中国企業、“日本の人材”ナゼ狙う?……背景に「割安感」「技術力」 人材獲得、賃金上昇、年功序列廃止…日本企業に迫る変革
中国で販売する商品を日本国内の工場で生産するなど、中国企業が日本の人材に目をつけています。日本の労働者の賃金に「割安感」があるほか、日本人ならではの技術力も背景にあります。中国企業進出への期待は自治体や若者、中小企業側にもあります。
有働由美子キャスター
「私たち日本の人材に、なぜ中国の企業が目をつけるのかが分かるグラフがあります」
「JETRO『日系企業活動実態調査』によると、中国に工場などがある製造業の日本企業が、現地で作業員に支払った月額賃金は2009年に217ドルでしたが、2021年は651ドル(約7万1500円)。12年間で約3倍に上昇しています」
「一方、日本国内の製造業の平均賃金は、厚生労働省の『賃金構造基本統計調査』によると横ばいです。2009年は28万7000円で、2021年は29万4000円でした」
「額面で比べると日本の方が高いですが、取材した中国企業の専務は『そのうち日本人も中国人も賃金水準は変わらなくなる』と話しています。こうした日本の割安感も狙いなのですね」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「確かに日本に進出する理由の1つですが、中国企業が本当に魅力だと思っているのは、日本の人そのものです。日本人は、優れた品質やデザインを低コストで生み出せます。この日本の人材を取り込めば、中国の企業は世界市場でも勝てると考えています」
「そして日本でも現場はウェルカムで、歓迎している自治体もあります。中国の企業が来れば雇用が生まれるという期待があります」
「日本でものづくりをする人たちも年齢ではなく成果で評価され、力を伸ばせるという期待をもっています。日本の中小企業も、自分たちの技術力を中国企業に見出されれば、世界に向けて引っ張っていってもらえるのではという期待があります」
有働キャスター
「メイドインジャパンのいいところを中国が取り込みにくるわけですね」
小野委員
「日本に来た中国企業が割高な賃金で人を雇うと、日本企業も対抗するでしょう。相乗効果で賃金が上がっていくかもしれませんし、優秀な人材の獲得競争も起きるかもしれません。日本企業は今までにない競争にさらされることにもなります」
有働キャスター
「そうなると、どういう人材が期待される、生き残っていけるのでしょうか?」
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「企業目線で考えれば、何も考えずに忠実に今まで通り高いクオリティで低賃金で真面目に働いてくれる人が企業から求められているし、需要がありますよね」
有働キャスター
「それで日本経済は成長するのでしょうか?」
落合さん
「これはなかなか難しい話で、例えばイノベーティブな人材育成が課題と言われ、いろいろな手が打たれましたが、現状あまりうまくいっていないのも事実だと思います」
「だから、丁寧なものづくりやクラフトマンシップなど、製造業の力を上げていくことが大事だと感じています。それはある意味昭和的で、ある意味そういうことを求められているような気がします」
有働キャスター
「それを伸ばしていくというのは、日本の経済にとって、人々の暮らしや働き方にとって幸せですか?」
落合さん
「短期的には良い、長期的には分からない…」
有働キャスター
「日本企業はどうすべきですか?」
落合さん
「お金があったり対応できるうちに早めに、手を打たないといけないのではないでしょうか」
有働キャスター
「人材を確保しておくということですか?」
落合さん
「国によって違いますが、国外に行くのも手ですし、人材を確保するというところもあるでしょうし」
有働キャスター
「この問題はしっかり考えていきたいと思います」
(11月8日『news zero』より)