子育て支援は少子化対策になる?女性限定「結婚&移住で60万」案には批判殺到…政府が次に取り組もうとしているプレコンセプションケアとは
■妊娠前の食生活が原因で乳腺炎に…将来の妊娠出産に向けて「プレコンセプションケア」を
報道局ジェンダー班 庭野めぐみ解説委員
「私も安藤さんも出産を経験しているんですけれども、安藤さんは出産に向けて何か若いときから準備はしていたんでしょうか」
経済部 安藤佐和子デスク
「全く考えていなかったです。私、出産直後に乳腺炎になったんです。母乳が溜まって胸が痛くなってしまって。その時に助産師さんから、妊娠前の食生活で脂っこいものを食べるなどしているとなることが多いと言われました」
庭野解説委員
「『プレコンセプションケア』という言葉がありまして、個人やパートナー間で性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、将来の妊娠や出産に向けて若い時から健康管理を行うことなんです」
「具体的に話していきたいと思うんですけど、『妊娠中の虫歯、歯周病などお口のトラブルはお腹の赤ちゃんに影響する』〇か?×か?どうでしょう。実はこれ〇なんですよね。こうしたお口のトラブルは早産や赤ちゃんの低体重との関連が指摘されています。妊娠中、つわりで気持ち悪くなるから歯が磨けないなんてことがあります。すると、虫歯や歯周病が悪化する人がいるということです。なので、普段から定期的に歯科の受診をして、妊娠中の口のトラブルを最小限にする必要があるそうです」
「こども家庭庁によりますと、不妊治療の成功率は、30歳だと33%、35歳になると28%、さらに40歳になると14%と、42歳で7%と、どんどん下がっていくということです。そして、自治体の出している特定不妊治療費の助成金を初回で受け取る年齢は39歳が一番多かったということです」
「一方で、別の調査では、20代の人に結婚しない理由を聞いたところ、『まだ若いから必要ない』というのが圧倒的に多かったんですね。なので、年をとって妊娠の確率が低くなったところで妊娠を望んで、不妊治療に取り組む人が少なくないということだと思うんです」
庭野解説委員
「私たちは妊娠するために生きているわけではないんですけれども、産みたいと思えば産めるように、自分でできることがあればやった方がいいかもしれないし、結果的には、妊娠出産するしないにかかわらず、健康になることは人生としていいことだとは思いますよね」
「プレコンセプションケアに政府も取り組もうとしているんですよね」
安藤デスク
「こども家庭庁の専門家会議が、9月6日に『若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ』の中間報告を発表しました。未婚化が少子化の大きな要因だという声もあがり『少子化対策は若い世代が結婚し、子どもを産み育てたいと望んだ時に、社会全体で若い世代を支えていくことが基本である』と示したものです」
庭野解説委員
「以前から政府は希望出生率という言い方をしているんですよね。つまり、希望する子どもの数をもとに算定すると、その出生率は1.8(2015年は約1.8、2021年は約1.6)だったということなんです。なので、政府としては、この希望する子どもの数1.8人を実現するにはどうすればいいかをこれまでもずっと議論をしていましたよね」
安藤デスク
「報告でもまさにそうしたことが書かれていました」
──今の若い世代は、価値観や選択肢が多様化し 「正解がない」社会を生きていく上 で、一つ一つの人生の選択について 「自分なりの納得解」を持つことを重視し、結婚、妊娠・出産、子育てといった選択についても、自分事として考えるきっかけと多様なロールモデルを必要としている。こうした中で、ライフデザイン支援の重要性が高まっていて、学校、地方公共団体、企業での取組を通じて、ライフデザイン支援の裾野を広げていくことが重要であると。
(若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ中間報告より)
庭野解説委員
「今はそれこそ買い物をするにしても、ネットでいろんな商品を調べるとか、そういうふうに世の中が変わってきているから、人生についてもなんだかよくわからないんじゃなくて、『こういう選択肢があるんだ』とか、将来のことをちゃんと知りたいという気持ちはすごくよくわかりますよね」
■“今子どもが居る人”への支援は少子化対策になるのか
安藤デスク
「『消滅可能性都市』と言うとわかると思うんですが、どんどん若い女性が減っていくと、将来的にはこの都市は消滅しちゃうんじゃないかみたいなことを調査して発表している人口戦略会議のメンバーの人たちが、レポートとは別に自分の思いを一人一人発表して書いているものがあります。その中で、不妊治療のエキスパートとして知られる齊藤英和医師のコメントとして、『思春期からプレコンセプションケアを受けた方が良い。社会として、20代、30代の健康管理システムにプレコンセプションケアを入れた方が良い』と提案しています」
庭野解説委員
「お医者さんからすると、不妊治療でこんなに苦労するなら40代になって来るんじゃなくて、もっと前にいろんなことをして欲しかったという思いはすごくよくわかりますね」
「政府は地方創生を目指す中で、若い女性がどんどん地方から都市部に出ていってしまうことが問題なんだということで、『結婚を理由に地方に移住した女性には60万円を支援する』という案を検討していたんですけれども、『なぜ女性だけなのか』とか『地方に移住しても仕事がないんだから、仕事をつくるのが先だろう』などという批判を受けて、案を事実上撤回しました」
「戦時中に日本政府とか、あるいはドイツのナチスなどが『お国のために産めよ増やせよ』といったようなことを呼びかけました。その反省から、妊娠や出産はあくまで個人の問題で、国のためにすることではないので、強制したり、あるいは促したりするということには根強い反発がありますし、政府もそういったことに躊躇があります。国が『プレコンセプションケアを頑張りましょう』みたいなことってちょっと言いにくい部分があるんですよね」
安藤デスク
「そういったこともあってなのか、これまでの政府が出す少子化対策、このあいだの異次元の少子化対策もそうですけれども、出産を増やすんじゃなくて、今子どもがいる人たちの支援ばかりでした。そんな中で8月30日に人口問題と育児支援の『機運醸成実行計画』が発表されたので、ついに出産の機運を醸成するのかなと一瞬思ったんですけれども、やっぱり育児しやすい環境づくりの機運醸成ということでした」
庭野解説委員
「若い世代では、上の世代から子どもを持つ喜びをあまり聞いたことがないという人もいるんですよね。『保育園に入れない』とか『学費が高くて』とか、そういう苦労話ばかりだということもありますね。この番組を担当しているディレクターは20代の女性の木野崎さんなのでちょっときいてみたいと思いますが、やっぱり『子どもがいていいな』みたいなことってあんまり聞いたことないですか?」
(続きはPodcastで)
日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。
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