会社にどんどん取り入れてお互いに高め合っていけるような組織を作っていきたい」

フィリピンからの実習生「日々の仕事がとても挑戦的で毎日楽しく働けています」

社員から見た安孫子さんは…

社員「けっこう天然だと思います。業務に関しては完璧なんですけどちょっとしたところで抜けがあるというか…」
安孫子さん「カットでお願いします」

入社して初めて家業・ホクシアの強みも知りました。

安孫子さん
「業界でも実は工場を自分たちで構えて設計もやって家具の取り付けまで全部一貫してやっているがそういう業者はほとんどない」

今回の「アトツギ甲子園」では自社の強みを最大限に生かしたビジネスプランで勝負しています。

ブロック大会の安孫子さん
「左の造作収納は建設現場で大工さんが作ります。対して右の家具収納、箱を組んで壁に埋め込んで作ります。工場で生産し建設現場では家具を組み立て取り付けるだけです」

簡単に設置出来る家具収納は建設業界の人手不足解消にもつながるとアピール。今後はマンションだけでなく戸建て市場にも参入していくという発展を見据えたプランです。
しかし、同じ間取りが多いマンションと違って戸建ては、その家に合わせた収納を作る必要があります。その課題に対しては…。

ブロック大会の安孫子さん
「マンションに比べ戸建ては小ロットであり小回りが必要。この課題を家業の経営資源を利用し解決します。ホクシアは業界でもめずらしい自社工場による一貫体制を構築。小回りを利かせた小ロットの導入が可能。新市場へ挑戦します」

全国大会は各ブロックでの予選を勝ち抜いた15人が渾身のビジネスプランを発表します。

安孫子さん
「ここまで来たら最優秀賞しか見ていない。最優秀をとって山形の経営者・企業が一番いいところを獲ったと。後継者が帰ってくるきっかけや盛り上がるきっかけを作っていければ」

後継ぎとしての誇りと責任感を胸に頂点を目指します。