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大人心をくすぐる『プラレール』 誕生から64年、世代を超えたロングセラーの理由

2023年6月17日 8:10
大人心をくすぐる『プラレール』 誕生から64年、世代を超えたロングセラーの理由
『小田急ロマンスカー3100形NSE』(c)TOMY『プラレール』は株式会社タカラトミーの登録商標です。小田急電鉄株式会社商品化許諾済
2024年に誕生65周年を迎える鉄道玩具『プラレール』に、新シリーズが登場。これまでに歩んだ歴史や開発秘話と共に、ロングセラーの理由を担当者に聞きました。

『プラレール』は、自由にレールをつなぎ車両を走らせることができる玩具です。日本で、これまでに1960種類以上(2023年3月末現在)の商品をラインアップ。販売されたレールの総距離は、地球を約2周半、9万8700キロメートル以上(2019年1月現在)に及ぶと言います。

1959年、金属や木の玩具が主流だった当時、最新の素材プラスチックを使った『プラスチック汽車・レールセット』を発売。手で転がして遊ぶ、現在の『プラレール』の原型になったと言います。

当時のプラスチック汽車の開発について、タカラトミー プラレール事業部企画開発課の岩田峰人さんは、「まず決めたのは、曲線レールを円型にした時に直径をどれくらいにするかでした。当時、家族が団らんの時をすごした“ちゃぶ台”の上で遊べるサイズ、曲線レールを8つ つなげてできる円の直径47センチで設計しました。この規格は60年以上経った今でも変わっていないので、当時のレールと最新のレールをつなげて遊ぶことができます」と明かしました。

また、レールが青色になった理由について、岩田さんは「あるデパートの閉店直後に売り場の方に理由を話し、レールのサンプル7~8本に何色かのカラーを塗装したものをもって、店内の蛍光灯の下で見て決めました。当時の店の照明で目立つ、よく見える色が青でした」と明かしました。

また車両のデザインについて、岩田さんは「モーターとバッテリーとメカニカルな部分を積んだ小さな車両の設計は、曲線レールの上をうまく走るための前車輪と後車輪との間隔の決定から計算して、車両の長さを決めました。本物の車体の持つカッコよさと実物感を強調しつつも、かわいさを出すデザインが一番大事な点でした」と、開発秘話を明かしました。

1964年に開催された『東京オリンピック』にあわせて、東海道新幹線が開通。これまで架空のデザインだった車両が、初めて実在する『ひかり号』をモチーフにして登場しました。赤色になった理由について、岩田さんは「開業前に、当時の国鉄が発表したデザインから、子供たちが好きそうな赤を選んだそうです」と明かしました。

■正式名称『プラレール』に統一 実在する車両デザインへ

1965年頃から、車両やレールだけでなく踏切や信号機など、情景パーツの拡大に伴い、玩具名が『プラレール』に統一。複線レールも登場し、鉄道がすれ違うシーンを再現できる構成玩具へと進化しました。

また1970年代に入ると、車両のデザインに変化が起きました。岩田さんは、「実在の列車を商品化することで人気に拍車がかかり、以来子供たちにとって身近な列車、人気の新型車両などをタイムリーにラインナップするようになりました」と明かし、架空デザインの車両は廃止されたそうです。

■様々な遊び方を模索する『プラレール』

1980年以降『プラレール』は、様々な遊び方を模索し始めたと言います。商品開発の姿勢を見つめなおす時期となり、音やメロディー、ライト付きの製品を開発。また、ラジオコントロールで発車や停車を、自由自在に遠隔操作できる『ぼくはうんてんしゅ』シリーズも登場しました。

■既存のレールで複線を実現

2011年には、既存のレールを使って複線を実現するため、車両を幅約2センチ、高さ約3センチのコンパクトサイズでありながら、精巧なデザインでリアルに再現した『プラレールアドバンス』が登場しました。

『プラレールアドバンス』について、岩田さんは「親子3世代にわたり愛されてきた『プラレール』の青いレールをインフラ(基盤)として活用しながら、“従来のレールの片側だけ”を走行して一本のレールを複数として利用する“という、今までの概念を覆すレールの使い方を考えました」と、転換期を明かしました。

また、コンセプトについて岩田さんは、「半世紀を越える『プラレール』の歴史の中で、一度『プラレール』を卒業した人たちにも、再び出会えるような“大人も楽しめる『プラレール』”の開発を進めました」と明かしました。

6月22日に発売される“大人向け”の新シリーズ『プラレール リアルクラス』。各世代の鉄道好きから人気を誇る、懐かしの名列車として、2021年に定期運用を終了した『185系特急電車(踊り子・緑ストライプ)』と、小田急電鉄の歴史上初めて展望席を実装した『小田急ロマンスカー3100形NSE』が登場します。

『プラレール リアルクラス』は、“飾る楽しみ”と“走らせる楽しみ”、その両方を目指したシリーズ。これまでに『プラレール』で培った技術や、ノウハウが結集しているそうです。

『プラレール リアルクラス』の こだわりについて岩田さんは、「車両の造形・塗装・屋根・座席・パンタグラフなど細部まで、大人の方にも満足いただける仕上がりを目指しました。付属する枕木を表現したリアル直線レール(グレー)は、既存のプラレールのレール(ブルー)と連結できます」と、これまでの既存のレールを走らせることができると言います。

一方、これまでの『プラレール』との違いについて、岩田さんは「お子様向け“遊びやすさを考えたデザインと、最新の車両をラインアップ”している『プラレール』に対して、『プラレール リアルクラス』は大人に向けて“飾って楽しめるリアルなデザインと、子供の頃に憧れた名列車をラインアップ”しているのが特徴です。鉄道好きだけでなく、鉄道トイに興味がある方、鉄道模型初心者、親子など多くの方に手に触れていただきたいです」と明かしました。今後も名列車が登場する予定だということです。

『プラレール』が長年、愛される理由について岩田さんは、「構成玩具的要素を持ち、夢が無限に広がるおもしろさを持つ『プラレール』は、子供の知能の発達にも大変良い教育玩具だと自負しております。それが、これほど永くご愛顧いただける要素の1つではないかと思います。日本ぐらい鉄道が発達し、JRや私鉄が国中を走り回り、いろいろなデザインの列車や電車が走っている国は、世界中探してもありません。新しい鉄道がますます進歩発展していき、『プラレール』の世界も共に進歩発展し走り続けていきます」と展望を明かしました。

画像提供:タカラトミー