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トリンプ 男性目線のブランド戦略とは 2

2016年11月10日 14:14
トリンプ 男性目線のブランド戦略とは 2

 「トリンプ・インターナショナル・ジャパン」ブランドマーケティング部・横尾祐介マネージャーに聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つ目のキーワードは「自分では使わない“女性下着”。ハンデの克服は“当たり前”への疑問」。横尾氏が語る“男性だから”できる発想とは?


■コンセプトを中心に一貫性を持たす

――トリンプに入社後、百貨店の営業を経てマーケティング部門へ異動になった横尾さんですが、ブランドのマーケティングとは具体的にどのような仕事をされるんでしょうか。

 例えば、私の担当している“スロギー”と言うブランドは、毎日をより快適に過ごせるアンダーウエアを提供するブランドなんですけれども、それをお客様との接点できちんと伝えていく。それは、商品以外のコミュニケーションもそうなんですけども。そこを一連のストーリーを持ってちゃんとできるように、社内の中心になってやっていくような部門ですね。

 具体的に言うと、当然お客様に伝えるわけですから、お客様にとって“快適”というのはどういうことなのか、お客様がどういうことを考えているのかというところを、リサーチ部門ときちんと話しながら「こういう事をお客様が考えているのかな」という仮説をまず作って、それからコンセプトを作ります。

 コンセプトができると、「お客様に対してこういうコンセプトだからそういう商品を作ってね」というのを商品部門に言って、「こういうことを考えているからこういうふうに伝えてね」というのをコミュニケーション部門に伝えて、「こういうふうに販売してね」というのを営業部門に伝えて…と、本当に会社のハブになるような活動を、コンセプトを中心に一貫性を持たせるという活動をするのが、このブランドマーケティングの仕事になってきます。


■女性の中に飛び込んで“聞き込み”

――男性である横尾さんが女性の下着のマーケティングをするというのは、ちょっと難しいのかなという気もするんですけれども、例えば、女性がいっぱい社内にいる中で「着け心地」とか「触り心地」とかの話になったときに、どういう対応をされるのでしょうか。

 触り心地はさわれるからまだいいですけど、問題は着け心地で、当然、毎日つけているわけじゃないですから、着け心地の話で女性が「当たり前だな」と思って「そうそうこれだったらこうだよ」というのは全然わからないわけです。なので、私がこれを実際に会社の試着室で着けたりすることも正直あります。

 それが答えじゃないんですけれども、実際問題やっぱりわからないものはわからないので、その話をしている女性にどんどんいろいろ質問をして、「それってどういう感じなの?」とか、「なんでそう思うの?」というのをたくさん聞いていく。

 聞いていく中で、例えばこの“スロギー ゼロフィール”だと「いや、ここの下の部分の食い込みがないのよ」と。それが、普通のと全然違うという話だったら「じゃあ、そこの部分だったら自分も着けてみたらわかるかもしれないから、ちょっとサンプル借りて着けてみていい?」と着けてみて、「ああ、言ってる意味わかった。こういうことだよね」って話をすると「そう。そういうことなのよ」みたいな話とかで盛り上がったりということはありますね。

――男性と共感し合えるって、ちょっと女性としてはうれしいですけれどもね。

 共感できる部分とできない部分があるんですけれども、たくさん聞いていくとそういったところの会話もきちんと成り立ってくるので、とにかく飛び込みながらそういうのを聞いて、話をしていっています。


■“お客様の声マニア”に

――その女性ユーザーの声を幅広く聞くために何か工夫されていることってありますか?

 直接、私は店頭に立てるわけではないですし、お客様と対峙(たいじ)できないので、ユーザーさんの声ってなかなか聞けないところはありますけれども、逆にそれでも男性でもできる部分というのはあると思うんですね。

 それは例えば、ウェブでのお客様の書き込みをたくさん見たりとか、あとはSNS関係で、みんな下着についてどんなことを言っているのかとか。先ほども話しましたけれども、それ以外にも女性の中に入っていってお話をいろいろ聞かせていただくということをやっていくというのは、たくさんできるかなと思ってます。

 自分自身ではわからないんだけれども、社内の中では“お客様の声マニア”といいますか、「あの人に聞いたら、色々インターネットでこういう話をしてたとかっていう情報を私よりたくさん持ってる」とか、そういった状態にはもう今なっています。できるところはもう徹底的に色々して、知識の量を増やすということはやってますね。


■“男性だから”できる発想

――そういった会話の中で、女性にとっての“当たり前”ですけれども、“なぜ?”の疑問符がでてくることもあるそうですが、例えばどんなものがありましたか。

 例えば“スロギー ゼロフィール”だと、何かの会議の時に「飛行機に乗ってるときとか長時間の移動の時に、いつものブラジャーって苦しいんだよね」って話がちょっと出てきて。

――共感できませんよね。

 それも、だんだん話していくうちに「苦しいからホックだけ外しちゃってるんだよね」とかっていう話が出てくるわけですね。男性がいるとこでそんな話をしていいのかと思いながら僕はいつも聞いてますけど。

――意外と多くいらっしゃると思いますよ。

 それを言われて「そんなに苦しくて外すほどなのに、でもブラはつけてなきゃいけないと思ってるんだ」と。女性からすると「いや、それでもきちんとしていかなきゃいけないから、それは当然つけるわよ」となるんだけれども、僕からすると「いや、それだったら外せばいいけど、外すのがダメなんだったら楽なブラをつけたらいいじゃん」と思う。

 じゃあ、そこ用に何か提案できる―例えば「こういう商品があって、そういう使い方をしてあげたらその時間はハッピーになるんじゃないの」というふうに思うんだけれども、女性からするとやっぱり“当たり前”のことだから、そういう開発とか伝え方というところまで発想がいかないんですね。

 なので、男性観点からいくと「それだったらこういうのやったらいいじゃん」みたいなことを私の方から言うと、そこから企画になっていくということは結構ありますね。

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