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給料が「物価高」に追いつかない――“買える量”は減少 経済不安…学生の5人に1人「子ども欲しくない」【#みんなのギモン】

2024年2月7日 9:39
給料が「物価高」に追いつかない――“買える量”は減少 経済不安…学生の5人に1人「子ども欲しくない」【#みんなのギモン】
厚生労働省が6日発表した統計によると、去年の額面給与は過去最高水準まで増えた一方、物価高がそれを打ち消している実態が浮かびました。マイナビの調査では、「子どもは欲しくない」と答えた学生は約5人に1人に上り、これまでで最多の水準となりました。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「給料が物価高に追いつかない?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●物価高で「実質」減少?
●経済不安が人生観に影響?

■「名目賃金」と「実質賃金」に注目

近野宏明・日本テレビ解説委員
「せっかくお給料の額が増えても、物価高がそれを打ち消してしまうという、悲しい事態が数字の上でも裏付けられています。6日、厚生労働省が去年の毎月勤労統計を発表しました。これは全国各地で働いている人の労働時間や給与の額を毎月調査したものです」
「注目すべきは2つあります。給与としてもらった額そのままの『名目賃金』と、給与の額から物価の影響を差し引いた『実質賃金』です。それぞれ良いニュースと悪いニュースが含まれています。良い方からお伝えします」

■ベースアップやボーナス増で額面UP

近野委員
「名目賃金の速報値ですが、基本給や残業代などを合計した月の給与は平均で、32万9859円。前年より1.2%増えて3年連続の増加でした。細かく見ると、正社員など一般労働者は43万6849円、パートタイム労働者は10万4570円。この2つは過去最高の水準でした」
「どうして額面がアップしたのか。主な要因は、去年の春闘で基本給の引き上げ(ベースアップ)があったことや、賞与(ボーナス)などが増えたことが理由に挙げられます」

藤井貴彦アナウンサー
「私はバブル期直後に入社しているので、余韻が残っていました。その時はみんなとてもワクワクして生活していましたが、3年連続で月の給与が増加しているという実感が周りにないですね」

近野委員
「お給料が上がったことが全くワクワクに反映されていない状況が続いています。それでも、名目賃金の話だけを聞くとプラスの材料にはなっていると思いますが、そうもいかない話もあります」

■実質賃金の減少幅は9年前に次ぐ大きさ

近野委員
「名目賃金について、前年比でどれぐらい増えたり減ったりしているかを示した折れ線グラフがあります。最新の2023年は少し減っているように見えますが、前年より1.2%増。増え方が小さかったと捉えてください。2021年からの3年間はプラスで推移しています」
「もう1つのグラフは、物価の影響を差し引いた実質賃金です。これが、前年に比べて2.5%減ってしまっています。2014年に消費税率が8%になった時に次ぐ、大きな減少幅を記録しました」
「つまり、給与の額面としては増えてはいるのですが、それ以上の物価高が進んでいるので、実際に買えるモノやサービスの総量としては減っているというわけです。どんなふうに感じているか、東京・新橋で聞いてみました」

■「パーンと上がってもらわないと」

飲食(40代)
「お給料が上がっても物価がどんどん上がっているので、あまり給料上がっているの感じない」

家具メーカー営業(20代)
「実際、支給額は上がっているのはリリースもあって見ていますが、スーパー行ってもそうですし、毎月の請求届くのがちょっと怖いですね」

法律事務所に勤務(50代)
「賃金が上がって良かったという実感もないですし、逆に物価の方が高いので大変です。もっとパーンと賃金上がってもらわないと。名目賃金。(実質賃金との)差は開いたままだと思います」

徳島えりかアナウンサー
「いやもう、本当にそうですよね。いまだに、スーパーでお会計すると『こんなに高いの?』とびっくりしてしまいますし、これからのことを考えるとお財布のひもは固くなる一方だなと思います」

近野委員
「物価の上昇そのものは全てが悪いというわけではありませんが、実質賃金に着目すると、生活必需品はとにかくお金となって出ていきますし、皆さん苦しい状況を実感されていると思います」

■学生「子ども欲しくない」…理由は?

