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原子力政策の“大転換” なぜいま「運転期間延長」を決めるのか

2022年11月28日 15:26
原子力政策の“大転換” なぜいま「運転期間延長」を決めるのか
関西電力美浜原発

経産省は28日の専門家会議で、これまで“最長60年”としてきた原発の運転期間について、実質的に延長可能とする案を示した。なぜいま、政府は原子力政策の方針転換を急ぐのか。

■60年を超えても運転可能に 新たな案を提示

2011年の東京電力・福島第一原子力発電所事故以降の原子力政策が、大きく転換することになる。

経済産業省が28日の専門家会議で示したのは、原発の運転期間について、これまでの最長60年からさらに延長できるようにする案だ。

もともと原発の運転期間に上限はなかったが、原発事故の教訓から、10年ほど前に法律を改正。運転期間は「原則40年、最長60年まで延長できる」、としてきた。これについて新しく示された案は、安全審査などで運転が止まっていた期間の分を実質的に延長可能とする、という内容だ。

原発事故の後に再稼働したのは既存の33基のうち、わずか10基。多くの原発が10年以上停止している。今回の案が成立した場合、こうした原発の運転期間を10年以上延長できることになる。

経産省でさらに審議した上で、政府は年内に案をとりまとめる方針だ。

なぜいま政府は、方針転換を急ぐのか。

■背景にある“エネルギー危機”と“脱炭素”

理由の1つは、日本のエネルギー供給力への懸念。

福島の事故以降、日本の電力は火力発電に大きく依存してきた。しかし、電力の自由化や再生可能エネルギーの大幅な導入により、採算の悪い火力発電の廃止が相次ぎ、供給力が低下。増えている再生可能エネルギーも、発電量が天候に大きく左右されるという課題が残る。さらに、ロシアのウクライナ侵攻により発電に必要なエネルギー価格は高騰しており、長期化すれば、電力の安定供給に支障が出る可能性が強く懸念されている。

こうした“綱渡り”の状況の中、政府は原発の再稼働を進める考えを示している。しかし、現行のルールのままでは近い将来、運転期限を迎える原発が相次ぐことに。このままでは再稼働に向けた投資が進まない。

2つめは、“脱炭素”の目標だ。

政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。この達成のために、発電時に二酸化炭素を出さない原発も活用していく方針で、経産省関係者は「原発の利用を進めなければ、脱炭素は達成できない」と繰り返し強調する。

しかし、現行のルールのままでは、先述したとおり、2050年には既存の原発の多くが廃炉になる。安全性を高めた次世代原発に建て替える案も28日の審議会で新たに提示したものの、実用化には課題も残り、建設には時間がかかると見られている。そのため、次世代原発が稼働できるまで、いまある原発を“延命”させたい狙いがある。

■性急な方針転換に賛否の声

運転期間を、停止していた期間分延長可能とする今回の案について、専門家の意見は割れた。

28日の専門家会議で委員からは、「カーボンニュートラルの達成を目指す以上、原発の発電能力の増強は不可避」「一律的な上限を設定することに科学的・技術的な根拠はないが、原子力への国民の懸念などをふまえれば、一定の抑制を設けて今後順次見直すべき」などの賛同の意見があがった。

一方で、“議論が性急だ”との懸念もあがる。

岸田総理が8月に検討を指示してから、議論が大詰めとなるまでわずか3か月。原発事故の教訓として、当時の与党・野党のどちらからも賛成を得て決められたはずの運転ルールについて、国民の意見が十分反映されないまま議論が進められていると指摘する声も。一部の委員からは、新たな方針に「全く賛同できかねる」という声すらあがった。

取材の中で経産省関係者は「年末に結論を、という総理指示があるため、もう方針を決めないと間に合わない」と焦りを見せる場面もあった。

安全性を担保した上で、「結論ありき」ではない国民への丁寧な説明が、求められている。