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AIを活用し世界が注目 芥川賞作家・九段理江 藤井キャスターが聞く、いま大切にしたい『言葉』

2024年2月23日 21:50
AIを活用し世界が注目 芥川賞作家・九段理江 藤井キャスターが聞く、いま大切にしたい『言葉』
藤井キャスターと九段理江さんが対談
芥川賞を受賞した作家・九段理江さん。AIが作った言葉をそのまま作品に取り入れ、世界から注目されています。news every.の藤井キャスターが九段さんにインタビュー。いま大切にしたい『言葉』や心がけていることを聞きました。

九段さんは、2021年に作家デビューしたその年に『Schoolgirl』が芥川賞にノミネートされるなど、作品を出す度に高い評価を受けている、いま注目の作家です。そして先月、4作目となる『東京都同情塔』で芥川賞を受賞しました。

■作品にAIを活用したワケ

作品の舞台は、犯罪者が快適に暮らすための高層タワー建設が計画される架空の日本。主人公の建築家が相談相手として人工知能・AIと対話する様子が描かれています。

先月の受賞会見で「だいたい全体の5パーセントは生成AIの文章をそのまま使っている」と発言し、話題となりました。実は、本文中のAIのセリフは、実際に九段さんがAIに質問を入力し、返ってきた答えをそのまま活用しているんです。

この手法は海外メディアでも取り上げられ、「本の執筆にAIが協力したことを認めた」などと、大きな反響がありました。さらに、イギリスの大手出版社が翻訳権を取得し、世界各国での出版に向けて動き出しています。

藤井:生成AIがこの世に出てきたときにこれは使えると思われたんですか?

九段:この小説に関しては生成AIとか、AIが主人公の思考・生活に侵食してきているっていう状況を描きたかったので。アナウンサーの方を主人公にしたいときってアナウンサーの方からお話聞きたいでしょ?

藤井:そうですね。

九段:だから、生成AIを小説に出すために本当に生成AIにお話を聞いているっていう。

藤井:つまり生成AIにインタビューした、というものが作品に投影されてるわけですね。おもしろい!

■AIを活用したからこその苦悩

実際に生成AIを活用したという文章がこちら。

主人公「君は、自分が文盲であると知っている?」AI「いいえ、私はテキストベースの情報処理を行うAIモデルですので、文盲ではありません。そして「文盲」は、侮辱や軽蔑の意味合いを持つ可能性のある差別的表現です。」

主人公に反論する形で無機質な言葉を返すAI。そんなAIの文章に触れたからこそ、血の通った人間の言葉を生み出すことにとても苦労したといいます。

九段:言葉で、言葉の小説を書かなければいけない。自分が本当に苦しかった。頭おかしくなりそうでしたよね。これ書いてて。

藤井:でも自分が進んできた道で、自分が選んだルートですから、その苦しいのはもう自分のせいと思うしかないんですか?

九段:そうですね。もう、一度やるって決めたから。絶対に世の中に出したいなって思ったから。

藤井:最後はそういう、執念のようなもので、賞って決まるんですかね?

九段:言葉とか文章にどれだけ妥協しなかったか、みたいなところ…?

藤井:今あの背骨に雷落ちました。勉強になります。

■九段さんと藤井キャスターの共通点は「日記」

藤井キャスターにもニュースを伝える際、妥協せずに大切にしていることが。例えば新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が出された2020年。news every.で、感染者数を伝えた際には「ここから先は少しずつ緊急事態宣言あとの私たちの行動が形となって表れてくることですが、大切なのはその先です。2週間後の未来を変えられるように今日もご協力をお願いします。命より大切な食事会やパーティーはありません」と言葉を送っていました。

ただ行動自粛を呼びかけるのではなく、視点を変え、視聴者に寄り添う言葉を選んでいました。その言葉への考え方は、九段さんが前日に読んだという藤井キャスターの本にも。

九段:「伝える準備」昨日寝ながら読ませていただいて。すごくいい言葉がありましたよね。

藤井:聞きましたか、みなさん。聞きましたか?

付箋をつけながら読んだという九段さんは、本の中から見つけた藤井キャスターとの共通点を明かしてくれました。

九段:日記のお話されてるでしょう。私も日記つけているんです。毎日、10年以上。しかも5行書くって書いてあるじゃないですか。私も5行は絶対課していて、驚きました本当に。なんでこんな数字まで合致してるのって思って、藤井さんの本にも、1年前の過去の自分と比較できるみたいなと書いてらっしゃって。本当にそうなんですよね、日記って。

■言葉を多用する今だからこそ大切にしたいこと

5行日記で日々の自分を見つめ、普段から、発信する言葉に考えをめぐらせているという2人。一方で、誰もが簡単に意見を発信することができるSNSでは、不用意な発言によって誰かを傷つけることもあります。言葉を多用する今の時代だからこそ大切にしたいこととは?

藤井:簡単に自分で発信することができたり、あまりにも無防備に言葉を発していて、誤解を生んで、コミュニケーションがとげとげしてるような時代だと思うんですけれども。

九段:そういう言葉を発した人が、どうしてそういう言葉を発してしまったのかなとか、何かその人にしかわからない事情があると思うんですよ。そういうことをちゃんと考えられるような人がたくさん増えたら、もうちょっと優しい世の中になっていくんじゃないかなと。

藤井:アンチの部分もやはり取り入れるということが大切なんですかね?

九段:取り入れるというよりかは、異なる意見も、同じくらい等しく重要なものだっていうふうに受け取る。自分の意見を通すっていうのは、イコール、自分と異なる意見、立場にある人を侵害しているということでもあると思う。

(2月23日放送『news every.』より)