【速報】日銀が「マイナス金利政策」を解除 大規模金融緩和策を修正し17年ぶりの利上げ
日本銀行は18日と19日の2日間にわたって行われた金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和策の一環として2016年から続けてきた「マイナス金利政策」を解除することを決めました。2007年2月以来、17年ぶりの利上げとなります。
日銀は「賃金と物価の好循環を確認」したとした上で、「見通し期間(2025年度)の終盤にかけて、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した」としました。
その上で、「マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロールなどの大規模な金融緩和は、その役割を果たしたと考えている」としました。
マイナス金利政策の解除には、9人の政策委員のうち7人が賛成しました。
これまで短期の政策金利は、各銀行が日銀にお金を預ける日銀当座預金の一部に適用するマイナス金利=-0.1%となっていましたが、これを+0.1%に変更し、新たに短期金利を0~0.1%程度で推移するよう誘導することにします。3月21日から適用され、2016年から続いたマイナス金利は終了します。
これ以外にも従来の大規模金融緩和策に複数の修正が行われました。
長期と短期の金利を低く抑える「イールドカーブ・コントロール(YCC)」は撤廃され、市場の動きに合わせた長期金利の変動をある程度容認します。長期国債の買い入れは、これまでと、おおむね同程度の月間6兆円程度とします。ただ、長期金利が急上昇する場合は、機動的に買い入れ額の増額などを行うとしています。
また、これまで日銀は、生鮮食品を除く消費者物価指数の上昇率が安定的に2%を超えるまで、国債を買って資金供給を続けることを約束する「オーバーシュート型コミットメント」を行ってきました。2%の物価安定目標の実現に向けて、国内の信認を高める狙いでしたが、今回の政策修正で「その要件を充足したものと判断する」として削除されました。
このほか、市場からのETF(上場投資信託)などの買い入れも終了するとしています。
日銀はまた、今後は「短期金利の操作を主たる政策手段として、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する」「現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」としています。
■好調な賃上げ結果が政策変更の決定打に
日銀はこれまで、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況になれば、マイナス金利政策の解除などを検討する考えを示していて、賃金と物価がともに上昇していく「賃金と物価の好循環」が実現するかどうか、慎重に見極めを続けていました。
こうした中、植田総裁が「大きなポイント」と位置づけていた先週13日の春闘の集中回答日には、大企業で労働組合の要求に対して、満額回答や満額を上回る回答が相次ぎました。
さらに、15日に発表された初回回答集計では平均賃上げ率が5.28%と、昨年の3.80%を上回り33年ぶりの高水準になりました。中小企業への賃上げ率も4.42%となり、日銀が重視していた賃上げの中小企業への広がりが一定程度確認できたことから、賃金上昇を伴った2%物価目標の安定的な実現が見通せると判断し、今回の決定会合でマイナス金利の解除に踏み切った形です。
2007年2月の利上げ以降、日銀が一貫して続けてきた大規模金融緩和策は正常化に向けた転換点を迎え、本格的な「金利のある世界」へと踏み出すことになります。