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意外と知らない“オノマトペ” 「ヒリヒリ」「ごしごし」など、医療現場や教育でも活躍

2024年6月18日 23:22
意外と知らない“オノマトペ” 「ヒリヒリ」「ごしごし」など、医療現場や教育でも活躍
『オノマトペ処方展』を取材
現在、都内で開催中の『オノマトペ処方展』(7月15日まで)。意外と知られていないオノマトペの実用性や、社会・日常の課題を解決するオノマトペを体験することができるという企画展を取材しました。

オノマトペとは、「ニャーニャー」「ドンドン」といった物理的な音を表す擬音語と、「キラキラ」「ワクワク」といった実際には音を伴わない状態や心情を表現する擬態語を総称した言葉。

企画展の公式サイトによるとオノマトペは、AIもことばをつくりだせる時代だが、まだ人間にしか生みだせないことばとしていて、直感的に感情や感覚を表現でき、他者と情報を共有しやすいという特徴があるということです。

■あまり知られていないオノマトペの性質・実用性

『オノマトペ処方展』は薬局をコンセプトに、親子、スポーツ、医療、友人関係、ビジネス、SNSなど様々なシーンにおけるコミュニケーションの悩みに、オノマトペを“処方”(使い方の提示)し、子どもから大人まで楽しみながら、オノマトペの実用性について学べます。全体監修は、オノマトペをテーマにした著書『言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか-』で新書大賞2024の大賞を受賞した今井むつみさんと秋田喜美さんが務めています。

名古屋大学大学院・文学部准教授の秋田さんは、注目がされにくいオノマトペについて「オノマトペというのは、いろんな効果があって、表情を持ちやすいしジェスチャーも伴いやすいという特徴があるので、表現がわかりやすくなったりとか共感しやすくなったり、伝えやすくなったりということがあるんです」と話しました。

オノマトペの実用性について「同じおなかの痛みでも、“しくしく”とか“キリキリ”とかそういった症状を伝えるときには、確かにオノマトペは有効ですし、子どもに向けた説明などにもオノマトペが有効ということは研究でもわかってきてるんです」と語り、社会の様々な場面で活用されているといいます。

■オノマトペを五感で体験 「ゴツゴツ」「ザラザラ」同じ石でも感じ方は人それぞれ

『さわるかぐマトぺ』コーナーでは、実際に石や綿などの物を触ったり、香りを嗅いだりしながら、五感を使いオノマトペを体験することができます。同じ“石”でも、触った人によって「ゴツゴツ」や「ザラザラ」「カチカチ」などと感じたり、同じ“綿”でも「ふわふわ」や「もふもふ」など、感じるオノマトペは人それぞれだといいます。

■子どもにより伝わりやすく「そぉーっと」「ごしごし」 思考力も育む

言語能力が発達しきっていない子どもにとって、オノマトペは伝わりやすい言葉だといいます。『パパママトぺ』コーナーでは、親子でのコミュニケーションで役立ち、子どもに意図を伝えやすくなるオノマトペを紹介。

手を洗ってほしいときには「ごしごししよう」と伝えたり、薬を飲んでほしいときには「ごっくんしよう」と言い換えたり、オノマトペを活用することで、子どもにより伝わりやすくなるということです。さらに、子どもはそのオノマトペの音から意味を推測することで、自分で思考力を育むことができるようになるといいます。

■「ズキズキ」「ヒリヒリ」自分にしか分からない痛みを伝える手段に 医療現場で活躍

感じ方に個人差がある“痛み”を伝える際にも役立つオノマトペ。実際に医療現場での活用が進んでいるといいます。『カラダマトぺ』コーナーでは、体に違和感があるとき、体調が悪いとき、症状を上手に伝えやすくなるオノマトペを、人体模型を使って紹介しています。

患者が自身にしか分からない痛みやかゆみなどを医者へ伝えるとき、「ズキズキ」「ガンガン」「フラフラ」「クラクラ」だと風邪やインフルエンザ・片頭痛、「イガイガ」「ヒリヒリ」だと風邪や咽頭炎、へんとう炎などの病気を疑うきっかけにもなりうるといいます。

■オノマトペは運動でも最大限の効果が? 声に出すことでプラス10センチの効果も

運動中にオノマトペを声にだしてみると、いつもより体が柔軟になったり、緊張を和らげたり、自分が持つ最大限の力が引き出せることがあるといいます。『スポマトぺ』コーナーでは、握力やジャンプ、長座体前屈の身体測定で、その効果を実際に試すことができます。

来場していた20代の女性は、長座体前屈の計測時に「ニャー」と声を出しただけで記録が10センチも伸び、オノマトペの効果に驚く様子も見られました。

■いつでも新たに生み出せるオノマトペ ビジネスや友人関係でも

使い方に自由度があるオノマトペ。新しい使い方をしてみることで、新しいコミュニケーション、新しい人間関係が生まれることもあるかもしれないということから、『新薬マトぺ』コーナーでは、友人関係やビジネス、SNSなどの様々なシーンでの実験的用法のオノマトペを“新薬”に見立てて紹介しています。

SNSで見て来場したという20代会社員の2人は、オノマトペについて「知らず知らずのうちに日常生活で使ってるんだなって改めて気づけました」と明かすと、続けて「(母親から)“朝からシャキっとしい!”とか、小学生くらいのときによく言われてました。“もぐもぐ”とか、“背筋ピンッ”とか、小学校の先生も言っていたなと思いました」と振り返りました。

また、5歳の子どもと来ていた母親は「普通の言葉よりは音の言葉で伝えた方がわかりやすいかなって、“手をぴかぴかにして”とか意外と使ってるなって思いました。(子どもが)まだ言葉を多く知らないので、音に近い言葉で言うと理解してくれるかなって」と、子どもに話すときに自然と取り入れていたと明かしました。