近野委員
「次に、経済不安が人生観に影響しているのかについて。就職情報サイトを運営するマイナビの調査で、2025年に卒業する大学生や大学院生に聞いたところ、約5人に1人が『子どもは欲しくない』と答えたといいます」
「この調査は、10年前から行われていますが、これだけ多くの方がこう答えたのは初めてだそうです。もちろん、まだ子どもを持つこと自体が想像できないなど様々な理由が挙げられていますが、男子の58.4%、女子の48.7%は経済的な不安をその理由に挙げています」

澁谷善ヘイゼルアナウンサー
「私も、いつかは子どもは欲しいなと思っていますが、今はとにかく自分の生活と未来のことを考えて、その『いつか』って来るのかな、という不安がありますね」

藤井アナウンサー
「今、自分のことで精一杯という若い方はたくさんいらっしゃるでしょうが、その先の未来を早いうちに自分で描くということが、夢に近づく一歩だと思うので、その先を描けるような世の中になってもらいたいですね」

■「共働き」希望の背景に経済的不安も

近野委員
「なかなかそれを描きにくい現実が、他にもデータで裏付けられています」
「将来共働きを希望するという学生は70%で、これも過去10年では最多です。生きがいになるからという前向きな理由もありましたが、『一方の収入だけでは生活できないから』
『一方の収入に頼るのはリスクがある』と、経済的な部分を心配する声もあったそうです」

河出奈都美アナウンサー
「確かに私自身も、前向きな意味でも経済的な不安からも、共働き、私も働きたいなという思いはあります」
「子どもの時から、景気が悪い悪いとずっと言われ続けていて、自分たちは景気が悪い時代に生きているんだ、もしかしたらこれからもっと悪くなるかもしれない、と刷り込まれてしまっているような感じがするので、ワクワク感は少し薄れているかもしれませんね」

近野委員
「我々は気楽な刷り込みがあったということですかね、若い頃は…」

藤井アナウンサー
「私たちの世代はまだ残っているということですね」

■将来や経済への不安が特に大きい世代

近野委員
「河出さんが今話した内容は、マイナビキャリアリサーチラボの長谷川洋介研究員も指摘しています」
「長谷川研究員によると、この調査に答えた多くの学生はコロナ禍のもと入学し、学生生活のさなかに物価高が始まっていたため、将来や経済への不安がとりわけ大きい世代。そのためこうした結果が出たのではないか、と分析しています」
「特に1人暮らしをしている学生はかなり厳しいようでして、『食費が上がった』という声は64.7%。他にも『飲み会などお付き合いを控えるようになった』は13.6%、『学食・生協の値段が上がった』は36.5%。学食や生協は安い代名詞でしたが、今は違うようです」
「『貯金を切り崩した』は11.7%、『大学による食料品支援を利用』は12.7%でした」

ヘイゼルアナウンサー
「大学生活、きっといろいろチャレンジしたいと思いますが、こういった生活の心配をしなくてはいけないのは苦しいですよね」

河出アナウンサー
「プラスアルファ何か楽しいことを見つけてやるのが学生の醍醐味だと思うので、少しずつ節約して自分の好きなことにお金を使えるようになったらいいなと思いました」

■若い世代の意識 変わるには?

近野委員
「ではどうしたらいいのか。長谷川研究員は、今後さらに賃上げの機運が高まったり、育休をきちんと取れたり、現役で働く世代が経済面で不安を感じないような状況にならないと、若い世代の意識は変わらないのではないかとみています」
「先を行く世代がそれぞれに、魅力的な背中を見せていかなければいけないということです」

藤井アナウンサー
「ただ一方で、『世の中が悲しい』とばかり言って自分が動かないと夢に近づけないので、夢の規模までデフレにならないように、この30年を抜けてもらいたいなと思います」

近野委員
「確かに。我々も頑張ります」

(2024年2月6日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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#みんなのギモン

https://www.ntv.co.jp/provideinformation/houdou.html

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