XRで私たちの生活はどう変わる?【SENSORS】
XR(クロスリアリティ)とは、現実と仮想の世界を融合し、新たな体験を実現するテクノロジーだ。XR技術が普及した先で、私たちの生活は果たしてどのように変わっていくのだろうか。XR領域で活躍中のアーティストや、XRデバイスの開発を手掛ける会社の代表ら3名が集まり、XR技術がもたらす近未来の展望について語り合った。
■仮想空間も仕事場になる
VRハードウェア開発・販売を手掛ける株式会社 Shiftall(シフトール)代表の岩佐琢磨さんは、XR技術の普及後には、仮想空間の中で仕事や報酬を得ることが、今以上に増えるのではないか、と予測する。
「たとえば、トーク番組やイベントの司会やモデレーターとしてアバターが出てきて、仮想空間の中でしゃべったり動いたりする。そして、『本日のイベントのモデレーションをやっていただいた誰々さんに対して、報酬をお支払いします』といったケースが、すでに始まっているのです。バーチャル空間における新しい働き方というのは、面白いテーマの一つだと捉えています」
■パソコンの画面に縛られなくてもいい
ViXion株式会社 テクノロジー・エヴァンジェリストの近藤義仁さん、通称「GOROman」も、「働く空間が、今までとは大きく様変わりするだろう」と続ける。
「これまでのように、パソコンの画面に縛られる必要はなくなるでしょう。例えばWordとExcelを空間に配置して、デイトレーダーのように複数の画面を並べて、アバターでビデオ会議に参加する、といったイメージです。リアルタイムで、さまざまなタスクをどんどんこなすことも可能になるでしょう。誰もが一律のスタイルではない、多様的な働き方が実現するのではないでしょうか」
■仕事の機会が増える
VRアーティストのせきぐちあいみさんも、XR技術を活用した新たな働き方に対して、大きな期待を示す。
「ご高齢の方なども、仕事にどんどん参画できるようになるのではと感じています。私はよく90代で、車椅子をご利用の方にVRを試していただく機会がありますが、最初は敬遠する人でも、いざ体験してみると結果的に皆さん、とても楽しんでくださいます」
「普段は、自宅や病室、施設で過ごされているご高齢の方にとって、テクノロジーの力で『どこかに行ける』『誰かとつながれる』というのは、人生にとって大いにポジティブな体験です。視力を補ってくれるデバイスもどんどん出てきています。ウェアラブルデバイスや、眼鏡型デバイスを使って自宅から遠隔地とつながって仕事をする、たとえば、ロボットやアバターを介してオンライン秘書の仕事に従事する、といった新しい働き方も可能になるでしょう」
キーボードやマウスの操作を覚える必要がないことも、仕事の機会を増やす可能性につながると岩佐さんは話す。
「直感的に操作できる点は、非常に大きいですよね。例えばVR空間で仕事をしようとするときに、WindowsやMacの細かい操作を知らなくてもいいのです。AIアシスト機能を搭載したデバイスを使っていれば、音声入力でも操作できます。今までより、働き方の選択肢も広がるでしょう」