“悪魔の兵器”クラスター爆弾 100か国超が「禁止」も……米の供与なぜ? 1970年代に被害のカンボジア、危険いまも
殺傷力が高く“悪魔の兵器”と呼ばれるクラスター爆弾を、アメリカがウクライナに供与します。多くの国が使用を禁じ、同盟国からも異論が上がる中、なぜ供与に踏み切ったのでしょうか。1970年代に被害を受けたカンボジアの首相は警鐘を鳴らしています。
有働由美子キャスター
「“悪魔の兵器”とも言われるクラスター爆弾。アメリカが初めてウクライナに供与すると発表しました。これに対し、イギリスやドイツは『追随しない』、カナダやスペインは『異議あり』と表明する事態になっています。理由は“悪魔の兵器”だからです」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「クラスターには、『群れ』や『集団』という意味があります。ミサイルの中に小さな爆弾が多く詰まっています。1つ1つが爆弾です」
小野委員
「実際に使われている映像を見てみます。上空からクラスター爆弾が落とされると、中の小型爆弾が飛び散っています。1つ1つが着弾して爆発しています。無差別に広い範囲を攻撃する能力があります」
「問題は、小型爆弾の多くが爆発せずに、不発弾になる可能性があるということです。それを知らずに後日、誰かが拾ったり踏んだりした時に、爆発する危険があります」
「『おぞましく残酷な無差別兵器』だとして、世界100以上の国で使用禁止になっています。それでもロシア軍はウクライナで既に使用していると言われています」
有働キャスター
「それを今度アメリカが渡そうということなので、批判は出ると思います。なぜ、あえてウクライナに渡すのでしょうか?」
小野委員
「アメリカは何を考えているのでしょうか。現代軍事戦略に詳しい、防衛省・防衛研究所の高橋杉雄室長と、明海大学の小谷哲男教授に聞きました」
「高橋室長は『それだけ戦況がひっ迫しているということでしょう。反転攻勢がうまくいっていない。だから急ぐ必要があると判断したのではないか』と指摘しています」
「小谷教授は『アメリカではウクライナに渡す砲弾の生産が追いついていない。ただ、何か提供しなければならない。そこであくまで暫定措置としてクラスター爆弾を供与しようとしている。アメリカにとっても苦渋の選択なのは間違いないでしょう』と言います」
小野委員
「カンボジアでは1970年代にアメリカが投下したクラスター爆弾で、数万人の死傷者が出たとされています。今回、カンボジアのフン・セン首相がコメントを発表しました」
「『半世紀以上も前の出来事だが、今も全てを除去できないでいる。長ければ100年にわたってウクライナの人々を重大な危険にさらすことになる』と訴えています」
有働キャスター
「こうした非人道的兵器の使用で犠牲になるのは結局は市民です。クラスター爆弾を禁じる条約は日本も批准しています。岸田首相がどんなメッセージを出すのか注目しています」
(7月10日『news zero』より)