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カルビー会長、夢実現のシンプル思考2/5

2016年6月16日 17:28
カルビー会長、夢実現のシンプル思考2/5

 カルビーの代表取締役会長兼CEOの松本晃氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つ目のキーワードは「業界トップなのに、儲かっていなかったカルビー。高いシェアにあぐらをかいていたのか?」。利益率の低いカルビーで、松本氏は何に注目し、何を変えたのか。


■儲からないと何もできない

――ちょっと驚いたんですが、カルビーは当時、トップシェアだったにもかかわらず、儲(もう)かっていなかったということなんですか。

 これはですね、カルビーに限りません。おそらく多くの日本の食品会社というのは、あんまり儲かってないんですね。もっと広げてみれば、日本の会社というのは、私が勤めていた欧米の会社に比べると、利益率が本当に低かったです。

 別にカルビーだけが儲かっていなかったわけではなくて、どこの会社もあんまり儲けてなかったですよね。ところが、外資系の会社、「ジョンソン・エンド・ジョンソン」などは、半端じゃないくらい儲かっているんです。

 実は、儲からないと何もできない。儲からないと、設備投資もできない、開発もできない、社員に月給も払えない、税金も払えない、社会貢献もできない、配当もできない…だから儲けるということは大変良いことだと思っています。

 ところが、実際カルビーは、その当時から良い会社だったんですが、利益率はあまりにも低くて、2000年に入ってからは売り上げの成長も一時、止まっていました。


■“儲ける気”がなければはじまらない

――利益率も低かった時の課題というのは何でしたか。

 これは、おそらく多くの日本の会社の課題と同じだと思います。だからカルビー固有の問題ではないです。一番の問題は、マネジメントに儲ける気がないんです。“気”のないことはできないんです。

 やはり稼ぐというのは、大変いいことなんだという考え方であれば、やはりしっかり儲けるというのは必要だと思います。そういう意味で、カルビーも良い会社なんですが、儲ける気がなかったんですよ。


■社員のクビをきるのは嫌い

――具体的に取り組んだところとは?

 それは、カルビーがこれだけシェアが高いのにどうして儲かってないのか、何が問題なのか、これを探ることから始まりました。そうでなければ「もっと売ってこい」とか言っても人は動きません。

 その問題はなんだったのかというと、実は工場の数が多すぎて、結果的には稼働率が悪かったんです。この稼働率を変えない限り…極端なことを言うと、週のうち3日しか工場が動いてないと、これでは製造会社はどんな会社でも儲からない。

 そこで、工場を減らしたほうがいいのか、もしくは稼働率をあげるために頑張ったほうがいいのか―私は2つの方法しかないと。その時に、工場を閉めるというのはなかなか難しいんですよね。こんなことを言っても語弊があると思いますが、社員のクビをきるというのは嫌いなんですね。

 そうすると、これはたくさん作るしか手がないと。たくさん作ろうと思ったら、たくさん売ってこないといけない。そのためには、当時、カルビーの商品は良かったんですが、やっぱりそこそこ値段が高かったんです。それはコストが高かったんですね。したがって、コストを下げないとダメだということで、最初はコストを下げることを努力したんです。


■下がったコストは価格に反映する

 コストを下げるための一番の効果があったのは、余計なものを買わないということです。会社というのはだいたい、仕入れ先から仕入れ値を安くするよりも、余計なものを買わないのが、効果があるんですね。あと設備投資も、過剰だったので抑えました。

 そうするとコストが次第に下がっていきました。下がってきたコストをポケットに入れてしまっていたら今のカルビーはないんです。その時にこれをどうしたかというと、やっぱりこの差を埋めないといけないと。下がったコスト分は、値段を下げていったんです。

 カルビーの商品は一流だと思います。おいしいし、ブランドも認知されていますから。だからお客さんは、カルビーにまた戻ってきてくれました。戻ってきてくれるということはたくさん売れます。たくさん売れるということはたくさん作ります。そうすると、工場の稼働率がよくなった。

 そして、工場の稼働率が上がると、固定費が下がるんですよね。この下がった固定費は、ポケットに入れました。これだけの実は簡単なことしかやってないです。


■同じ商品ならブランド力で勝てる

――それだけ改革するのにどれくらいの期間がかかったのですか。

 これは次第に下がりましたので、当時、製造原価が65%でしたから、それが今10%ぐらい下がったんですね。最初の3年間くらいで相当下がりました。

 だからカルビーの営業利益というのは2%弱くらいしかなかったんですが、いま約11%あるのは、その固定費の下がった分だけが、ようするにポケットに入ったと。だから実に簡単なことしかしてないんです。

――それはやはり商品力があってこそと。

 それはもちろん言えると思います。カルビーというのは非常に開発に強い、それとブランド力もある。だから同じような商品であれば、やはりブランドの分だけカルビーはサポーターが多いですね。

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